日本の人事部サイトで「職務を分担することで、求められるミッションを推進 管理職の成果を高める、日揮グループの「管理職分業」」というタイトルのインタビューコラムが掲載されました(4月9日付)。
管理職の負担が年々重くなっていると言われている環境下で、管理職に期待される機能を複数人で分業することを制度化しようとするものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
同社の管理職分業の取り組みについては、以前にも取り上げたことがあります。その際にも、1人の人材がマネジメントに必要な機能を全役担う必要はない(役者を分担してもよい)ということについて考えました。
冒頭の記事からは改めて、「管理職」や「マネージャー」の仕事について、以前と比べてその範囲がより広く、より多面的に、より難易度が高くなっていることが伺えます。そして、事業を取り巻く環境変化のスピードが速くなっていることが挙げられます。それに伴って、1人の人材が管理職業務のすべてに対応することが難しくなっていると言えます。
加えて、おさえておきたいのは、多くの人がその難易度の高い職務を行ううえで十分な能力開発をしてきたわけではない、ということです。
以前であれば、年功序列的に、主任、班長、係長、課長補佐、課長、部長補佐、のように、時間をかけて管理職の準備を経験しながら次第にその職責範囲を広げていくというやり方をしている企業も多かったはずです。
その中から全員が課長や部長になるわけではなく、適任だという人材を選び出して、任せていくことも可能でした。こうした構図は、事業やビジネスモデルが長期に安定し、人材が一定数安定して組織に流入し続けることが前提となります。
今では、事業やビジネスモデルの長期安定を前提にできない企業も多いはずです。加えて、潤沢な労働市場から安定して人材採用できる環境でもありません。多少見切り発車ではあるものの、成果を上げてきた人材を抜擢して組織を任せるという判断の増えている企業も多く見られます。
よく言われていることに、名プレイヤーと名マネージャーは異なります。マネージャーには不向きで本人も志望しない名プレイヤーをマネージャーにアサインしてうまくいかないという状況も、以前より起こりやすくなっていると言えます。
同社の例も参考にすると、解決の方向性として大きく2つ考えられそうです。分業し役割の範囲を絞ることと、マネジメントに必要な能力を身につける機会を増やすことです。
役割の範囲を絞ることは、役割を明確にすることに通じます。同社の分業の例では、各管理職の役割を絞り何に責任と機能を追うのか、管理職間でどのような連携をとってマネジメントを推進していくのかについて、明確にしているのではないかと伺えます。
また、組織内からもその効果を評価する声が大きいようです。同記事では次のように紹介されています。(一部抜粋)
マネジメントに必要な能力を身につける機会については、企業と個人の側が共通の目的をもったうえで、日々の業務を通して能力開発につながる機会づくりを進めていくことがその推進力になります。同社の例では、CDMがその機能においてカギとなっているように見えます。
また、AIや各種アプリなど、いろいろな学習ツールも増えています。マネジメントの総合力の体得がこうした学習ツールで完結するわけではありませんが、多くの管理職がマネジメントに関する基礎情報のインプットに不足があることも指摘されています。知識や情報のインプットについては、こうした学習ツールを積極的に一層活用していくことも必要だと考えます。
管理職分業を導入しようとした場合、導入するのに適正な規模の組織なのか、それぞれの職位の役割は明確に定義できるかが、ポイントになりそうです。自社でも同様に部長を分業する、と単純に模倣するわけにはいかないと思いますが、同社の例は今後の管理職業務のあり方について考えるうえで参考になりそうです。
<まとめ>
管理職業務の難易度は高くなっている。