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Go-jekアビニットさん+hey塚原さんの回【L&UX制作記③】

5月開催L&UX2021、今回はGojekのプロダクトデザイン責任者、Abhinit Tiwariさんと、heyのCPOとしてSTORESを運営されている塚原文奈さんの回をご紹介します。「サービスを運営し、拡大する」という観点で最もリアリティとティップスに溢れる回でした。

■ セッション概要

5/24(月)18:00配信開始
人と社会を支えるイノベーションイネーブラー
Abhinit Tiwari(Go-Jek) / 塚原 文奈(hey) / 藤井 保文(ビービット)

オンライン前提に世の中が変化していく中、DXが必要なのは大企業だけではありません。エンドユーザ側の生活がどんどんと便利になり、自分の好きなUXを自由に選べるようになればなるほど、中小企業や個人事業主もその状況に対応していかなければなりません。しかし、大企業のように人やお金が潤沢でないため、対応に苦しむ結果になることもよくありますし、逆にこうした数多くの小さなビジネスがデジタル化する社会に適応できなければ、社会全体が変化することもありません。

こうした中小企業や個人事業主の可能性を広げるという意味で、今回お呼びしたお二人はそれぞれの国内で代表的なサービスと言えます。

小さなビジネスを営む方々であっても簡単にECを作り、ネット予約を可能にし、キャッシュレス化に対応出来るようにする、STORESを運営するheyのCPO、塚原文奈さん。

インドネシアの国民的スーパーアプリと言われ、バイク配車やタクシー配車、デリバリーフード、モバイルペイメントに留まらず、マッサージやネイルサロンを家に呼び、買い物代行や荷物の宅配までできる、生活インフラともいえる総合サービス業であるGo-Jekで、デザインとUXを統括する責任者であるAbhinit Tiwari(アビニット ティワリ)さん。

異なる国ではありますが、エンドユーザとスモールビジネスを繋げて社会をより良くしていくプレイヤーとして、様々なステークホルダーにとっての利便性や利益が交錯する中で、何を大事にし、どのように人に愛されるプラットフォームを作っているのか、お二人の経験や思想から、その共通点と相違点に迫っていきます。

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■ みどころ① グロースの共通課題と「シングルリーダー制」

「プロダクト」と一言に言っても、このチーフ・プロダクト・オフィサーの塚原さん、プロダクトデザイン責任者のアビニットさんの場合、従来型・売り切り型ではなく、当然「ずっと使い続けてもらいながら関係性を深めるサービス型のプロダクト」を指します。

全体を通して「プロダクトの価値、つまりはUXをどのように強くするか、それを保ち成長させるか」という議論がひたすら繰り返されます。

・どのようにプロダクトの価値を定めるべきか?

・その価値がぶれないように成長させるには?

・拡大していく組織の中でそれを保つには?

コイニー、クービックという会社と一緒になって組織的にも事業的にも大きくなるHeyで、塚原さんが抱える課題とソリューションに、Go-Jekが拡大するときのアビニットさんの経験を照らし合わせてみると、意外にも共通性があります。

Go-Jekでは、「シングルリーダー制」という組織形態を保つことで、縦割りの構造にならない組織を作って権限移譲を行い、プロダクトのグロースを効率化・合理化しているようです。

多くの企業では、プロダクトごとに組織が分かれるか、機能ごとに分かれるケースが多いと思います。Go-Jekの場合、たくさんのプロダクト(Go-Car、Go-Food、Go-Sendなど)が1つのアプリ内に存在するので、これが余計に複雑な構造になっています。

拡大する中でスピードが遅くなってしまうときに、Go-Jekでは組織やプロダクトの縦軸と、ビジネスデベロップメント、デザイン、リサーチなどの横軸でマトリックス(メッシュ)のような構造で捉えていて、このマトリックスのそれぞれのボックスごとにリーダーを置いて権限移譲をさせることで、なるべく意思決定を迅速にするという構造にしているそうです。

これは組織文化を定着させたり、意思決定を反映させていくうえでも効果的で...という話は、是非動画の方でお楽しみに。


■ みどころ② 「最終目標がばらけるチーム作りをした時点で負け」

BtoBtoCのビジネス、特にペイメントアプリのようにC側とB型の双方へのサービス提供がされるモデルでの難しさとして、ユーザ数が多くないとビジネスプレイヤー(例えばキャッシュレス機能を使う小売店やレストランなどのいわゆる「加盟店」)は載ってきてくれないし、こうした加盟店が少ないとユーザ数も増えないというジレンマがあります。

成長させていくにはこの「ニワトリとたまご」のような構造を連携して作っていかなければなりませんが、特に日本の大企業では、このB向けの組織とC向けの組織が分かれており、互いの連携がうまく行っていないケースがあります。

これをどう解決しているか伺うと、アビニットさんはこう言います。

プロダクトの中で、目的の異なるバラバラのチームを作ってしまったら、最初から負けなんじゃないかなと思います。1つのチームにまとまっていることが少なくとも最初は絶対必要です。こういった対立が起きそうなときにはどうするべきかというよりも、そもそも起きないような組織設計をするということだと思います。」

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プラットフォーマーを目指したり、二面市場・多面市場型のビジネスモデルを作ろうとする企業は増えていますが、そもそもがB向け、C向けで組織も得意分野も分かれていることは多く、日本企業でアフターデジタルへの対応を目指そうとする企業は、ここに大きなメスを入れる必要があるのかもしれません。

Heyも大きくなる過程で、これに近しい変更をされていますし、実はDiDiと出前館のセッションでも、かなり似た話が出てきています。

「縦割り構造の打破」はよくあるトピックですが、成功企業の苦悩と意思決定は非常に勉強になるところです。


■ 全体を通して

この回の面白さは、違う国とはいえ様々なフェーズを経験したアビニットさんに、塚原さんがどんどん質問をしていき、その中で異なる国でも共通したことや、双方の企業が成長する上で抱える悩み、それを乗り越えた手法や意思決定が次々と出てくるところにあります。

特に、大企業・スタートアップ問わず、組織で事業やサービスを運営され、大きなユーザ規模を目指されている方、組織づくりに悩んでいる方にとっては非常に有益なセッションになっていると思います。

是非、本番の公開をお楽しみに。

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