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従業員のエンゲージメントを高めるには(4)

前回まで、エンゲージメントをテーマに考えてきました。エンゲージメントを高めるために有効な視点として、1.シンプルに、組織活動を「質×量」の掛け合わせでとらえる、2.複合的な施策の組み合わせで考える、3.社員を組織活動の企画や制度設計に巻き込む、の3つについて考えました。

4.自律性を促す

私たちは、物事に対して「自分でこうしたいと決めて、これに取り組んでいる」と、自律的に向き合えているほうが、よい成果を生みやすく、意欲の高い状態で取り組むことができます。逆に、やらされ感で何かをやっている時には、成果につながりにくくなります。

エンゲージメントは、自律性と相性が良いと想像できます。自律性高く物事に取り組める状態がつくれていれば、その環境下にある組織に対してのエンゲージメントが高い状態につながります。

ここでポイントとして挙げられるのが、選択肢の存在です。

コーチングで「GROWモデル」と呼ばれているものがあります。

・GOAL:ゴール・目標の設定
・REALITY/RESOURCE:現状の把握/資源(目標達成や問題解決のために使えそうな人・物・金・情報・時間・知識・経験など)の発見
・OPTIONS:選択肢の創造
・WILL:意思決定

選択肢の創造とは、今ある資源や、今はないが手に入れられそうな資源を使って、行動・実行できることに何がありそうか、できるだけ多く考え出すということです。選択肢の創造が豊かで、出てきたものの中からベストと思える方法を選んで行うことを意思決定すると、成果につながりやすくなるという考え方です。このイメージが、エンゲージメントにも通じます。

例えば、人事制度で想定するキャリアのコースが1つだけではなく、いくつかありそこから選べるほうが、従業員は自分で進む道を選んだ感が高まります。転勤を含む配置転換がいつあるかわからずそれに従うことが求められるより、全国転勤型・エリア内転勤型・転勤無型から処遇形態を選べるほうが、やはり選んだ感が高まります。選んだ感が高まるほうがより自律的に仕事ができ、エンゲージメント向上につながりやすくなります。

また、選択肢がない場合についても、伝え方に注意する必要があります。例えば、本人にとって予想していない配置転換を行うにあたって「業務命令でここに行ってもらうことになったから、よろしく」とだけ伝えるのと、(適当ですが)「これまでの月次面談、キャリア面談で聞いてきたことや、今のスキルの状況から慎重に判断した結果、ここに行くのがベストだと会社も私も考えている。どうかな」と伝えるのとでは、自律性の促しの観点で雲泥の差です。

本人に選択してもらう機会を増やす、あるいは選んでいると感じられるような環境をつくることは、大切です。

5.リーダーの指揮官先頭・率先垂範で行う

ある企業様では、従業員との1対1ミーティングを社長が率先して行っています。幹部との1時間ほどの1対1ミーティングを月に1回以上行っているそうです。幹部から「どうしても今日中に相談したいことがある」という連絡を受けた時は、どんなに遅い時間になったとしても会って話す時間をつくるそうです。(物理的な制約で、一般的にはなかなかここまでできませんが)

別の企業様では、従業員全員と1対1は難しいながらも、月1回1対10(従業員10人1組)ぐらいで、その場では何を言ってもよいという対話の場を設定していると聞きます。

「1対1ミーティングを自社でも取り入れ推進する。ついては積極的に行ないなさい」とだけ言って、自身はそうした活動にまったく関心ない、などだと、やはりその組織活動はうまくいかないでしょう。

ストレスチェックの導入支援をしている方から、「役員がストレスチェックに回答しなくなり始めると、その後会社全体の回答率も落ちて、業績も落ちていく傾向がある」という話を聞きました。

結果としてのエンゲージメントを高めようとし、組織活動を企画して取り組むのであれば、やはりその活動の最高責任者であるリーダーが指揮官先頭・率先垂範で行うことが、必須だと思います。別の言い方をすると、指揮官がその活動に対して自律的ということかもしれません。

DXも、経営課題だという認識を持って、社長による強いトップダウンで向き合わないとうまくいかないと聞きます。指揮官先頭・率先垂範の視点は、エンゲージメントのテーマに関係なく、すべての企業活動で同じだと思います。

6.上司や先輩がモデル人材となること

このことが、結果としてのエンゲージメントを高めるうえで、最も有力かもしれません。上司や先輩が、「あの人のように自分もなっていきたい」「あのような仕事ぶりから学びたい」という存在になっていれば、その組織に所属し仕事を続けることに活力もわいてきます。逆に、一緒に仕事をしたいと思える人が誰もいない組織では、エンゲージメントは高まりようがないでしょう。

モデル人材も、ひとつの種類である必要はないと思います。全体的な組織マネジメントに優れている人、何かの領域に特化しその領域では卓越したスペシャリスト、企画などは苦手だが他のメンバーを支える言動が理想的な人など。各人の強みを生かした様々なモデルがあることで、「私には、Aさんのような活躍は無理だけど、Bさんのような活躍はありかも」のイメージでモデルにも選択肢があると理想かもしれません。

以上、エンゲージメントをテーマに4回にわたって考えてきました。4回で網羅できたのは、エンゲージメントについてのごく一部のことだと思います。またの機会に取り上げてみたいと思います。

<まとめ>
組織活動では、メンバーの自律性を促すとともに、リーダーの指揮官先頭・率先垂範で行うことが、エンゲージメント向上につながる

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