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   令和のマイホームの建て方"no3"

~プロが教える土地の購入から注文住宅を建てるまで~

③業界と消費者のコミュニケーションギャップ

不動産の購入時にプロの助けが必要な別の理由として、業界と消費者のコミュニケーションギャップが挙げられます。

業界と消費者との間のコミュニケーションギャップ”

情報社会の今日、消費者は大きな買い物をする前には、ネットの口コミやポータルサイトなどで情報を集めます。
家のようなとりわけ高価な買い物であれば、なおさらでしょう。
住宅ローンにしても、不動産会社にしても、まずはネットで下調べをする人がほとんど。

ただしネットで得られる情報は不正確だったり、バイアスがかかっているものも少なくありません。

ただでさえ不動産にまつわる物事は複雑で、考えなければならないことが多岐にわたるため、一般消費者が正確にリサーチするのは簡単なことではないのです。

また不動産業界内でも、先例やこれまでの考え方を疑うことはせずに、ずっと同じやり方を続けている人も少なくありません。

そのため、ネットで最新の情報を取り入れている消費者の意見を最初から相手にしようとしない営業マンも残念ながら見受けられます。

こうした背景もあり、不動産業界内の人間と一般消費者との間で考え方の違いやコミュニケーションギャップが生じることも珍しくないのです。

ある顧客から、土地を購入し、建物の仕様も決まっていたにも関わらず、建築会社を他のところに変更したいと相談されました。
詳しく話を伺うと、その建築会社の担当者はいつも打ち合わせの前日の夜中に見積書を送ってくるそうです。

それだけでも不信感を抱くには十分ですが、見積金額が当初の予定よりもかなりオーバーしてしまっている。打ち合わせでその理由を尋ねると、自分たちのこだわりのせいだと言われたというのです。

予算内に収めるためには、希望していた家の仕様をグレードダウンさせるしかない。そもそもその見積書が届いたのが昨日の夜中で、じっくり考えるゆとりもありませんでしたし、今から大きく変更するとなると引っ越し時期も遅くなってしまう。予算や引っ越し時期の希望もはじめからその担当者には伝えているのだから、もっと早めに調整してほしかった、と言われるのです。

実はこういった話は、とても多いのです。

建築会社の営業マンや担当者の言うことが信用できず、不満がどんどん募っていく。キャンセルとまではいかなくても、家が完成することろにはこんな会社に頼まなきゃよかったとグチをこぼす人を何人も見てきました。

とはいえ建築会社としても、決して悪気があるわけではないのです。

お客さんの方でも自分の中で家に対する考えがしっかりまとまっていなかったり、リクエストがあやふやなことも多い。

もちろん、しっかりとした営業マンや担当者ならその辺りもしっかりと汲み取って、全体を上手に調整してくれるのですが、経験の少ない担当者等の場合は消費者とのコミュニケーションギャップが生じることもままあるのです。

またいくら営業マンや担当者が優秀だとしても、建築会社によっては得意・不得意があり、それがコミュニケーションギャップの原因となることも。お客さんとしては自分たちのこうしたい!という家に対する希望があるにもかかわらず、その建築会社で実現するのは難しい、もしくはコストが余計にかかってしまう。担当者としてはせっかくの契約を逃がすわけにはいかないので、なんとかしようと思うが、ままならない…。そんなことが積み重なっていって、業者と消費者との間のズレがどんどん大きくなっていくのです。

消費者に寄り添いながら、業者と交渉が行えるプロの助けを借りれば、そうしたコミュニケーションギャップを埋めることが可能です。

家に対するお客さんの希望や願いを汲み取り、それをしっかりと業者に伝える。営業マンや担当者の人間性を見極めながら、その建築会社がお客さんの願いを実現できるかどうかを判断し、全体の調整を図っていく。

そんなプロの存在が、業者と消費者のコミュニケーションギャップを埋める助けとなるのです。

I工務店を希望されていた件のご夫婦も、業者に対して少なからず不安を抱いておられました。↓

そもそもそのご夫婦がI工務店を希望されたのは、ご主人が家の性能に対してこだわりを持っておられたからでした。

ご主人は自分なりにネットで情報収集しておられ、I工務店ならばしっかりとした性能の家を建てられそうだ。ただし、個々の営業マンの能力にバラツキがあるという口コミがあるので、私に営業マンを紹介してほしいとのことでした。

