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令和のマイホームの建て方no4

~プロが教える土地の購入から注文住宅を建てるまで~

夢のマイホームまでのステップ1:土地選び

ここまで、土地を買って注文住宅を建てるために、どうしてプロの助けが必要なのかを説明してきました。
改めてその理由を箇条書きにすると、次のようになります。

● 住宅ローンが非常に複雑だから
● 土地購入時には見えないコストが発生するから
● 業界と消費者にコミュニケーションギャップが存在するから

これらは、マイホームを持つために乗り越えるべき障害の一部に過ぎません。
しかしプロの助けを得るなら、きっと自分の願い通りのマイホームを持つことができるでしょう。

ではここからは個別具体的に、令和の時代にあった家づくりの方法をレクチャーしていきたいと思います。

最初のステップは、土地選びです。

土地選びがなぜ重要か?

マイホームを持つために土地選びが重要なのは言うまでもありませんが、改めてその理由をおさらいしておきましょう。

マイホームを持つというのは目的ではなく、手段です。

家族で幸せな暮らしを実現する。そのためにマイホームを持つのであり、マイホームを持つために生きていくわけではありません。

その当たり前のことを忘れなければ、自ずと土地選びも慎重になるはずです。
自分たちが幸福になるにはどんな場所が最適だろうか?と、家族で相談しながら考えることが大切です。

家族や幸福のカタチも人それぞれですから、どこに住むのが良いかを一概に決めつけることはできません。

マイホームを持ってどんな生活を実現したいか?
理想の暮らしをイメージするなら、自ずとどんな土地を選んだらいいのか見てくるでしょう。

ただし、一般的には次のような条件を考えるはずです。
● 通勤や通学には便利な場所だろうか?
● 子育てがしやすい環境か?
● 買い物や生活していくには便利な場所か?
● 周囲の環境はどうか?
● 日当たりはどうか?
● 治安は良いだろうか?
● ect…
こうした条件については、マイホームを計画している人なら、当然考えていることでしょう。

そこでこの項目では、環境面以外で絶対にチェックしておくべき3つのポイントを、プロの目線でレクチャーしていきたいと思います。

ポイント1:土地の価格と将来性


土地を選ぶ時に最も大事な要素は、次の2つ

  1. 場所

  2. 予算    

場所の重要性については、前で述べた通り。
どんなに良い土地が見つかっても、予算オーバーでは意味がありません。

家づくりは、常に予算との戦いでもあるわけです。 

では、土地の値段はどうやって決まるのでしょうか?
実は土地の値段というのは、あってないようなもの。

何しろ土地というものは究極の一点もの。全く同じ土地というものは世の中に存在しません。
そのため、そもそも値段が非常に決めにくいものなのです。

ではどうやって値段が決まるかというと、基本的には過去の取引事例、そして売り主の希望ということになります。

例えば、土地の値段をはかる物差しの一つに、「公示地価」があります。

これは毎年、国土交通省が発表する土地の価格で、全国約26,000地点の地価が好評されます。
よく銀座の土地が一坪いくらになったというニュースを見ますよね。あれが、公示地価です。
公示地価は過去の取引額などを参考に決められるため、その地域の一般的な土地の値段を知ることができます。

しかし土地は一点ものなので、この公示地価だけで決まるわけではありません。

極端な話、隣の土地の公示地価が1,000万円だとしても、持ち主が自分の土地の値段は2,000万円だと言えば、その値段になってしまうわけです。

これを、「実勢価格」といいます。いわゆる、時価ですね

不動産情報で土地の値段として表示されているのは、全てこの実勢価格となっています。

しかし最終的に土地の値段を決めるのは持ち主とはいえ、値段が高すぎると買い手がつかずに値段は下がっていくので、結局は相場に近い金額に落ち着くことになるでしょう。

では実際に土地を選ぶ時に、価格についてどのように考えると良いでしょうか?
確かに、公示地価や路線価などは目安になります。
しかし実際には公示地価と実勢価格に差があることがほとんどで、しかも最近はその差が広がってきているように感じます。

コロナ禍で働き方やライフワークバランスに変化が生じ、都心の駅近マンションから郊外の一戸建てへと移り住む人が増え、東京以外の地価も上昇傾向にあるのです。
そのため売り手もこれから先さらに値段が上がるのではないかと考え、公示地価よりも高い値段で売り出されているのです。

では、もう少し値段が下がるのを待つのが良いのでしょうか?

