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ユーザー系システム子会社のキャリア形成における特徴

そもそも

転職を期に、少し変わったユーザー系システム子会社からのキャリアについて上記を書き始めたのですが、そもそものユーザー系システム子会社って?という前段階が抜けていたと思い慌てて書き出したのがこの記事です。

この記事でいうユーザー系子会社の対象

私が10数年所属していたのは、いわゆる日本のトラディッショナルな会社(JTC)のユーザー子会社です。親会社は100年以上の歴史を持ち、マーケット的にも強く大きく、そして資金力がある会社のシステム子会社でした。どこまで本当かは分かりませんが、新卒に人気のIT企業ランキング、でよくランクインしているような会社です。親会社のビジネスが強く安定してそうなユーザー系子会社の典型だと思ってください。

新卒で集まる人の特徴(個人の意見)

これは自分自身も最初はそうだったのですが、ある程度大きな企業で安定感があり、福利厚生がしっかりしており、お給料もそこそこ。いわゆる働きやすい会社と言われるような物を求めている人が多い認識です。実際私もつい最近までは定年までなんとなく働いて行こう…と思っていました。キャリアなんか考えなければ超絶いい会社だと思います。

親会社は大きく安定しているし、自分が定年までは潰れないだろう、とりあえず会社で働いてお給料をもらって…というタイプが半数以上というイメージですね。とは言え、ある程度人気企業であることから優秀な人はもちろん一定数存在し、そう言った人たちが会社を引っ張っていく…という感じです。みんなで切磋琢磨してスキルアップ!みたいな感じは正直あまりないです。

組織の特徴

当然ながら、親会社が最強に強いです。なので、システム開発時の要件定義などもかなり強くでてきますし、ビジネス上の要望を大多数の親会社社員はゴリ押しします。システム的なデメリットが大きくても聞いてもらえない、という事もかなり多いです。(以前に比べればマシになった…感じはありましたが)ただ、この辺はユーザー系子会社によくあるスキル面で頼りにならない社員の所為で信頼関係を気づけてないことからこのようになっている側面もあるのは間違いないです。

また、これはとっても厄介な話なのですが親会社がいわゆるネームバリューが強い会社の場合、システムは日本の〜社も使っている!みたいな実績を作りたいが為に、各サービスベンダがべらぼうにディスカウントして製品を使ってもらおうとします。なので、要件に全然マッチしない製品・サービスなどを親会社から指定されて開発がスタートし、開発案件がデスマーチのようになる…という事もしばしば見られます。そう言った製品は本国では人気だが、日本ではまだまだ導入されてないというものが多く、開発に必要な情報が足りなく困る事もよく発生します。

さらに金融系のJTCゆえにガッチガチの開発ルール、そしてルールが全然更新されない中で開発を強いられると言った事も多いです。似たような同業他社との懇親会で話を聞いたことがあるのですが、この辺は共通したユーザー系子会社ではよくありそうな特徴です。

総じて、さまざまな制約により苦しい状況である程度ガードレールが決められた中での開発を強いられるのがユーザー系子会社の特徴だと思います。

システム開発や運用の体制

すごく雑に一言で言ってしまうと、ベンダーへの丸投げです。働きやすく安定したユーザー系子会社なのでスキルアップへの意識がなく、仕事をただただベンダーに丸投げして仕事をしているつもりになる人が多いです。もちろん、意識が高くかつスキルも身につけて適切に捌く人もいますが、かなり少ない割合です。

さらに、これは私の肌感覚なのですが昨今の転職市場の活性化により、開発ベンダーの優秀な人が次々と辞めていき体制が弱体化しています。それまでは私が所属していた会社は、親会社のネームバリューでかなりスキルが高い優秀な人を囲えていたのですが最近はそういった長年支えてくれていたコアな開発ベンダーの方達がいなくなっていってます。優秀と感じていた方達からどんどん人が抜けていく為、全体として各ベンダーさんの技術力が落ちている事を強く感じていました。補充された人員もこれまで開発した事がある?と言いたくなるような人もアサインされる事もあり、全体的にレベルダウンしていました。それにより、体制が立ち行かなくなり開発が頓挫する場面も最近ではよく発生しており日本独特のベンダーに開発を頼る開発体制は今後ますます厳しくなっていくのでは、と日々感じておりました。

実際、私が転職した某外資企業で同日に挨拶した人は、富士通、日立、NEC…とこれまでお世話になった大手ベンダーからの転職された方ばかりでその思いが確信に変わりました。その為、内製で社員の開発力を高めていけないユーザー系子会社は今後開発面ではかなり厳しい局面が続くと思っています。

ユーザー系子会社のメリット・デメリット

全体的にネガティブな内容ばかりでしたが、そうは言っても実際に日本にある企業の中で考えれば働きやすくとても素晴らしい企業でした。ここでは簡単にメリット/デメリットを書き出してみます。

