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野球部員の丸刈りを考える

全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)が行われています。野球に限りませんが、日ごろからの鍛錬を積み重ねて、その発揮を競い合う選手同士の試合を見るたびに、脱帽する思いです。

その夏の甲子園に関連して、8月17日のヤフーニュース記事「【甲子園】ベスト8に“丸刈りじゃない”3校が勝ち上がり話題 高野連の調査でも傾向が大きく変化」が目に留まりました。

同記事の一部を抜粋してみます。

勝ち残ったチームのうち“非・丸刈り”のチームが3校残っている。準々決勝4試合の組み合わせは以下の通り。☆印のチームが“非・丸刈り”だ。

第1試合 沖縄尚学(沖縄)―☆慶応(神奈川)
第2試合 ☆土浦日大(茨城)―八戸学院光星(青森)
第3試合 神村学園(鹿児島)―おかやま山陽(岡山)
第4試合 仙台育英(宮城)―☆花巻東(岩手)

高校野球、特に強豪校の頭髪と言えば丸刈りが定番のイメージだったが、近年は頭髪を伸ばした球児の姿も珍しくない。ネット上でも「甲子園ベスト8 長髪チームが結構いる。慶應、花巻東、土浦日大」「髪の長さで勝負は決まらんよ」(原文ママ)と、高校野球ファンが思い思いに感想を述べている。

こんな統計がある。日本高野連は今年6月、全国の加盟校野球部(硬式)を対象に、5年ごとに行う「高校野球実態調査」の結果を発表(99・2%に相当する3788校が回答)。厳しい規律は緩和される傾向にあり、「頭髪の取り決め」について「丸刈り」は約26・4%で、5年前の約76・8%から激減していた。

私の高校時代も、通学した高校を含め周辺の高校すべてで野球部員は頭髪を丸刈りにしていました(それも、軟式野球部は丸刈りではなく、硬式野球部のみが丸刈り)。なんとなくそのイメージでいたため、「丸刈りの頭髪取り決め」をしている野球部が四分の一(約26・4%)というのは、意外に少ない印象です。

勝負は頭髪で決まるものではないでしょう。それを前提としたうえで、同記事に関連して3つのことを考えました。ひとつは、丸刈りルールにすることと頭髪自由にすることは、双方にメリット(あるいはデメリット)がありそうだということです。

ウィルパワー(意志力)という概念があります。私たちが何かを決定するときに使うエネルギーのことです。人が持ちうるウィルパワーは容量が決まっていて、力が限られているのだそうです。そして、ウィルパワーは何かを決定することで消費されていきます。

ケンブリッジ大学の研究によると、人は1日に最大3万5,000回の決断をしているそうです。これには、「今日どんな服を着ようか」「何を食べようか」などの、日々の細かい意志決定も含まれます。こうした細かい意志決定でウィルパワーを消費していくと、大きな意志決定をすべき肝心な場面で思考力が残っていないかもしれません。このことは、個人の単位でも組織の単位でも言えるでしょう。

Facebook創業者のザッカーバーグ氏がいつも同じ服を着る、イチロー氏が毎朝カレーを食べるという話が知られています。これらは、「今日どんな服を着ようか」「何を食べようか」といった細かい意志決定をしなくてよい環境をつくり、もっと大事な場面に備えてウィルパワーを温存するための取り組みだと言えます。

「頭髪は丸刈り」に決め込むことで、毎日頭髪のことを考える必要がなくなります。思春期の学生は、髪型に興味を持ち始める頃です。髪型をどうしようかこうしようか考えることに時間やエネルギーを使わなくてすみます。シャンプー&ドライヤーもすぐに終わります。その時間やエネルギーを野球のことに使うのは、野球選手にとっては有効だと言えます。

しかし、高校生活は野球だけではありません。頭髪のことをあれこれ考えながら交友関係を楽しむことも高校生活の一部です。これは野球部員でも例外ではありません。野球への取り組みを高校生活の最優先事項とし、2番目の優先事項と大きく開きがある学生であれば、このことの放棄は問題ないのかもしれません。

一方で、そうではなく野球以外のことも相応に優先順位の高い学生にとっては、野球部員になる=無条件で丸刈り、は大いに問題かもしれません。人によって、丸刈りルールが大きなデメリットになり得ます。

他のデメリットとしては、ウィルパワーを温存できる代わりに、思考停止のひとつになる可能性もあげられると考えます。

私自身、保育園時代から中学校を卒業するまでずっと丸刈りでした。高校入学と同時に髪を伸ばすことになったのですが、「どうすればよくて、散髪屋で何を話したらいいのかわからない」という状態が相当期間続きました。丸刈りのほうが何も考えずはるかに楽だと。このことは、逆に言うと思考せずに済んでいたということです。

ザッカーバーグ氏やイチロー氏のように、自ら考えてウィルパワー温存のために機械的なルーティーンをつくるのは思考した結果ですが、最初から強制されて丸刈りにするのは思考停止につながりかねません。そして、この思考停止習慣が、肝心の野球でのプレー中必要な思考や、頭髪以外の生活面で思考が必要な場面にも波及していく可能性もあるのかもしれません。

続きは次回取り上げてみます。

<まとめ>
丸刈りは、ウィルパワー温存の面と、思考停止の面と、双方が考えられる。


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