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「ALICE」マイ・リトル・ラバー

アニメ「はなかっぱ」の主題歌を、マイラバが担当してる関係で、AKKOの声をもっと聴きたくなり、いろいろ聴き返すうち、やはり、マイラバは「ALICE」だな、と思った。
「不思議の国のアリス」(及び「鏡の国のアリス」)の世界観を、取り込んだラブソングとしては、とにかく出色なのでは。たとえば「時間の国のアリス」(松田聖子)の場合、歌い手の生々しい色気が邪魔をして、描こうとしたはずの不思議な浮遊感、にリアリティがなかった(もっとも、松本隆が聖子に見ていたのは「恐るべき子供たち」のエリザベートだったから「アリス」の世界まで若返らせるのは、最初から無理があったのだけど)。
ではなぜ、小林武史が成功したのかといえば。彼自身がこう言っている。「最初の子供を出産し、母になるAKKOの中に、ここであえて少女性を求め、それを描いておきたかった」
つまり、彼には、妻の失われゆく少女性を刻印するために、無理にでも時間を逆行させたいという、切実な動機があり、おそらくAKKOにも、母になるにあたって、少女への回帰願望みたいなものが芽生えて、それが巧みに反応しあったのだろう。
それにしても、この時期のAKKOって、声もルックスもキャラも、お人形さん的というか、その魅力で夫たちを翻弄しつつ、大事にかしづかれてるんだけど、でも、いつかは飽きられ、捨てられてしまいそうな(実際、そうなった今ではよけいにそう感じる!)不安定な幸福感、というものが、すごくいい。
アリス的世界についても、少女性と母、ということについても、いろいろ考えるところが多いので、またいつか、記事にするつもりです。

(初出「痩せ姫の光と影」2010年10月)


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