将来のことを予測するのは難しいのですが、一つ言えることは土地の価格は景気に左右されるということ。

実際に今までもバブル崩壊やリーマンショック、サブプライムショックなどが生じたときには土地の値段は下がってきました。

日本もここしばらく土地の値段は上がってきているとはいえ、それでもバブル期の半値ほどに過ぎません。

つまり現状でも、土地の値段はかなり安くなっているのです。

最近の住宅価格の高騰は、主に建築費が上がっていることに由来します。土地の値段が上がっているからではないのです。
地価の上昇は都内や地方の大都市に限られ、郊外ではまだまだ値段が下がっているところも少なくありません。

一方で、人気のある場所の土地の値段は上がり続けています。

結論として、土地の価格と将来性を見据えてプロからできるアドバイスは、次の2つです。

  1. いま現在安い土地は、十分に安くなっている

  2. 土地の値上がりを期待するなら、いますでに高くなっている土地を買うしかない

あとは自分の予算との相談、ということになるでしょう。

ポイント2:自然災害と地盤の問題

近年、ますます増えてきている自然災害。
特に地震と水害は、マイホームを持つにあたって非常に大きなリスクとなります。

そのため土地選びの際には立地や周辺環境だけでなく、自然災害のリスクを可能な限り避けられる場所を選びたいものです。

台風や大雨による洪水や高潮、土砂災害などのリスクの高さを知ることのできるのが、ハザードマップです。
多くの自治体ががそれぞれハザードマップを作成していますが、国土交通省が提供しているハザードマップポータルサイト、住所を打ち込むことでそのエリアの災害別のリスクの高さを知ることができます。


例えばこれは、新宿駅周辺のハザードマップ。
洪水、土砂災害、高潮、津波それぞれの災害ごとのリスクの高さが、色分けして表示されています。
もちろん、ズームアップしてさらに詳細な地図を表示することも可能。

台風や大雨による浸水や土砂崩れなどのリスクの高さを可視化できます。

2020年から不動産取引の際の重要事項説明において、対象物件の所在地をハザードマップで確認することが義務付けられました。

とはいえ、その時点で水害のリスクの高さに気付いたとしても、契約をキャンセルすることはなかなか心情的にハードルが高いでしょう。
同じエリア、もしくは通り一本向こうであっても、水害のリスクは場所によって大きく変わるということは珍しくありません。

そのためやはり土地選びの時点で、しっかりと希望する土地の水害のリスクについて確認しておきたいものです。

水害以上にリスクが高いのが、地震です。
日本は世界でも有数の地震大国。
では、地震のリスクについてはどのように推察したらよいでしょうか?

一般に地震は活断層の周辺で起きると言われていますが、実際には活断層が見つかっていない場所でも発生することが分かっています。
つまり、日本に住む以上はどこでも地震が起こりうるということ。

そうした中で大切なのが万一地震が起きたとしても、そのダメージを最小限に食い止めることです。
地震による被害を最小限に抑えるために必要なのが、地盤と地形に関する正しい知識。
地盤が固い土地は地震が起きても揺れは小さくなり、逆にゆるい土地は被害も大きくなってしまいます。

そのため、なるべく地盤の強い土地を選びたい。
なんとなく高台の場所は地盤が強くて、低地は危険というイメージがあるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。
では、地形や地盤の強さを確かめるにはどうしたら良いでしょうか?

