カスタマーサクセスのインパクト・概要・目的

こんにちは、freeeでサクセスのジャーマネをしているふじじと申します。
アドベントカレンダーも9日目ですね。

コロナ&子供誕生をきっかけにここ2年ほどほとんど社外の人と会うことがありませんでした。気づけばフルリモート生活に慣れて1日数百歩しか歩いていない日々が続き、流石にやばいと思い夏からは出社始めました。

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20年の春、宇宙船で暮らしてるんじゃないかと思うほど家から出てなかった。


まだまだ人と話せる機会が少ないので、近況報告もかねてアドベントカレンダーを書いてみます。

今日はSaaSにおけるカスタマーサクセスって何か?どんなビジネスインパクトあるのか?何を考えながら仕事をしているか?をささっとご紹介します。

私は今freeeの中でセルフサクセスという部署で仕事をしています。ざっくり言うと、freeeの会計や労務などのサービスを契約いただいたお客様に自力で決算や給与計算などをできるようにすること、をミッションにしています。

サクセス活動のインパクト。解約率5%を1%にすると売上を5倍にできる。

まずは主な取り組みと密接に関わる経営指標の関係からサクッとご紹介。
SaaSにおけるサクセス活動では主に年間のchurn(=解約率)に向きあうことが多く、平たく言えば、ユーザーの方がサービスを使い続けていただくことと収益が継続する、という効果があります。

そのため、「活動の中心は直前で電話して解約阻止をする」というよりは「ユーザーにしっかりサービスを使ってもらう体験を企画することで結果的に継続利用してもらう」という表現が実態に近いです。プロダクトチームと連携して色々するときもあれば、不足するコンテンツを自部署で作ってしまう時もあります。

また、churn率(解約率)の重要性については、SaaSにおいてはchurn率が1%違うだけで事業の成長曲線が大きく変わることから、新規顧客数やARRと合わせて非常に重要な経営指標と捉えられることが多いです。

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チャーンがサブスクリプションビジネスの成長をどのように停滞させることができるか 
より引用

churn率と売上の関係についてはネット上でいくつも記事があるので調べればすぐわかりますが、例えば新規獲得が一定でもchurn率が1%と5%のパターンで比較すると最終的に売上に5倍の差が出ます。

そのためサクセス活動を通じてchurn率を改善し続けて極限まで減らすと、長期での売上インパクトはとても大きいものになります。ただし差が出るまでには時間がかかるため注意が必要です。

ここまではSaaSを解説してくれるネット記事にもよく取り上げられる話です。

サクセスを押上げ、churn率を下げる道のりも平坦ではない

さて、churn率を下げると理論的には売上に2倍、3倍と大きく跳ね返ってくると言う話をしました。
これを読んで「すごい!今すぐやるべきだ!ドンドンユーザー体験をよくして解約率を下げていこ!!」と思ったそこのあなた、、、SaaSの世界へようこそ。

どんな事業・仕事にも難しさはありますが、SaaSのサクセスを促進し、解約率を下げていく体制を作るのもそれなりに大変です。(自分は1年半前からサクセスを担当していますが、最初は広告運用のPDCAみたく、1ヶ月単位でゴリゴリチューニングできるイメージを持っていて速攻でつまづきました。反省してます。


BtoB向けのSaaSでは、いつどの機能をどれだけ使っていることがサクセスと強く連動しているか変数(時間や頻度、機能や順序の組み合わせ)が多すぎて課題がわかりにくく、どの指標に対して取り組むかを決めにくいケースがあります。

また、コロナなどの突発的な事象や市況の変化(法律の改正や経済動向の変化)に加え毎月指標自体も小幅な変動があり、増減いずれも自分たちの取り組みの効果なのか?単なる誤差なのか、因果が読み解きにくい時もあります。(全体的に変動した結果に対して因果の証明がむずい。本当はうまく行ってるのに全体のトレンドがマイナスだと結果がないように見える時もある)

サクセスは基本的に結果指標としての状態で表されることが多いため、取り組み始めてから結果が出るまで企画によっては数ヶ月〜1年かかる可能性もあります。


極め付けとしては、ユーザーによって必要な設定や利用する機能・頻度も違い、ユーザーの初期習熟度(経験者か初心者か)と合わせて、どんな手段でどこまでカバーできるのか、もコストと比較しながら検討が必要です。一般的に単価が高ければ初期設定ができるまで支援を行うケースがあり、単価が低ければBtoCサービスのように自力でドンドン使いこなしてもらう必要があります。