そこで私が個人的に知っているI工務店の営業マンを紹介し、その人の得意・不得意、良い面も悪い面も含めて彼の特徴をお伝えしました。その上で彼の不得意分野は私がカバーできることをお話し、それならば!ということで、ショールームに伺ったのです。

I工務店のショールームではご主人のこだわっている家の性能や内装、オプションなどについて一緒に確認しました。

私の見立てでは、I工務店はほぼ自社製品で、海外の工場で組み立てているため、スペックの割に値段が安い。同じ仕様で他の工務店に頼むとしたら、絶対にこの値段では実現できません。もしこのままの仕様で問題ないのなら、I工務店はおすすめ。ただし、全てパッケージでまとまってしまっているので、仕様の変更はできません。できるけれども、値段が上がってしまうのでその場合は他社と比較検討したほうが良い、ということをお伝えしました。

家の性能と仕様に関しては問題なし。奥様のこだわりポイントはキッチンで、それもI工務店の提示したものが気に入られたということで、I工務店にお願いすることになりました。

一番の不安ポイントだった担当者とのやりとりも、私が間に入ることでコミュニケーションギャップを未然に防げたと思っています。

もしも営業マンに不信感を抱いたままで交渉を続けていたら、ちょっとしたコミュニケーションギャップがボタンの掛け違いになり、話がこじれてしまっていたかもしれません。

クレーム産業と揶揄されることも多い不動産業界ですが、実はそのほとんどが、コミュニケーションギャップに起因するものなのです。

消費者が得た情報と、業界の常識に乖離が生じることがあり、それが考え方や意見のギャップとなってしまう。

非常に大きな買い物ですから、消費者が慎重になることは当然のことです。

そして建築業界も一生懸命、良い家を造ろうと努力しています。

そんな業界のことを熟知していて、なおかつ消費者に寄り添えるプロの助けを借りるなら、コミュニケーションギャップを未然に防ぎ、納得のいく家づくりが行えるに違いありません。

しかし、コミュニケーションギャップは業界と消費者との間だけの問題ではありません。

実は業界内部にも、コミュニケーションギャップが存在するのです。

住宅業界内のコミュニケーションギャップ
住宅業界内で、どうしてコミュニケーションギャップが生じるのか?
その理由は、業界の仕組みを調べると良く分かります。

まずは、こちらの図をご覧ください。

住宅業界ピラミット図

住宅業界はこの図のように、お客を集められるサプライチェーン(TVCMを打っている大手ハウスメーカーや大手不動産情報サイト運営会社など)をトップに、上から下にコストが押し付けられるピラミッド型の構図となっています。

トップのサプライチェーンは集客のために、多額のコストを支払っています。そのコストを埋めるのは、営業マンの仕事。そのため大手ハウスメーカーの営業マンには、厳しいノルマが課せられます。

数字を少しで良くするために、営業マンはなるべくコストを削るべく設計士にお願いし、その結果である少ないコストで仕上げるためのしわ寄せは、下請け業者や現場で働く職人たちへと向けられているのです。

こうした根本的な業界の仕組みの上に、コミュニケーションギャップの問題がのしかかってきます。

続いて、こちらの図もご覧ください。

住宅業界サプライチェーン図

ピラミッド構造の住宅業界ではそれぞれの階層ごとに、コミュニケーションギャップが生じています。

トップ(川上)にいる大手ハウスメーカーが示した商品企画が素直にポータルサイトや営業マンに伝われば良いのですが、それぞれの要望や現場の実情にギャップがあり、それを埋めるために時間やコストが支払われます。

そうして出来上がったプランも、請け負う業者や資材調達、そして職人たちへと下っていく間に意見の相違が生じることも珍しくなく、そこでまたコストがかかるわけです。
つまり、同じサプライチェーン内に属しているグループであっても一枚岩であることは稀で、それぞれが利益を出すための折衝が繰り返されているのです。これは当然のことでもありますよね。

