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儲けの可能性とリスクの高さはある程度比例する

6月15日の日経新聞で、「顧客本位を忘れた千葉銀の仕組み債販売」というタイトルの社説が掲載されました。初心者の顧客に複雑な金融商品を販売し、損した顧客からのクレームが問題となった件について取り上げています。

同記事の一部を抜粋してみます。

あまりにお粗末な振る舞いだ。千葉銀行と武蔵野銀行、ちばぎん証券が仕組み債と呼ばれる複雑な金融商品を不適切に売っていた実態が明らかになった。自らの収益を優先するあまり、知識が十分でない顧客の立場や利益を軽んじていた。証券取引等監視委員会は金融庁に行政処分を勧告した。

仕組み債はデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な債券だ。表向きの利回りは高く見えても、元本割れの恐れがつきまとう。手数料体系も不透明だと指摘される。丁寧な説明を経て、リスクを覚悟してでも大きなもうけを狙いたい顧客に限って販売すべきだ。

ところが、理解が不十分なまま仕組み債を買ったとして、高齢者らが苦情を訴える事例が相次ぎ、社会問題になっている。とくに千葉銀などのケースが悪質なのは、地銀と系列証券の提携が不適切販売の温床になった点だ。

銀行が自らの顧客を証券会社に紹介し、銀行も証券会社も顧客の意向を十分確かめず仕組み債を売っていた。仕組み債のようなリスクの高い商品を望む層でない人が売り先の3割近くいた。

販売後の対応にも驚かされる。仕組み債の買い手からちばぎん証券に苦情が多数寄せられたが、大半が「一方的申し出」だと処理された。顧客軽視も甚だしい。

監視委は金融商品取引法の「適合性の原則」に反するとし、金融庁に業務改善命令など行政処分を勧告した。同原則は顧客の知識や経験などに沿って販売するルールだ。厳しい処分は当然だ。

千葉銀などで明らかになった乱暴な売り方は特定の銀行だけの問題とは言い切れない。金融庁の調査によると2022年3月に地銀の8割が仕組み債を扱っていた。金融庁が仕組み債の販売について注意を促し始めたところ、半年余りで地銀の3割へと減った。それまではどういうつもりで売っていたのか、首をかしげたくなる。

同件に関して、買い手の立場から考えてみます。原理原則は、リスクとリターンは関係性があるということです。

基本的に、元本割れリスクのない金融商品などありません。唯一元本割れリスクのない商品は、日本国債でしょう。満期まで保有すれば、元本と約束した金利の確実な支払いを日本国が保証してくれるからです。仮に、「日本は信用ならない。国がつぶれたら保証されないだろう」と思うなら、正論としては、ただちに他国に居住したほうがよいということになります。自分が信用できると思える国に住んだほうが幸せだからです。

他国の国債に投資する方法もありますが、為替レートの変動リスクがつきまといます。また、いざという時に換金できるかどうかの機敏性などが、国境をまたぐ分落ちるかもしれません(詳しくは知らないですが)。よって、日本国民にとっての日本国債同様のリスクフリーとは言えないでしょう。

日本国債の利回りは、0.05%などです。これが、今の社会経済環境下で、リスクフリーで得られる利回りです。これを超える利回りの商品は、リスクフリーではなく、必ず何らかのリスクを抱えるということです。

そして、当然ながら、儲けの可能性とリスクは表裏一体です。何のリスクもなしにおいしいものだけ得られるなどありません。完全比例ではありませんが、利回りの高さ(=儲けの大きさ)の可能性に応じて、リスクは高まります。利回りの高そうな商品ほど、元本割れなどが起こる前提で買わなければなりません。

利益性が高い事業を継続している企業もありますが、それはあらゆるリスクを想定しリスク要因をおさえるなど、高い利益性を維持するための相当な努力を続けているからだと思います。単に買って持っておけばリスクフリーで高く儲かるものなど、存在しないはずです。

それから、「理解できてないものは買わない(=理解できたものを買う)」も原理原則です。商品やサービスの購入は、売り手と買い手の契約です。契約であるからには、買い手のほうも何を買おうとしているのか理解しようとすることが前提です。

もちろん、私たちは日常生活の中で、理解や判断をスキップして「おもしろそうだから」「直感で」買うという行動もします。そのうえで、「思ったのと違って便利でなかった」「自分の好みではない」などであっても「仕方ない」とし、理解してなかったものの「納得」するのが通常だと思います。

なぜか金融商品や投資目的の商品にはこの構図が当てはまりにくいようですが、買い手側の責任もあると言えるのではないでしょうか(もちろん、自分の意志に関係なく無理に買わされた、説明を求めたのに明らかに説明不十分だったなどがあれば、まったく別の問題です)。「よくわかってないのに試しに買って損した。全部あんたの責任」というのも、筋違いだと思います。もし損失リスクを1ミリも負いたくないなら、日本国債しかありません。

これらのことは、事業活動でも同様だと思います。取引先への信頼や期待先行で購入の決裁をするにも、効果やリスクは勘案するべきです。そうしたプロセスなく「あなたが勧めるのなら買います」もありですが、その場合はもし当初の想定と違ってもそれを受け入れるということだと思います。

次に、売り手の立場から考えてみます。企業の存在意義は、その企業ならではの商品やサービスを通してお客さまに貢献し、その活動に参画する社員も幸せにすることです。これらの点が、同商品の販売方法で満たされていたのかというと、記事内容からはおそらくそうではなさそうです。本来の存在意義に立ち戻れば、上記記事のような内容は起こらないはずです。

おそらく、かつて儲かった融資では儲からなくなったため、他に稼ぎとなるアイテムを探し、そのひとつがハイリスク・ハイリターンの証券販売ということになったのだと想像します。

金融機関はもともと、顧客である企業の事業成長や、個人の安心安全や利便性向上にあったはずだと思います。その基本に沿った商品・サービスを基本に沿った形で提供するか、もしそれがなければ新たな商品・サービスを開発することが必要です。

近江商人による「売り手」「買い手」「世間」の「三方良し」は、シンプルながら奥が深く実践が難しい。よって本当に三方良しを実践し続けることができれば、強くてよい会社をつくることができるのだと考えます。

<まとめ>
中身を理解したうえで買う。売り手は、理解してもらえるように伝える。

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