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小説入れ

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2022年1月の記事一覧

小説:ラウンドアバウト・ミッドウェイ

パーカーのポケットに米が入っていた。 「は?」と思いながらも、なぜかそれを道端に捨てる気…

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小説:血の涙たちよ、いま踊れ

「こんな景色なんて」と呟いた僕は、忌々しく積もった雪にスコップを突き立てた。 必要以上に…

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【Ouka】 最終話.サンダーボルト・ハイパーガール

カフェのテラス席には、モネが描いたかのように柔らかな光が降り注いでいた。 私は時折キーボ…

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【Ouka】 9.イグナイター

「目にひじき入ったことあるんだよね」 遠くを見つめながらそう言ったナガセを私は二度見した…

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【Ouka】 8.雷鳴、再び

父が入院してから、私は心というものについて考える時間がすこしだけ増えた。 わからないこと…

【Ouka】 7.ビューティフル・バーンアウト

「サクラ、ちょっといい?」と、ドアの外から父の声が聞こえた。 普段と違う出来事に、私は少…

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【Ouka】 6.沈殿、凝固、ノボルハナ。

夏の始まりってこんなに静かなものだったろうか、と私は思った。 きっと記憶の中の夏が鮮やかすぎるのだ。 あるいは、音楽や漫画で描かれる夏のイメージが思い出にレイヤーをかけているのかもしれない。 実物は、思ったよりも彩りを欠いている。 まるで観光名所みたいに。 その人の煙草は花火の匂いがした。 私はそれが気に食わなかった。 夏が来るたびにあんたのことを思い出してしまうじゃないか。 「中学生の前で煙草を吸うのはよくないぞ」と私は言った。 「あっ、そうだよね。後ろで吸うね」 「そう

【Ouka】 5.在りし日の歌

泣いて大人になりたくない。 喪失を歌いたくなんてない。 追憶に浸りたくなんてない。 しんみ…

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【Ouka】 4.ラン・ベイビー・ラン

「なに読んでるの?」とナガセが言った。 「なんか…心象スケッチとかいうの」 「どんなの?」…

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【Ouka】 3.スノウ・パレード

悲しみとは、喪失に対する反応である。 でも私はなにかを失ったつもりはない。 気付いていない…

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【Ouka】 2.ヒット・イン・ザ・夕景

私は「より良い結婚」をするためにテスト勉強をしているわけではない。 「良い奥さん」になる…

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【Ouka】 1.雷鳴

雷の音が聞こえてくると、恐怖心と同時にどこかわくわくしている気持ちが存在する。 私は小さ…

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