これが建売住宅の場合は、コストを抑えるために最初から全体がパッケージング化されているため、ギャップも小さいのですが、注文住宅の場合は難しい。

注文住宅のように家に自分のこだわりを反映させるためには、業者間のコミュニケーションギャップを埋めるための余分なコストがかかってしまうことが往々にしてあるのです。

では、どうするか。

業界内のコミュニケーションギャップを見極められる、プロの助けを借りるのです。

サプライチェーンの中でコミュニケーションギャップが生じているのであれば、それとは別の流れで家を建てればよいのです。

それぞれのメーカーや業者ごとに得意・不得意がありますから、お客さんの希望を叶えられる業者を選定し、そこと上手にコミュニケーションを図っていく。

そうするなら、業者間のギャップを可能な限り縮めて、利益を最大化させることができます。つまり、お客さんにとっては予算内で希望通りの家が建てられるということですね。

もちろんこれは、一般の消費者ができることではありません。
家に関するお客さんの希望を汲み取り、それをしっかりと業者に伝えられるプロの助けを借りる必要があるのです。

関わる業者が多いからこそ、プロの助けが必要

土地を買って家を建てるには、多く分けて3つの業界と関わる必要があります。
● 金融業界
● 不動産業界
● 建築業界

これら3つの業界は、それぞれ全く異なる価値観で動いています。
そのため消費者は、業界原理の間で右往左往させられることになりかねません。

例えば住宅購入において、まず最初に考えるべきは予算です。住宅ローンの借入可能額によって、全体の予算が確定します。土地の購入、家の建設、それぞれの段階で計画を進めていく必要があります。

しかし始めにお伝えしたように、住宅ローンの都合で、計画をじっくり立てたり検討するための時間が十分に取れないことは珍しくありません。そのため、先にローンを検討し、建築会社を探すという流れが一般的になっています。

しかし不動産業界と建築業界では全く別の価値観で動いていますから、そこでコミュニケーションギャップが生じるのです。

どういうことかというと、まず不動産屋さんを訪れると、「建物代として〇〇万円あれば家は建てられますよ」と簡単に言われます。もちろんその予算でも建つのですが、それが自分たちの希望通りの家かどうかは分かりません。

では住宅会社はどうかというと、彼らは彼らで家に対する消費者の夢を駆り立ててきます。耐震性を高めましょう、キッチンはこんなものもできますよ、リビングはもっと広く窓も大きくすると快適ですよ…という具合に。そうすると消費者もその気になってしまいますから、建物代も上がってしまいます。結果として土地の分の予算が削られ、土地が見つからない、という堂々巡りになりかねません。

金融会社は金融会社で、自社のローンの説明しかしません。当然のことではありますが、〇〇銀行の住宅ローンの方があなたには向いてますよ。なんて親切に言ってくれることはないわけです。

消費者としては、ほとほと困ってしまいますよね。
住宅ローンはどこで借りるのが一番良いのだろう?
土地の予算を先に決めるべか、それとも建物か?

それぞれの業者に相談しても、お互いに自分たちの利益を第一に考えるため、正しい答えを見つけることは本当に難しい。

業者は皆自分都合で意見を言います。

そこで、プロの助けを借りるのです。

住宅ローンは数社を比較検討した上で、最適と思われるプランを提案します。

土地を探すときも、例えば仮に予算オーバーだとしても、将来的に値上がりが見込める土地であれば、多少無理してでもそこにするという判断を下せるかもしれません。逆に駅から少し遠くてもバスの便が良いので生活するのには不便はありませんよ、というアドバイスがもらえれば、探せる範囲も広げられるかもしれません。

建物に関しても、面積を少しだけ小さくしたとしても、有効なリビングスペースは変わらないというプランを提示してもらえれば、予算内で上手に収まるかもしれません。

このようにプロに頼れば、全体を俯瞰した、ちょうど良いアドバイスがもらえるのです。
これは個々の業者に尋ねるだけでは、なかなか難しい。

関わる業者が多いため、スムーズに、そして何よりも予算内で希望通りの家を建てるには、業界内の事情に精通しているプロに頼るのが一番効率的ではないでしょうか。

人と人が関わる以上、コミュニケーションギャップはどんな分野でも起こり得ます。
でも土地を買って家を建てるためには非常に多くの業者と関わる必要があり、そして金額も高価だからこそ、なるべくコミュニケーションギャップを埋めて生産的に物事を進めていかなければなりません。

そのために、ぜひプロの助けを借りてほしいのです。
次回は土地選びのポイントについてお話しをしていきます。

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