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家庭の事情を気づかったつもりが

先日、ある管理職の方とお話する機会がありました。

その方の部署のメンバーには、子育て中の女性社員Aさんがいます。自分の抱えている仕事を一部手放してAさんに移管し、自分はマネジメント業務により専念できる環境をつくる。そして、Aさんの成長を促すということを目標にしたということです。

お聞きしたのは、以下のような内容でした。

・Aさんはいわゆる非正規社員である。優秀でパフォーマンスも高い。できれば正規社員に転換したいと思っている、というような話を以前聞いたこともある。よって、Aさんへの業務移管を、以前から行いたいと考えていた。

・しかし、現在子育て中であり生活を最優先する価値観だと思われることから、これまでは業務移管に踏み切れずにいた。

・そのうえで、この度Aさんに業務移管するという目標を設定し、踏み込んでAさんに働きかけてみることに決めた。まずは、今までの働きぶりについて評価していること、そして、とても助かっているということを改めて伝えた。

・そのうえで、正規社員への転換を目指すのであれば、明確な実績がないと自分としても周囲を説得しづらいこと、自分の業務を引き受けてくれることでマネジメント業務に専念できるようにすることで目に見える貢献実績をつくり、さらなる成長も目指してほしい、そして自分を助けてもらえないかと打診してみた。

・その結果、本人納得のうえで、Aさんに業務移管し仕事を増やしてもらうことができた。

このエピソードからは、大きく2つのことを感じました。ひとつは、本人以外の人が、本人に対して一方的な思い込みで制約をつくってしまっているかもしれない、ということです。

Aさんが正規社員転換への関心を持っているのではないかということを、上記管理職の方は知っていました。そのうえで、今は子育て中だから難しいのではないかと、本人に明確に尋ねることもなく線引きをしていたわけです。

この管理職の方は、ご自身なりの気づかいで、よかれと思ってそのようにしていたのだと思われます。しかしながら、その気づかいがかえって、Aさんの意欲・能力開発に蓋をしてしまっていたのではないかと言えそうです。

子育て中だから、生活優先だろうから、

・今仕事の負荷を増やせないだろう
・新しい仕事へのチャレンジや業務内容の変更はできないだろう
・残業はまったくできないだろう
・出張を伴う業務は無理だろう
・リーダーや管理職といった他者の仕事に関するマネジメントを伴う業務をやってもらいたいが、今お願いはできない

など、勝手な思い込みで当人以外の人が当人に制約をかけてしまっているという話は、よく聞くことがあります。

ちなみに、この管理職者は女性の方です。男性の方であれば、なお上記のような傾向が強そうと想像できるのではないでしょうか。

ではどうすればよいか。

シンプルに、本人に直接聞く。

これ以上のソリューションはないと思います。もしできないなら「できない」と、はっきり答えてくれるのではないでしょうか。

もちろん、相手によっては、本人を取り巻く環境への配慮を踏まえた上で気づかいながら聞く、本音で話をしてくれるような信頼関係を普段から築いておく、ということが大前提です。

同社様では、上司部下間でのいわゆる1対1ミーティングなどはこれまで行われておらず、全社的に上司部下間をはじめとするメンバー間のコミュニケーションが不足していたそうです。その状態では組織のポテンシャルを引き出すことができないということで、最近組織力を高める活動を推進しています。その流れの中で、冒頭のような動きが出てきたというわけです。

1対1ミーティングに力を入れている企業であれば、その時間内で「実際のところ、どのような状況なのか、どんなことを考えているのか、シンプルに、本人に直接聞く」ということがなされるとよいと思います。

もうひとつのことについては、次回以降取り上げてみます。

<まとめ>
シンプルに、本人に直接聞く。

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