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作品2 『大列車強盗』1903

上記  映画史の特設ページです。
3-2 映画史におけるポーターの重要性
でこの作品を紹介してます。

金品を強奪した強盗四人組が列車に乗り込んで逃亡、通報を受けた保安官が彼らを追いかけて射殺するアメリカで初の西部劇。基本的にはフィックス(カメラを固定したままの撮影)のロングショット/ロングテイクで演劇的なシーンの連続ではあるものの、細部の演出からは視覚的な語りの欲望がある。映像自体が持つダイナミズムを技法によって生み出そうとしている。

①編集技法の変化
『アメリカ消防夫の生活』では場面転換にフェード・アウト/インが使用されていたが『大列車強盗』ではほとんど見られない。その代わり異なる場所で起こっていることを示すクロスカッティングによって直接ショットをつなげている。四人組の強盗は二手に分かれて貨車と機関室を襲う。この二つの場面を暗転することなくつなぐほうが、事件の臨場感を与える効果を演出に。

貸車
機関室
汽車にカメラを設置することで動的な演出

クロスカッティングはその後、D・W・グリフィスを中心に発展。
スリリングな場面の演出に重宝されてゆく。

②カッティング・オン・アクション
もう一つ映像のダイナミズムにおいてこの作品が重要なのは、拙いがカッティング・オン・アクション(アクションつなぎ)の萌芽が見られる点だ。

ピストルを機関士に向けて列車から降ろす場面において、動作の途中で列車の上から地上へとカメラ・ポジションを変えてショットをつなげる。人物の動作の途中でショットを切り替えてつなげるカッティングは最初期には見られなかった編集のダイナミズムが生み出されている。

機関士が降りようとした瞬間
汽車から地上のカットになる 機関士が降りる

③ 映画的空間
一番の見どころのシーンで、書き割りの演劇的な平面のシーンもあるものの、最後に逃げる強盗とそれを追う保安官の場面は、奥行きのある舞台を最大限活用して奥から手前まで人物を移動させ、縦の構図でスリリングな戦闘アクションを描く。

背景が絵でつくられている(コントっぽい作り)
手前の強盗と奥の保安官が同時に動くシーン
そこから銃撃戦を繰り広げながら保安官が徐々に奥から手前へ移動

演劇的空間から脱却して
映画的空間を志向しようとする工夫がある


④最後のショット
最後のショットで脈絡もなく、強盗がカメラ目線でピストルを撃つショットが付されている。これは当時の映画は映像が部分、部分で売られており繋げる順番は監督ではなく購入した興行主が一任していた。だから別の場所だとこのショットが冒頭の場合もあり、2章で話したアトラクションシネマ的な要素がまだ残っていたと言える。


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