【Ouka】 6.沈殿、凝固、ノボルハナ。
夏の始まりってこんなに静かなものだったろうか、と私は思った。
きっと記憶の中の夏が鮮やかすぎるのだ。
あるいは、音楽や漫画で描かれる夏のイメージが思い出にレイヤーをかけているのかもしれない。
実物は、思ったよりも彩りを欠いている。
まるで観光名所みたいに。
その人の煙草は花火の匂いがした。
私はそれが気に食わなかった。
夏が来るたびにあんたのことを思い出してしまうじゃないか。
「中学生の前で煙草を吸うのはよくないぞ」と私は言った。
「あっ、そうだよね。後ろで吸うね」
「そう