高利益率企業に学ぶ差別化

普段様々な経営者・経営幹部の方と話していると、商品の値段や値下げについて話題になることも多いものです。6月17日付の日経新聞記事「巧みなブランド戦略 中国茅台酒、時価総額トヨタ超え」では、商品の値段について考えさせられる、興味深い内容が書かれていました。同記事の一部を抜粋します。

「中国の株式市場で白酒製造最大手、貴州茅台酒が存在感を高めている。商品の種類を絞り、出荷量を調整して希少価値を高める巧みなブランド戦略が好業績を支える。内外の投資家の注目を集め、中国大陸の製造業で最大の時価総額に躍り出た。

茅台酒の好業績は異彩を放っている。1~3月期の売上高は前年同期比13%増の252億元、純利益は130億元と17%も増えた。金融緩和で生まれた資金の矛先が価値の下がらない安全資産として茅台酒株に向かい、株価は足元、上場来高値圏で推移する。時価総額は日本円で26兆円を超え、米コカ・コーラやトヨタ自動車を抜いた。営業利益率は60%を超える。

代表商品「飛天」(53度、500ミリリットル)の正規販売価格は1499元(約2万2500円)と高価だ。飛天シリーズは茅台酒の売上高の約9割を占め、若者向けの低価格路線とは一線を画す。飛天は中国では特別な存在で高級ワインと同様、時間の経過で価値が上がる。

中国では00年代、経済発展で酒類の需要が増加した。商機とみた白酒メーカーは老舗大手の宜賓五糧液(四川省)などがアルコール度数や味わい、価格帯を広げ、商品群を一気に拡充した。茅台酒は高価格帯の飛天に経営資源を投下し、出荷量を調整する「逆張り」の戦略に打って出た。茅台酒の製品を安売りした小売店に対しては罰則的に供給を減らすなどの強硬策もとった。結果、他社が粗製乱造の印象を持たれた一方、高級ブランドのイメージをつくり上げることに成功した。」

中国と関わりが深い方なら、白酒は馴染みのあるお酒だと思います。私も、かつて中国人と一緒に仕事をする集中的な機会があったのですが、その時には何度もつぶされたことがあるお酒です。その白酒で、(保存して後で転売する投機目的もあるとはいえ)コロナ禍の1~3月に売上・利益を伸ばし、時価総額がトヨタを超えたということに目が留まりました。

そして、驚異的なのが利益率の高さです。営業利益率(営業利益/売上高)は10%を超えると優秀と言われていて、さらに製造業は突破が難しい数値です。製造業である同社で営業利益率60%超えは、とてつもない数値です。

ハーバード大学ビジネススクールのマイケル・ポーター教授の提唱によると、企業の基本戦略は3つ「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」です。コスト・リーダーシップ戦略が競合他社よりも低いコスト体制を実現すること、集中戦略が特定のターゲット層に絞って競合他社より効果的・効率よく戦うことです。いずれも、低コストの仕組みや特定ターゲットへの密着度で他社との差を実現させているという観点で言うと、広い意味ではいずれも差別化と考えることができると思います。つまりは、競争優位を築こうとするなら、何らかの差別化が必要だということです。

茅台酒は、業界他社の動きに追随せず、高価格帯の飛天に経営資源を投下して販売店にも値付けを維持させることを徹底するなどし、高級ブランドを維持する努力をしていたとあります。業界最大手プレイヤーであれば、商品ラインナップの多角化に走りやすくなるものです。そうではなく、商品・値付けを高価格帯に絞り込んで高級感でのブランド勝負に出ているところに、同社の差別化戦略の徹底を感じます。

心理学でいう「同調」は、企業にも作用します。業界他社の動きは気になりますし、その動きにつられてしまうこともよくあります。その上で、競合が同調して同じ動きをとっている流れは、それと一線を画し自社が何らかのポリシーをもってぶれずにやり抜けば、またとない差別化のチャンスにもなり得る、ということでしょう。

どんな商材でも差別化・高利益率は可能である、同記事からはそんな学びを得られるでしょう。また、値段以外の何らかの付加価値を高めての差別化・高価格で勝負するという視点は、価格競争では必ず大手に体力負けする中小企業にとって、特に大切だと思います。

<まとめ>
何かで差別化すれば高利益率が可能である。

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