この辺りの背景を踏まえ、課題にどうアプローチして、どんな指標で測って改善サイクルを回していくか?のスキームを整えていくのはなかなか骨が折れます。

それでももっとラクに、誰でもコーポレート業務ができて、解放的な世界へ

そうした課題になぜ取り組んでいるのか、単純なchurn率改善のインパクト以外の観点で自分なりの考えを少し書いてみます。

例えば、ここまでのnoteを読んで、
「サービスをうまく使えない人はお金を払って専門家を雇ったり、人を採用して任せれば良いじゃない」
と思う方も多くいらっしゃるかもしれません。
「そんなにあやふやで切り分けが煩雑なら、多くの時間とコストを費やして原因を調べ、企画を作り、コンテンツを改善していく意味があるのか?」などなど….

たしかに全ての人が100%使いこなせるサービスは世の中に存在しないでしょうし、極限まで改善しようとするほど必要なコストも莫大になっていきます。クラスで1人100点取れる支援はできても、全員が100点取れる仕組みは労力がすごくかかり難しい、というイメージが近いでしょうか。また得意なこと・やりたい事業に専念したいから自分ではやらない、という志向の方もいらっしゃいます。

そうした背景を踏まえると、どこかで区切りをつけて、「コーポレート業務を委託・丸投げ・専門家の指導を受けていただくことを提案する」という方針も合わせて進めていくことはとても重要だと考えています。(当然、そういう取り組みは社内で並行して存在します。


ですが自分が特に向き合っているスモールビジネスはまだ手元の資金が潤沢でなかったり、売上が小さくて最低限のコーポレート業務を維持するために追加でお金をかけるのにあまり適さないパターンもあります。 またエモいことを書くと、「せっかく起業したのだから一通り会計や給与までやってみて何でもできるように自分もなってみたい」と言う気持ちを持っているユーザーの方もそれなりにいらっしゃる気がしています。(この辺りは自分の主観


今の段階でも、10年前に比べて登記や会計・労務などの作業コストは確実にラクになり、会社を最低限維持のために必要なランニングコストは下がってきています。しかしこれをもっともっと下げて誰でもラクに出来るようにいくと、単なるサクセス・解約率改善の効果を超えて、従来とは違う社会・市場が形成されていくのでは?という予感を日々感じています。

もう少し具体的に書くならば、コーポレート業務を誰でももっとラクにできるように改善していくと、今より起業がもっと気軽で身近なものになり世の中全体が大きく変わっていくんじゃないか?と自分は考えています。

産業革命の時代に自動車や蒸気機関車が生まれ、移動手段が劇的に変わることで世の中・経済まで変わったように、スモールビジネスのコーポレート業務のハードルが下がり続けどこか臨界点を超えると、起業やスモールビジネスがもっと身近になり社会のあり方そのものを変えていく可能性を信じています。


会社の言葉としては、サクセスを推進していくことは「スモールビジネスを世界の主役に」と言うミッションに深く繋がっていく、と捉えることもできるかもしれません。


とはいえ、精神論だけではビジネスは成立しない。着実に前進する必要はある

サクセスはあんなことやこんなことが難しい、でもミッションにつながるがらやるんだ的なことを述べてきましたが、「結果が見えなくてもOK、ひたすら理想を求め続けよう!」みたいなふわふわした状態でもありません。

カスタマーサクセスという職種は歴史が浅く、国内では事例も少ないですが、freee社内では徐々に知見が集まりどんな風にビジネスとしてより確実に早く進めていくか?、先も見えはじめてもいます。


「具体的にはどんなことをしているのか?この先はどう発展していくのか?」この辺りが気になった方、noteだと書ききれないので機会があれば直接お話しましょう。
freeeではミッションの実現に向けて、一緒に働く仲間も積極的に募集しています。


もし起業される/している方であればチラッとサービスを触ってみて頂けると嬉しいです。


サクセスアドベントカレンダー、まだまだ続きます!気になる方はfreeeをフォローいただくか、あえ共マガジンを購読しておくと、通知が自動的にいくと思います。(宣伝


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