メリット

  1. 潤沢な資金により手厚い教育を施してもらえる

  2. JTCのビジネスの考え方やお作法を知ることができる

1については、例えば数十万円するような技術系の研修にいかせてもらえるなど金銭的に個人では厳しいスキルアップの補助をしてもらえることが多いというところです。場合によっては海外研修などもあるでしょう。実際私が所属していた企業では、いずれも可能であり意欲があればそう言ったリソースを活用してスキルアップすることができました。ただし、そう言った育成の計画を立ててくれるかはまた別の話なので、自身の伸ばすべきスキルや方向性は自身でしっかりもち、それをアピールする事は必要になると思います。

2についてはJTCがいいものかどうかは置いておいて、日本にある企業で働く以上はビジネスの相手として、お金を持ったJTCを相手にする必要ほとんどです。なので、そう言った企業のお作法を知ることで例えばエンジニアとしてJTCのお作法をわかりつつ、技術的なスキルが高いみたいな形で市場価値を上げることができます。日本からでてエンジニアとして働く、というような場合でもない限りやはり仕事の大きなパイを持っているJTCの文化を知っている事は自身のその後のキャリアの選択肢を広げてくれるというのは現時点では間違いないです。結局外資だとしても、日本法人であれば相手にするのは日本の企業になるので大事なスキルかと思います。正直、嫌だなと思いながらも転職する局面では本当にこの経験があってよかった…と思いました。何せ、自学ではどうしても身につけることができないものですので。ただ、その文化に染まりすぎるのは危険ですのでそこは冷静に切り分けが必要です。

デメリット

  1. 自身でエンジニアとしてのキャリアを選べない事が多い

  2. 開発体制の脆弱化と皺寄せが厳しい

1については、組織の特徴でも触れましたがやはり親会社が強いです。これは健全な力関係ではなく、組織管理者がビジネス優先を歪めた形で所属した社員の都合よりは社員を駒として扱い組織編成する事が多いです。なので、各個人の希望よりも組織的な都合が(組織管理者たちの評価の都合で)優先されやすく、結果的に自身のエンジニアとしてのキャリアとは別な形になる事が多いです。それは、例えばマネージャー至上主義によるマネージャー転向であるとか、組織ローテーション的な考えで意図しない経験をさせられる、などです。ただし、上記はいわゆる中堅以上が当てはまる場合が多い気もしており、ある程度若手の頃は寧ろベンダーさんと一緒に手を動かす事が奨励されたりと基礎的な開発スキル向上する分には困らない点でもあります。

2は途中でも触れましたが、転職市場の活性化により開発体制の脆弱化が進んでいます。開発の量も確保できなければ、質も悪くなる一方で頓挫する案件が増え、そうすると単体では適切に体制が引けていた他チームへの支援要請が来てその連鎖が続く…と言った形です。1同様に親会社への影響を抑える為にもこう言った組織的なサポートで一丸として頑張らないとしめしがつかない、という形で悪い連鎖が続く事が多いと感じています。

エンジニアとしてキャリアを積むために

こうやって書いてきた内容を改めて見ると、救いがないじゃないか…と思われるかもしれません。ですが、新卒がまず入ってビジネスの構造を知るという観点では悪くない選択肢だと思っています。

というのも、ベンダー丸投げになるとは言ってもここは若手のうちであれば一緒に入って開発をやる、設計をやるなどもプロジェクト上は自分の意思と上司への申告でできる可能性が高いです。そうやってベンダーの方に助けてもらいつつ、実際に手を動かして成長する機会は作りやすいからです。そして、メリットにも書いた通り、育成への支援は手厚い場合が多いのでそう言った施策に乗っかれば育成のメリットはあるはずです。

また、日本で働く以上JTCだろうが名のある外資であろうがITエンジニアである以上JTCを相手にする仕事が多いはずです。その為に、JTCの文化を働きながら中で見ていけるというのは、それだけではエンジニアとしては役に立ちにくいですが今後の仕事の可能性を増やす為にも技術と合わせて持っておく事は非常に有用だったと感じています。

生涯ITエンジニアとして全てを捧げるには少し辛い部分はありますが、ITエンジニアとして日本で活躍していく事を考えればまだまだよい環境だと思います。冒頭ご説明したように、そもそもの福利厚生や待遇の面でも日本の平均以上である事も多いのでまずは所属して業界としての様子を伺うにはありかなと。

ただし、何も考えずに業務に取り組むとそれも良くない結果になると思っており、どこまで再現性があるかは分かりませんが自身の振り返りも兼ねて以下のシリーズで書き出していく予定です。もしご興味あれば、以下もご覧下さい。

以上、長文お付き合い頂きありがとうございました。

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