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人が支配する宇宙⑥「宇宙の戦争」

国家は主権を持っており、主権とは「内部においては国家権力が最高の力として排他的な統治を行い、他国の支配に服することのない独立性」のことと言える。そして主権を持つ国家の利害が対立して戦争となった時、国家の関係性を示すルールが必要であると認識されるようになり、それらは条約などの国際公法として具体化していった。

しかし条約とは無条件で全ての国が従うルールではなく、条約を批准した国にのみ適用されるルールである。また条約や慣習法として存在していても誰も遵守していなかったり、そもそも条約を批准している国がひとつも無いなど死文化していることもある。そしてなにより主権により国家を外部から法的に縛り付けることは不可能な以上、ルール違反にペナルティを行使する絶対的な世界警察は存在しない。つまり様々な暴力を背景にしてルール違反をする国家に対処する側もまた暴力に頼るほかなく、国家の暴力の最たるものが軍事力である。

今話題の、地球上の国家が宇宙ベースのISR機材や通信・測位システムを運用しそれらを妨害しあう「宇宙ドメインの戦い」については今回無視する。本書「図解妄想宇宙軍(改)」で注目するのは、最低でも地球と月、基本的には地球と火星と木星といった宇宙に根拠地を持つ国家同士の戦争であり、宇宙空間で繰り広げられる世界大戦の軍事的側面である。

宇宙大戦が実施されるには宇宙に安定した生活と社会が必要であり、それを担う宇宙国家の成立はおそらく2100年ごろ、宇宙大戦の勃発は2150年ごろと考えた。この頃には大規模なロケット以外の宇宙輸送手段を始めとして、核融合炉、量子コンピュータ、シンギュラリティ状態の超高度AI、汎用ヒューマノイドなどが商業化されているとした。

宇宙の生存圏や生産設備はスペースコロニーなど与圧空間内にしか存在できず、また必要資源の全てを単一の天体から満足に供給することは難しい。そのため宇宙国家は安定した宇宙輸送を目的に制宙権を確保するため、宇宙軍の戦力は艦艇を中心としたものになる。陸上戦力は惑星表面や小惑星の確保のため多少ながら整備されうるが、コロニー攻略は市街戦を避けるためサイバー攻撃による制圧か包囲封鎖による飢餓が選択される可能性が高い。

なおコロニーに対する戦略攻撃に核兵器は必須ではなく、艦砲射撃や燃料気化爆弾による与圧隔壁の徹底的な破壊や化学兵器の使用などでも充分代用可能である。逆に地球のような開放大気圏への戦略攻撃にはやはり核兵器は必須であるとともに、火星軌道などから発射された核弾頭の終端速度や低視認性を考えるとその追撃は非常に難しいと思われる。

・主権国家体制(wiki) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%BB%E6%A8%A9%E5%9B%BD%E5%AE%B6%E4%BD%93%E5%88%B6

・ウェストファリア条約(世界史の窓) http://www.y-history.net/appendix/wh0904-097.html

・主権国家/主権国家体制(世界史の窓) http://www.y-history.net/appendix/wh0904-016.html

・国民国家(世界史の窓) http://www.y-history.net/appendix/wh1201-026_1.html

・13植民地/アメリカ大陸のイギリス植民地(世界史の窓) http://www.y-history.net/appendix/wh1102-001.html

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