資産形成を取り巻く環境
9月7日の日経新聞で、「NEC、金融助言会社を買収 会社員の資産形成支援 まず社内2万人、事業化へ」というタイトルの記事が掲載されました。会社員というか日本人全体で進んでいない資産形成支援に商機があると見ているのだと思われます。
同記事の一部を抜粋してみます。
米国の家計の金融資産が約1.6京円で、日本の約8倍です。同記事には欧州地域の家計の金融資産の紹介もあり、28.6兆ユーロとなっています。1ユーロ=158円として日本円に換算すると約4520兆円で日本の倍以上となります。これらの差は、そのまま物価、賃金、経済成長の度合いの差にほぼ当てはまります。
上記記事に関連し、企業側の視点を2つ考えてみました。ひとつは、資産形成支援ビジネスはこれから商機がありそうだということです。
私は、それほど熱心ではなくあまり時間をかけられていませんが、いわゆるポイ活(ポイント活動)を少しやっています。歩くとポイントが貯まるアプリなどです。ポイントを集めることにそれほど執着はないのですが、ポイント取得時にどんな広告が出るのかのトレンドを見物しています。最近は、資産形成サービスに関する特定企業の広告をやたらと見かけます。この市場に注目している表れなのだろうと思います。
以前の投稿では、家計の金融資産では依然として現預金が圧倒的に多いながら、若手世代は投資意欲も高まっていて、変化の兆しも感じられるという内容をとりあげました。NECのように、従来は金融機関でなかった企業において、特にデータを扱うノウハウのあるIT系企業などにとっては、この市場は有望かもしれないと考えます。
もうひとつは、自社の人材をテストマーケティングとして活用することの有効性です。
記事では、「NEC本体の社員2万人を対象にサービス内容を開発・検証したうえで他の企業にも売り込む」とあります。これだけの規模の人材相手に新サービスをテストすれば、サンプル数としては十分です。
その結果を分析し開発に反映させて市場に投入すれば、スピード感があり、かつより的確なサービスの提供が実現しやすくなります。身内を実験台にした研究開発は以前から各社で行われていましたが、そのやり方も今後さらにダイナミックに変えていける可能性があるのではないかと推察します。
消費者側の視点としては、自ら金融について学ぶ必要性と資産形成の可能性を改めて感じました。
同日付の紙面で「50年住宅ローン、若者照準 広島銀など」という記事もありました。一部抜粋してみます。
金融機関がこぞって売り出すということは、それだけ需要が見込まれるということです。
30歳でローンを組んで返済終了は80歳。このローンの是非は、住宅購入を純粋な住居とみるか、投資目的も兼ねるのか、その土地に永住するつもりかそうでないか、個人の価値観によって変わってきますので、一概には言えません。いずれにしても選択肢が増えるのは望ましいことです。
そのうえで、こういったローンを組むことのメリット・デメリットを判断できる目利きが必要となります。このことは住宅ローンに限らず、すべての金融商品にも当てはまります。以前、売り手側の銀行が説明不十分だったとして仕組み債が問題になりましたが、買い手側の消費者も勉強不足だったという指摘もあります。
細かい運用は売り手に任せるとしても、そもそもその商品を選んでよいかどうか自体の判断まで売り手に丸投げなどでは、資産形成にはならないと思います。
上記記事によると、月々の住宅ローン支払いを2万1千円=年間25万2千円減らせるということです。つまりは、年間25万2千円の資金を新たに、金利1%で借りられるということになります。1%は50年もの長期の借入の金利としては格安です。この25万2千円×年数を有効に投資して1%を超える利益を生めば、資産は増えることになります。これはいくらでも可能でしょう。
金融投資でなくても、能力開発などの自己投資に回すのもよいかもしれません。有効な自己投資に回すことで80歳まで活躍できる十分な職能開発やキャリア形成をすれば、ローンの支払いが残っても怖がる必要はなくなります。
資産形成市場は、これまでの日本であまり活発とは言えなかった分、今後は企業にとっても個人にとっても大きな変化になるかもしれません。より能動的に向き合ってもよいのではないかと考えます。
<まとめ>
資産形成市場は、今後の日本でもよりアクティブになっていくのではないか。
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