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知能検査「WISC」の誤解


1. WISCで学習能力や障害はわからない

WISCは病院や教育機関、療育施設など、世界的にも最もメジャーな知能検査の一つといえます。
しかし、WISCなどは誤解をされていることも多いので、一度整理してみましょう。

❌ 発達障がい/知的障がいがあるかがわかる
・WISC結果では障害の有無・種類はわからない。(※1)
認知プロフィールを明らかにするために診断材料・治療方針を立てるために参考に使用されることはある(※2)

❌ 学習能力がわかる
・認知能力(刺激に対する情報処理能力)の特性(脳の働き方の特徴や個性)を明らかにするもの。(※3) 学校などで学んだことをどれだけ理解しているかではない。

❌ IQは努力で伸ばすことができる
・IQは学力と違って努力の量で伸びたり下がったりしない。(※3)
・類似の問題を練習するのは本来の知能を知ることができなくなり本末転倒。

❌ IQが100→110に上がったから嬉しい
・IQは検査当日のコンディションなどで±の誤差がある。(※3)
・検査結果にはもともと幅(信頼区間)がある。(※3)

2. WISCで注目すべき「個人間差」と「個人内差」

🍀1)個人間差
「同年齢の集団の中で認知能力がどの位置にあるか(個人間差)」を示すもの。認知に遅れがある場合、それはどの程度の遅れなのかを判断する上で重要。(※1) ただし、IQは頭の良さ自体を表した数値ではないことに注意。(※2)

🍀2)個人内差
指標間の差の大きさから、得意・不得意や凸凹を検討することができる。(※1) IQの数値や4指標の高低だけではなく、様々な能力のバランス(何が飛び出て、何が凹んでいるか)に注目する必要がある。(※1)

3. WISC-Ⅳとは?

最新版はWISC-Ⅴだが、WISC-Ⅳが頻繁に使用されているのでWISC-Ⅳについて解説する。

平均を100とした数値で算出される。(正規分布
・対象:5歳〜16歳を対象
・ 所要時間:60分〜90分程度

WISC-Ⅳでわかるのは「全検査IQ (IQに相当するもの)」と「4つの指標」(※4)

🍀全検査IQ(IQに相当)
全体的な知的能力の発達水準を推定(※4)

🍀言語理解指標
推理、理解、概念化などの言語能力を測定(※4)

🍀知覚推理指標
絵や記号などの非言語的な情報をもとに推理し、組織的に考える能力を測定。(※4)
また、新たな情報に基づく課題処理能力を測定(※4)

🍀ワーキングメモリ指標
聞いた情報を記憶に一時的に止め、その情報を操作する能力を測定(※4)

🍀処理速度指標
単純な視覚情報をすばやく正確に、順序よく処理、識別する能力や描写処理速度を測定(※4)

3-1. 全検査IQとは

子どもの全般的な知的水準を推定することができる。IQは正規分布し、IQ70以上の子どもが通常学級に在籍していると考えられる。

IQが70~85の間にある時、境界知能の可能性がある。境界知能の場合、独学では学校の授業についていくのが困難な可能性があるため、勉強に困っていないかなど確認する必要がある。IQが高すぎる場合も、学校の勉強が簡単すぎたり、仲間と話が合わずに困っている可能性がある。

ただし、注意が必要なのは全検査IQだけでは子どもの理解や支援ニーズを知ることはできないことだ。特に、指標得点(言語理解指標や知覚推理指標など)の凸凹が大きい場合は、指数得点ごとの検討が必要である。

3-2. 4指標と関連しやすいつまづき

以下の4指標については画像にて。
1. 言語理解指標
2. 知覚推理指標
3. ワーキングメモリ指標
4. 処理速度指標

4. 障害のある子どもを持つ親の気持ち

ドローター(研究者)は、先天性の障害のある子どもが生まれた親の気持ちの移り変わりについて、5段階で表した。

この理論では、親はショックや否認、悲しみや怒りなどの感情のステージを経験した後に、ようやく落ち着いて受け入れられる日が来ることを示している。(※3)

🍀第1段階
ショックの時期

🍀第2段階
否認の時期(こんなはずではないという気持ち)

🍀第3段階
悲しみと怒りの時期

🍀第4段階
適応の時期

🍀第5段階
再起の時期

子どもの特性に合わせた、長所を活用する支援(長所活用型)を行うためにも、検査結果をチーム(親、子、特別支援コーディネーター、担任の先生など)と共有して、話し合いましょう。

5. WISCは完璧ではない

WISCは万能な指標ではなく、かつ約10年ごとに改訂を繰り返す。
検査に問題が残っている、考え方が変わる変わることがあることを心に留めておくのが良いかも知れない。

6. 参考文献など


1) 上野一彦・松田修・小林玄・木下智子『日本版 WISC-Ⅳによる発達障害のアセスメント』日本文化科学社, pp.29-61, 2022.
2) 福西勇夫・福西朱美『マンガでわかるアスペルガー症候群の人とのコミュニケーションガイド』法研, p.114, 2021.
3) 熊上宗・星井純子・熊上藤子『子どもの心理検査・知能検査保護者と先生のための100%活用ブック』合同出版株式会社, pp.12-51, 2007.
4) 日本版WISC-Ⅳ刊行委員会『日本版 WISC-Ⅳ 知能検査 補助マニュアル』日本文化科学社, p.5, 2015.



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