その点で役立つのが、地盤の調査や解析を専門に行うジャパンホームシールド株式会社が提供している「地盤サポートマップ」です。

このサイトでも住所を入力することによって、当該地域の地盤の強さや地形、また地震や水害などの防災情報を確認できます。

先ほどと同じく、新宿駅周辺の地形と地盤の強さを表しています。
ポイントごとの地盤の強さや、地形が表示されています。

Web版だけではなくスマホ用のアプリ(iOSのみ)も提供されていますので、ぜひ参考になさってください。

2000年の建築基準法改正によって、家を建てる際には原則として地盤調査を行い、その結果に基づいた設計をしなければならなくなりました。

そのため、始めからなるべく地盤の固い土地を選ぶことによって、全体のコストを抑えることが可能になります。
<プロからのアドバイス>

土地選びの際には、必ずハザードマップと地盤の強さをセットで確認する

この点を、ぜひ忘れないでいただきたいです。

ポイント3:法的要素(用途地域、建ぺい率、容積率など)

土地選びには周囲の環境や自然災害のリスクといった外的要因だけではなく、法的な要素を検討することも非常に大切です。

なぜなら例えその土地が気に入ったとしても、法的要素によって思い通りの家が建てられるかどうかが左右されるからです。

ここではその中でも、土地選びの際に特に注意しておきたい3つの要素について見ていきましょう。

a. 用途地域
都市計画法という法律によって、その土地にどんな建物が建てられるかが規定されています。それを、用途地域といいます。

用途地域は全部で13のカテゴリーに分類されますが、住宅街に土地を買って家を建てる場合には次の8つの用途地域の中から選ぶことになります。

  1. 第一種低層住居専用地域:建てられる高さが10mや12mに制限されている、低層住居のための地域。

  2. 第二種低層住居専用地域:高さの制限は第一種低層住居専用地域と同じだが、小中学校のほかコンビニや飲食店などを建てることが可能。

  3. 第一種中高層住居専用地域:建てられる高さに制限がなく、500㎡以下の病院や大学、飲食店やスーパーマーケットなどの店舗が建てられる。

  4. 第二種中高層住居専用地域:第一種中高層専用地域と同じく高さに制限がなく、かつ1,500㎡以下の店舗や事務所なども建てられる。

  5. 第一種住居地域:高さ制限がなく、3000㎡までの商業施設が建てられる

  6. 第二種住居地域:第一種住居地域で建築可能な建物に加えて、カラオケボックスやボーリング場などの娯楽施設も建てられる。

  7. 準住居地域:高さの制限はなく、住居以外の様々な建物が建てられる制限の緩いエリア。主に幹線道路沿いが指定される。

  8. 田園住居地域:自然環境や景観を守ることが重視されているエリア。農地との共存に適しており、開発には制限が課されていることがことが多い。

このように、用途地域によって建てられるものが決められています。

なるべく静かな場所に住みたいなら、第一種低層住居専用地域や田園住居地域。便利さや賑やかさを求めるなら第一種中高層住居専用地域や第一種住居地域などという具合に、自分たちが望む生活を叶えられる地域を選ぶことが大切。

探している土地がどの用途地域に属しているかは、用途地域マップで確認できます。

用途地域なんか調べなくても、その場所に行けば大体のイメージをつかめるよ、と思われるかもしれません。
しかし用途地域は必ず確認しましょう。なぜならそれが、次に述べる建ぺい率や容積率にも大きく関わってくるからです。

b. 建ぺい率
土地を買ったとしても自由に家が建てられるというわけではなく、建ぺい率と容積率の範囲内で建てなければなりません。

建ぺい率とは、ある土地の面積に対してどれだけの1階の面積の家が建てられるかの割合いを示したものです。
土地と家を真上から見下ろしたときに、その家が平面上で土地の何%を占めているかを表します。

この図のように、100㎡の土地で建ぺい率が50%の場合、建物の面積は最大で50㎡まで。ところが建ぺい率が70%の土地なら、70㎡までの面積の家を建てることが可能です。
【建ぺい率の計算式】
● 建ぺい率=建築面積 ÷ 敷地面積 × 100

