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従業員のエンゲージメントを高めるには(3)

前回まで、エンゲージメントをテーマに考えてきました。「従業員エンゲージメント」の成立には、組織の成果が上がっていること、仕事で関わる人や組織との関係性の深まりを伴っていること、が必要ではないかと考えました。

エンゲージメントを高めるには、どんなことに取り組んでいけばいいのでしょうか。この問いについて、いくつかの観点から考えてみます。

1.シンプルに、組織活動を「質×量」の掛け合わせでとらえる

「質」とは中身、「量」とはかける時間やエネルギー、実施頻度などです。

たとえば、多くの企業で取り入れられている、上司と部下の1対1ミーティングがあります。中身のまったくない対話の時間をどんなに高頻度で行っても、おそらく効果はゼロです。ゼロに何をかけてもゼロだからです。その1対1ミーティングによってエンゲージメントが高まるという結果もないでしょう。

ゼロどころか、「あの1対1ミーティングは苦痛でしかない」など部下にとってマイナスの認識になっていれば、時間をかけるだけ結果としてのエンゲージメントもマイナスになるというイメージです。

一方で、素晴らしい対話機会になっていたとしても、年1回などでは効果も限られると想像できます。質が良くても量がなければ、取り組みとして不十分ということです。質・量のどちらも相応に高める組織活動を目指していく必要があります。

2.いろいろな取り組みの組み合わせで考える

何かひとつの施策だけで組織活動全体の成果をあげようとする(結果としてのエンゲージメントを高めようとする)のではなく、いろいろな施策を組み合わせてとらえる視点が大切だということです。

例えば、ある中小企業様では、「社員が社長から言われたことしかしない町工場(コウバ)」から、「次世代の経営を担うマネジメントチームが中心となって経営計画を動かしていく自律的な工場(コウジョウ)」への移行を目指していました。その動きの中で、次のような取り組みを行いました。

・人事評価制度の改定により、社員等級ごとに求める役割や行動、考え方を刷新。

・等級ごとの役割に応じた外部研修(管理職研修、中堅社員研修・・など)の体系をリニューアルし受講。管理職者向けのマネジメント研修を内製で見直し。

・全社員が参加する年2回の経営ビジョン合宿を新たに開始。ビジョンへの理解を深める機会としながら、部署・個人ごとの戦略目標と学習目標もその機会に検討。

・全管理職による月1回のPDCAミーティングを開始。これまで非開示にしていた経営数値情報も、読み方を教えた上で開示。非管理職者も希望者は自由に出入り可能とした。

これらによって、各人が何のために仕事をするのかを自律的に考えるようになり、研修にも目的意識を持って参加できるようになったと聞きます。経営ビジョンに立ち返り、目標の質も高まって一体感も高まりました。新規事業の企画も社員発であがるようになり、売上もあがっていると聞きます。

その結果、外部研修で学んだ社員が自発的に社内で勉強会を開くようになった、ある管理職が家でも勉強するようになり、その姿を見た息子が新卒で入社してきた、指示せずとも管理職のほうから将来戦略の提案がなされるようになったなど、以前は考えられなかった事象が見られるようになったそうです。これらのことから、明らかに従業員エンゲージメントが高まっているはずだと想像できます。

上記の例も、何か特定の施策だけでエンゲージメントを高めようとしているのではありません。自社のあるべき姿である「コウバからコウジョウへ」を実現させるために、必要となる組織活動の各取り組みを並行して行っています。上記例のようなイメージで、合わせ技で結果としてのエンゲージメントを高めるという視点が大切なのではないでしょうか。

3.社員を組織活動の企画や制度設計に巻き込む

例えば、上記例にもある人事評価制度改定を行うような場合に、その設計プロセスに検討メンバーとして社員も巻き込み一緒に行うことです。

社員全員を全設計プロセスに加えることは無理もありますが、たとえば各部から主だった人や挙手制で希望した人を検討メンバーに入れる、節目の検討ミーティングで意見をもらうようにする、設計途中に全社員説明会を何度か開いて経過報告し質問を受け付けるなどをすることで、できあがった時に「自分たちも参画しながらつくった」という状態に少しでも思えるものに近づきます。

組織でよい変化をつくりだそうとするプロセスに、可能な限り企画段階からメンバーも巻き込むことで、その活動が効果を上げる取り組みになりやすいはずです。結果として、組織や関わる人への関与・思い入れの度合いも高まり、従業員エンゲージメントも高まることになるはずです。

続きは、次回以降取り上げてみます。

<まとめ>
各取り組み施策の組み合わせで、全体的な観点からエンゲージメントへの波及効果を考えてみる

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