夏の金曜とプレミアムフライデー
9月1日の英フィナンシャル・タイムズ電子版で、「米国の金曜、仕事ほどほど 在宅勤務増で拍車」というタイトルの記事が掲載されました。金曜日の午後早めに仕事を切り上げる動きが進んでいると紹介している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
日本でも、月の最終金曜日に早い時間帯で仕事を切り上げることを奨励する「プレミアムフライデー」という運動が2017年に叫ばれていましたが、まったく聞かなくなりました。上記はまさにプレミアムフライデーの毎週版の印象です。経緯は存じ上げませんが、国外でそのような習慣があることに多少なりともヒントを受けての運動だったのではないかと推察します。
同記事から考えたことを2つあげてみます。ひとつは、努力義務を伴わない、各人の自主性に委ねる一律の運動は、社会的に流行りにくいのではないかということです。
実行しない場合に罰則を伴う義務や、罰則を伴わないまでも努力義務とされることは、「守らなければならない」と相応に身構えて具体的な行動変容を考えるものです。一方で、そこまで至っておらず「そうするのもいいよね」という位置づけにとどまるスローガンであれば、私たちには大して響かないのかもしれません。
加えて、例えば地球環境問題に直結することや大きな社会問題にかかわることなど緊急度の高いテーマであれば、放っておくとまずいという危機感に訴えかけられて動き方が変わってくるのかもしれませんが、プレミアムフライデーは緊急度が高いとは言えません。反応しにくいテーマだと言えます。
この点については、同記事によると米国では相応に根付いているようですので、国や文化圏の差もあるのかもしれません。
もうひとつは、現状以上に一律で仕事をしないルールをつくるのは無理があるのではないかということです。
日本は世界でも最高レベルで休日が多い国です。土日に加えて日数の多さで世界トップレベルの祝日があり、既に相当数の3連休が配置されています。他にも、多くの会社で夏季休暇、年末年始休暇があり、会社が定める記念日も休みになっている場合があります。
OECDによるデータ「2022年 年間労働時間(全就業者)」によると、調査対象国で最も労働時間が長いのはコロンビアで2,405時間となっています。2位はメキシコの2,226時間、5位は韓国1,901時間、12位が米国で1,811時間。イタリア、スペイン、ポルトガルなどヨーロッパの国もいくつか20位台までに出てきて、日本は30位で1,607時間となっています。
もちろん、北欧諸国など日本より労働時間の短い国も他にありますが、OECD平均1,752時間を下回って、日本は既に労働時間が短い国の一角となっています。20世紀後半に日本が世界トップレベルで長い労働時間の国だった頃から、まったく違う社会環境に変わっていると言えます。一律につくる「不就労の時間」は、もう限界近くまできているのかもしれません。
米国は依然として長時間労働国の一角なわけです。さらなる連休への需要の余地があるのかもしれません。こうした背景の違いをおさえずして「米国でプレ金が広がっているから日本でも」のように考えると、的を外してしまうかもしれないと思います。
ちなみに、これは私見であって裏どりできていませんが、米国で労働時間が長い一因は、アメリカンドリームを夢見ながら渡ってきて労働意欲旺盛な移民が、全体の労働時間を押し上げている結果ではないかと想像します。
日本で必要なのは、一律に休む時間のルールをこれ以上設定することよりも、各人に裁量を持たせて就労・不就労の時間を決める自由度を増やすことではないかと考えます。つまりは、規律のある自由とそれを自己管理しながら成果を上げる習慣づくり、というイメージです。
<まとめ>
プレ金の広がるエリアと広がらないエリアは、そもそもの社会背景も違う。
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