パーソナルトレーナー藤井自伝8

初の海外遠征でまさかの展開

うちの大学は3年生になると2年生の時にアルバイトで貯めたお金を使って、海外遠征をして国際大会に出場するのが定例である。

ひとつ上の先輩の時はカナダ。
ひとつ下の後輩の時は韓国であった。

僕の代はデンマークに遠征だ。
デンマークは北欧の国であり、ドイツの北に位置し、スウェーデンやノルウェーとも近い国である。

コペンハーゲンが名前として有名でデンマークの首都の名前である。
国の位置からも分かる通り雪国であり、北欧のイメージ通りの綺麗な街並みの国だ。
通貨はクローネ、物価はめちゃくちゃ高い。
なんと500mlのミネラルウォーターが日本円で400円する。
世界一物価の高い国と言われる所以である。

ただ、物価が高いというのは観光客に対してだけであり、国民に対しては非常に高い税金ではあるがその分福利厚生が手厚く、一部を除き大学進学までほぼ無償で進学できると言われている。

そんな国での初の国際大会。
近隣国のヨーロッパ諸国や柔道の強いドイツなども今回の大会に参戦した。

僕自身は前回の初の出場試合である体育系大会で惨敗してから、なんとか一矢報いようと意気揚々であった。

そんな時に、我が大学の権威とも言われる大先生からなぜか僕だけ特別に指導いただいたのだ。

全国柔道連盟でもトップに君臨する先生がだ。
教えてもらったことは初歩の初歩、中学生で初めて柔道を学んだ頃、最初に教わるような技のかけ方だった。

でも僕はそれを真摯に聞いた。
その上でその初歩の形を試合まで練習に練習を重ねた。

試合当日。
外国人選手は日本人選手と違って、技というより力の柔道をする者が多い。
いわゆるガチガチな柔道だ。

日本国内ではその柔道に慣れず海外で惨敗してしまう選手も多い。

僕自身も少なからずそうだ。
ただ、前回不甲斐ない試合で負けた経験から教えてもらった事を実直にこなす事に徹底した。

それが良かったのだ。
練習では背負投げをかけることはあったがあまり上手くはなく、試合でかけたことはなかった。

しかし今回は違った。
ガチガチの外国人選手相手に背負投げを思い切ってかけると恐ろしいほどに決まるのだ。
悔しくも途中で負けてしまい敗者復活戦に臨むことになる。
そこから背負投げのみで勝ち続け、国際大会3位となった。

今までの自分の柔道経歴の中では一番の成績を残せた。
デンマークから日本に戻ってもその調子は続いた。

なんと練習ではあるが、2階級上の-81kg級で体育系大会を優勝した同級生を背負投げで綺麗に一本で投げてしまったである。

最高のタイミングで決まった技は重さを感じないというが、相手のすべてをこの手に握ったような感覚になる。
本当に大先生の指導の賜物である。

この後は自分の柔道に踏ん切りをつけ、新たな道に踏み出してくことになる。

続く

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