先行指標(PMI)で景気動向を考える
11月16日の日経新聞で、「世界経済 けん引役失う 中国、今年3%成長に失速見通し 米欧は後退予測広がる」というタイトルの記事が掲載されました。
同記事の一部を抜粋してみます。
以前のGDP(国内総生産)2桁成長のような勢いがなくなっていたとはいえ、中国はコロナ禍発生前まで、2017年以降もGDP6%前後の成長率を実現してきました。3%台というのは同国としては低い水準です。コロナ禍対策やその他の影響で、明らかに景気が低迷していることが伺えます。
上記の中で、購買担当者景気指数(PMI)に注目してみます。
「Purchasing Managers' Index」の頭文字をとった「PMI」は、企業からみた景況感を示す経済指標です。購買担当者に生産や受注、価格動向などを聞き取り、その結果を指数化したもので、50を上回れば前月より拡大、下回れば縮小を示します。つまりは、50が好不況を判断する分かれ目とされています。
購買担当者は取引先の動きや製品の需要、自社の生産計画などを見極めたうえで原材料を仕入れます。よって、これから先の景況感を映す先行指標となります。
中国は、6月は同指標が55を超えていました。しかし、6月以降悪化し続けていて、9月から50を割ってさらに悪化を続けているようです。上記記事中にある要因などによって、当面の景気動向に慎重な見方が広がって、仕入れにも慎重になっているのが伺えます。
ユーロ圏は4月以降悪化を続けています。米国も3月以降悪化を続け、9月にいったん持ち直して50付近まで戻したものの、10月にまた悪化となっています。
中国のPMI(総合)は、2021年8月に50を割り込みました。その後50以上に回復し、3月にまた50を割り込んだ後、6月にかけて回復していました。米国は、昨年から今年の6月までずっと50を超えていました。
世界3大経済圏の米国、中国、欧州のPMIが揃って50を下回るのは、2020年以降初めてです。コロナ禍が発生した2020年2月は、米国、中国で50を下回っていたものの、欧州は50を超えていました。2020年4月は、米国・欧州は50を下回っていたものの、中国は既に50以上に回復していました。今回3大経済圏が揃って50を割ったというのは、世界全体で当面の景気動向が懸念される象徴的なシグナルとして見てとれるかもしれません。
日本のGDPも、内閣府が15日発表した速報値では7~9月期の実質成長率は前期比で年率でマイナス1.2%と、4四半期ぶりのマイナスとなっています。主要な海外市場のすべてで消費や生産活動の先行指標となるPMIが悪化しているということは、輸出をはじめとした経済活動の動きが鈍り、日本経済全体も当面の動向が懸念されると言えそうです。
政策や施策は、すべてをとることはできません。各国が景気支援よりインフレ抑制を優先させるとして金利政策等に反映させてきたことのデメリットが、やはり表面化しているということでしょうか。
米国IT大手のツイッター、メタ、アマゾンなどが大規模な人員削減を行うと発表されていますが、例えばPMIのような景気の先行指標にその手がかりを求めると、背景としてその理由が見えてくるものがあります。
ただ、ツイッターは赤字が常態化していたビジネスモデルのため、景気動向に関係なく変革を必要としていたという背景があります。アマゾンは、2019年末に80万人弱だった従業員数が今では150万人以上まで増えています。「アマゾンが1万人規模の人員削減を計画」と聞くと物々しく感じますが、割合でいうと増加後の全体の約0.6%です。見出しだけからの印象でなく、全体においてのインパクトの度合いからも見るべきです。
いずれにしても、企業活動・事業活動においても、今後の動向により神経質になるべき局面が続くのではないかと思われます。
<まとめ>
景気の先行指標の今後に注意する。
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