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雇用動態等から今後の景気動向を考える

物価上昇や景気の先行きに対する懸念のニュースが散見されます。
例えば12月16日の日経新聞では、「米のインフレ圧力根強く FRB、賃金上昇に警戒感 経済軟着陸へ難路」というタイトルの記事が掲載されました。一部抜粋してみます。

「利下げはインフレ率が明確に低下している根拠がない限り検討しないだろう」。パウエル議長は14日の記者会見でこう強調した。市場では23年後半の利下げを見込む声が多かったが、否定的な考えを示した。

慎重姿勢の裏にあるのが、根強いインフレへの警戒だ。米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が予想する23年末の個人消費支出(PCE)物価指数の前年比上昇率は9月時点の2.8%から3.1%へと上方修正された。

「賃上げが続いているにもかかわらず、労働参加率は変動していない」。パウエル氏が指摘するのは米労働市場の構造変化だ。人口に対して働く意欲のある人の割合を示す労働参加率は新型コロナウイルス禍前の63.4%から急落した後、半ばまでしか回復していない。11月も62.1%で足元では低下傾向が続く。

高齢者の早期退職などによる深刻な人手不足が続けば、利上げで企業活動を制約しても人材の奪い合いで賃上げ圧力はなかなか収まらない。賃金の影響が大きいサービス価格は抑えにくくなる。

雇用動態調査(JOLTS)によると、3月に1186万件と過去最高を記録した求人件数は10月に1033万件まで減った。利上げの効果が出ているとの見方もあるが、その水準は15~19年の平均636万件を大幅に上回り、過熱状態が続いている。

ハイテク業界で増えている一時解雇(レイオフ)も米国全体で見ればまだ低水準だ。パウエル氏は会見で「求人難で企業がレイオフを控えるという構造的な人手不足がある」と指摘した。

インフレが高止まりする限り引き締めを継続せざるをえない。14日示された到達金利の見通しは5.1%で、9月時点の4.6%から大幅に高まった。年明け以降に0.25%ずつ利上げしても、5.1%に達して利上げが打ち止めになるのは来年5月で、利下げはさらに先となる。

景気を熱しも冷ましもしない中立金利は米国で2%台半ばとされる。米国の政策金利は少なくとも23年中は中立金利の2倍を超える水準にとどまる可能性がある。金融引き締め効果が持続して景気を冷やし続ける。

米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者が見通す2023年10~12月期の経済成長率は0.5%に下方修正された。「景気後退が起こるのか、またどれくらい深刻になるかは誰にもわからない」。ソフトランディングは不可能ではないと反論しつつ、パウエル氏はその道が明確ではないと率直に語った。

上記から、3つのことを考えてみます。ひとつは、今後の短期的な景気動向には、やはり注意を要しそうだということです。

先日の投稿「先行指標(PMI)で景気動向を考える」では、2020年以降初めて世界3大経済圏の米国、中国、欧州のPMIが揃って50を下回る状態となっていることを取り上げました。上記記事にある「米FOMC参加者が見通す2023年10~12月期の経済成長率は0.5%に下方修正」などからも、先行きはやはり厳しいことが伺えます。

中国も、10~12月が前期比でマイナス成長になるという予測も出るなど、さらに景気が失速しているという観測もあります。ゼロコロナ政策の緩和で内需の回復も期待されますが、どのような推移をたどるのかは未知数です。

ユーロ圏も、米国以上にひっ迫するエネルギー問題やストライキなどの影響もあり、実質成長率が23年1~3月期まで2四半期連続でマイナスの予測が出るなど厳しい見通しです。日本経済もこれらの外需に当然影響を受けますので、当面は楽観できない状況と言えそうです。

2つ目は、短期の厳しい見通しの先に展開が変わるかもしれないという点です。上記にも、賃上げ圧力がかかり続けているとあります。賃上げはインフレの鎮静化を遅らせ、人件費増で企業業績にも影響を与えますが、消費を支える原動力になる点ではプラスとなります。米国を中心に、極端な需要減には至らずに回避できる可能性があるのかもしれません。

3つ目は、定量情報は、全体と個別と両面で押さえることが大切だという点です。上記で「ハイテク業界で増えている一時解雇(レイオフ)も米国全体で見ればまだ低水準」とあります。ツイッター、アマゾン、メタなどでの人員削減のニュースが印象的に見えますが、これらは全体の数で見るとわずかな割合で、雇用市場全体は堅調というわけです。

全米雇用統計の11月分も26.3万人増と、人口動態等の観点で巡航速度とされる20万人増を上回る状態が続いています。「ハイテク業界で相次いでレイオフの動き=恐慌」のようなイメージを持ってしまうと、実態と異なる認識になりかねません。このことは、仕事で何かのデータを集めて分析するようなときにも、当てはまります。

いずれにしても、当面の企業活動・事業活動では、今後の動向を慎重に見ておくべき局面が続くのではないかと思われます。

<まとめ>
今後の景気動向に注意する

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