雲の中のマンゴー|#10 熟成による付加価値化
この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。
Novel model Mango Kawamura
Author Toshikazu Goto
第10話 「第2章~その3~」
「ああ、それは、
まだ準備段階なんですが、じゃがいもの長期熟成の研究と実験をしていこうと考えていまして、うちで栽培するじゃがいもを通年出荷できるようにしたいと思っています。新じゃがとして、旬の時期に流通されず保存されたじゃがいもは味が凝縮して旨味が増すんですよ。取引先の飲食店さんではフレンチフライとして提供しているのですが、これがイモ自体に甘みがあって旨みが凝縮されていて激ウマなんですよ。」
「ほう!それは食べたいね。」
「ぜひぜひ、行きましょう。ただ農業用冷蔵庫で保存しておくと、表面が皺くちゃになるんですよね。それが熟成したイモの証拠だと言うこともできるんです。が、親父の考えは新じゃがのようなハリのある表面の仕上がりで熟成イモを提供したいと言っているんです。北海道でその研究をして商品化している事例があって、その仕組みを参考に温暖な静岡でも長期熟成するための研究と実験をスタートさせる段階なんです。」
「熟成かぁ~、そういえば完熟イチゴの本を読んだことがあったなぁ。熟れすぎていて市場には流通できないけど、熟成されたイチゴの甘さと旨さが格別であると書いてあったような。。」
「まぁ、熟成にもいろいろありますが、肉や魚でも様々な熟成技術により旨みを凝縮させて甘みを向上させ美味しくしたり、タンパク質を分解して柔らかくしたり、素材の付加価値を向上させている例がたくさんありますね!キーワードとして使うことでも商品価値も上がりますね。」
「熟成すると旨味や甘味が増すんだね、これも付加価値なんだなぁ。」
登は、渡辺親子の農業への取り組みから異業種参入の難しさと、熟成による付加価値化を知ることができた。このほかにも、スプラウト栽培、レストラン向け少量多品種野菜の施設栽培、トマトジュース用トマトの栽培、シイタケ栽培などの視察を重ねていった。
なかでも静岡県伊豆の国市、丸山農園のシイタケ栽培には大変興味を持った。個人的にシイタケが大好物であることと、妻の美恵と一緒に趣味として原木シイタケを裏庭で育てていたことから、365日シイタケに向き合う園主の健一さんのストイックなシイタケ栽培の大ファンになってしまった。
ただ、あまりにもストイックすぎて職人技であるため、登が実践したいと考える農業イメージは付加価値の高い農作物であり、自社サワムラの工業ノウハウを取り入れることができる農業形態であることが優先されることも再認識できた。
#11に続く。
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