生命力とか、全部捨てちゃえ~かすみ嬢の居場所(61)


「今の貴女はまるで亡霊のようね、青白い顔して常にふらふらと彷徨っているあたり」
 って言われました。

 そうかー。小説の「文学少女」シリーズに「文学少女と飢え渇く幽霊」ってお話があったな。あれに出てくる蛍ちゃんのこと思い出した。
 シリーズを通してのヒロインの子も華奢なのだけど、このお話のヒロインの蛍ちゃんはもっと病的な細さ。たとえば、こんなふうに描写されてる。

「あの腕、いくらなんでも細すぎる。まるで血の通わないマネキンのようじゃないか。いいや、腕だけじゃない。細い腰、薄い肩、小さな背中、透き通るような栗色の髪、それに、闇に浮かび上がる病的に白いうなじ……。体のどこもかしこも、細くて、無機質で、青ざめていて、まともに息をしている人間に見えない!」

 ちょっとおこがましいけれど、あの痩せ姫そのものの蛍ちゃんとお揃いなら、それは嬉しいかも。なんてそんなことを思って、聞いてました。
 たぶん、もともとのレベルが違っていて、だから私は姫にはなれないのだろうけど、でも、少しでも近づいた気がして少しだけわくわく。

 このままふわぁって浮いていけたらいいのに。痩せれば痩せるほど、身体は軽くなっているはずなのにずっしりと体重を感じるの。
 ふしぎね。何かが地上に繋ぎ止めようとでもしているかのよう。

 あまりよくわからないけど。寝られない時間が増えてるけど、でも、気がついたら寝ているし。私にとっての最低限の栄養素をできるだけちまちまと摂りながら、ふわりふわりと生きてます。
 あんまり、生きている実感がなく、それこそふわりふわりと。

 とりあえず浮腫んでいる気がして、カリウムは欲しいから胡瓜ひとくち食べてみようかしら、とか。このままだと立てないから、桃を齧ってみようかしら、とか。
 水分が多そうなものをちろりちろりと。

 熱中症だとかで、倒れたくはないの。見つかっちゃって運ばれでもしたら、発見した方や病院の方々に迷惑だし、見つからずに死んだとしても、周りの人に迷惑だから。
 このまま死んじゃったら、私の醜い身体にはまだまだお肉がついているから、腐臭がするから。
 体脂肪率も、もうBMIが15を切ったあたりから家の体重計ではずっと5%を示していて、うまくわからないのですが…。ただ、市販の体重計では5%未満はすべて5%と表示されるらしい。だから、BMIが一応ひとケタに入った今、もうちょっと低くなってるといいな。

 蝋人形みたいになりたい。綺麗なまま死ねたらな。
 生命力とかそんなもの、全部捨てちゃえばいいのに。
 なのに、こんなにも痩せに執着してるから、生きることを諦めきれないの。滑稽でしょう。

 明日はお外に出られますように。頑張るよ、頑張る。


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