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出社回帰を考える(3)

前回まで、リモートワークから出社に回帰する動きも見られる中で、改めてリモートワークをテーマに考えました。リモートワークの難しさの一因に、産業革命以降社会や組織の側に移った時間の支配権を再び個人に委ねることへの不安があるのではないか、一方で時間の支配権がまったく個人に移管されないのであれば、リモートワークの意味はなくなることについて考えました。

時間の使い方の裁量を個人に持たせるのであれば、その個人に対する評価の尺度を成果で測ることが大切になってくると考えます。

会社内の空間であれば、決まった時間どこで何をしていたかで貢献度合いの大きさをある程度推し測ることもできますが、会社外の空間では無理があります。

逆に言うと、拘束された労働時間の長さに対して成果が比例しやすい業務は出社向き、そうはなりにくい業務ほどリモートワーク化の対象にしやすいということかもしれません。

成果を評価の尺度にするとは、下記のイメージです。

・リモートワークという形態で、どの仕事にいつどのような時間の使い方をするのかは個人に委ねる

・そのうえで、各人に期待している仕事の成果を果たしているかいないかで評価する

・仕事の成果を果たしていない、そして果たしていない状態に改善が見込めず、出社という形態をとることで改善できるのであれば、出社に変える

「熱心に働いてそうに見えるか」ではなく、「成果を上げているか(あるいは成果を上げるために必要となる具体的な中間生産物を期待通り生み出しているか)」を評価の基軸にすべきだということです。

以上のように考えてみましたが、そうはいってもコミュニケーション領域や成果で評価するといった領域の課題突破は難しく、ほとんどの経営者がグレーなハイブリッド勤務ではなく、オフィス勤務への完全回帰という白黒決着を求めていることが伺えます(前回参照した新聞記事より)。

前回の参照記事では、「アマゾンの週5日出社強制には、企業文化を強固にする狙いがある」とありました。組織文化をつくるうえで、前回挙げた1.2.3.(下記)が、リモートワークという形態ではやりきれないと判断しているのだと考えられます。

全員オフィス勤務のほうが、メンバー間での、
1.直接見聞きできる情報が多い
2.直接は見聞きできない情報についても、新たに見える化しやすい
3.直接見聞きできる情報のやり取りを深めることで、メンバー間での共通認識を深めたり、創発的な価値が生まれたりしやすい

一方で、リモートワークという形態ながら、コミュニケーションの取り方を工夫することで、働きがいと働きやすさの両立を実現し、メディアなどで取り上げられている企業もあります。

10月1日の日経新聞記事「週3出社で生産性維持 米大研究 テレワークと併用」でも、次のようにあります(一部抜粋)。必ずしも完全出社が必要とは限らず、やり方次第の面もありそうです。もちろん、一例にすぎず、業種、業態、ビジネスモデルなどによっても、結果は変わってくるものだと思います。

米スタンフォード大学や香港中文大学などは、出社とテレワークを組み合わせるハイブリッド勤務を採用した職場では、仕事の生産性を維持したまま離職率を3分の2に減らせることを大規模な実証研究で明らかにした。在宅勤務で生産性が低下するという定説とは異なる結果だった。

世界の在宅ワーカーの7割は「週2日在宅、週3日出社」などのハイブリッド勤務をしている。ハイブリッド勤務も在宅勤務と同じ傾向となる可能性もあるが、実際に調査した事例はなかった。

今回、中国の旅行予約サイトの携程集団(トリップドットコム)の事務職員とIT職員の計1612人を対象に、2021年8月から22年1月までランダム化比較試験を実施した。参加者を2グループに分け、片方のグループに平日5日間の出社を指示し、もう片方のグループに水曜日と金曜日が在宅勤務で、残りの3日間出社するハイブリッド勤務を指示した。

その結果、完全出社とハイブリッド勤務で、仕事の生産性に有意な違いはみられなかった。各従業員のパフォーマンス評価や昇進率、書いたソースコードの行数などに差異がなく、パフォーマンス評価の下位項目である「イノベーション」「リーダーシップ」「開発」「遂行力」などの全9要素でも同様だった。

このテーマについては、少なくとも現時点で、出社orリモートでどちらに軍配、というわけではないのだと思います。

そのうえで、リモートワークという形態が成立するには、コミュニケーションのあり方、取り方、成果ベースで判断する、などについて、私たちが想像している以上に構造的、能動的な理解と取り組みが必要だということが、言えるのではないかと思います。

<まとめ>
リモートワークでは時間の支配権が個人に委ねられる以上、成果ベースでの評価が不可欠。

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