建ぺい率の上限は、用途地域ごとにその最大値が定められています。

  1. 第一種低層住居専用地域:30・40・50・60%

  2. 第二種低層住居専用地域:30・40・50・60%

  3. 第一種中高層住居専用地域:30・40・50・60%

  4. 第二種中高層住居専用地域:30・40・50・60%

  5. 第一種住居地域:50・60・80%

  6. 第二種住居地域:50・60・80%

  7. 準住居地域:60・80%

  8. 田園住居地域:30・40・50・60%

そのため土地選びの際にはどの用途地域にするか、そして自分が建てたい家が建ぺい率に収まるかどうかを確認しなければなりません。

ある土地が売りに出されている場合は建ぺい率も表示されていることがほとんどですが、ネットで調べることも可能です。また、自治体の都市計画課に問い合わせても、すぐに教えてくれます。

c. 容積率
建ぺい率はよく知られていますが、見過ごされがちなのが容積率です。

容積率は、ある土地の面積に対してどれだけの延べ床面積の家が建てられるかの割合いを示したものです。

建ぺい率が平面の割合いだとすると、建ぺい率は建物を立体的に見た場合の割合いと考えると良いでしょう。

この図のように、100㎡の土地で容積率が100%の場合、1階と2階の床面積の合計(延べ床面積)で100㎡までの家を建てることが可能です。一方で容積率が200%の土地なら、延べ床面積200㎡までの家を建てられることになります。

【容積率の計算式】
● 容積率=延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100

また容積率の上限も、建ぺい率を同じく用途地域ごとに定められています。

  1. 第一種低層住居専用地域:50・60・80・100・150・200%

  2. 第二種低層住居専用地域:50・60・80・100・150・200%

  3. 第一種中高層住居専用地域:100・150・200・300・400・500

  4. 第二種中高層住居専用地域:100・150・200・300・400・500

  5. 第一種住居地域:100・150・200・300・400・500

  6. 第二種住居地域:100・150・200・300・400・500

  7. 準住居地域:

  8. 田園住居地域:50・60・80・100・150・200%

特に二階建て以上の家を建てたい場合は、容積率もしっかりチェックしなければなりません。
建ぺい率と同じく容積率についても、ネットで「(自治体名)+容積率」で検索すると簡単に確認できます。

土地選びの際には、必ず事前に確認しておいてください。

<プロからのアドバイス>
自分が建てたい家をしっかりイメージしつつ、法的要素をしっかりと確認した上で土地を選ぶ

このことを覚えておかないと、せっかく土地を買ったのに思い通りの家が建てられない!ということになりかねません。しっかり事前に確認しておきましょう。

予算との兼ね合い
注文住宅を建てる場合の総予算は、土地の値段と建築費がそのほとんどを占めます。

そのため、予算内でなるべく希望にあう土地を見つけるためには、現実的な条件を考えておかなければなりません。

例えば、家族4人で住む家を建てたい。条件が1階に20帖以上のLDKと水回りが一緒になっていることだとします。
その条件を叶えるためには、1階は20坪の家が必要になります。2階も同じく20坪とすると、坪面積は40坪
建築費が坪単価80万円だとすると、40坪で3,200万円ですね。総予算が7,000万円だと、土地の購入に当てられる予算は3,800万円ということになります。

子育てのことを考えて、第一種中高層住居専用地域に土地を探すことにしました。建ぺい率が50%、容積率が150%の土地なら、40坪もあれば良いということになります。
しかしもし建ぺい率が30%なら、何坪の土地が必要でしょうか?

上の式を当てはめると、次のように計算できます。

● 必要な土地面積 = 建築面積 ÷ 建ぺい率 ×100
● 20坪 ÷ 30% × 100=66.67

つまり、約67坪の土地が必要ということになります。

もし一坪あたりの値段が同じだとすると、建ぺい率が30%の土地は50%の土地に比べて約1.5倍のコストアップになってしまいます。
もちろんこれは単純計算で、実際には場所によって条件は細かく変わってきます。

しかしいずれにせよ、予算内で希望通りの家を建てるためには周囲の環境だけではなく、法的要素もしっかりと検討しなければならないということがよくお分かりになったのではないでしょうか。

そして加えて、災害リスクも考慮する必要があります。

土地選びは本当に頭を悩ませると思います。

しかし建物はあとでいくらでも手を入れることができますが、土地はそうはいきません。
そのため土地を選ぶ際には周辺環境の確認とあわせて、1.価格、2.災害リスク、3.法的要素、この3つのポイントを事前にしっかりチェックするのを忘れないようにしてください。

次回は施工会社の違いについて書きます。

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