"似合う" を探して

普段着が似合わない人生を送ってきた。
普段着が似合わないやつなんかいるのかよと思っていたのだが、毎日毎日「何か違う」を鏡の前で再確認させられたら認めるしかない。例えばなんでもない白い丸首のTシャツを、わたしがなんの工夫もなく着るとめちゃめちゃ貧相かつ地味になる。シャツになると少し改善されれるが、スニーカーを履くとまたダメ。ボーダーもしっくり来ない、ボーイフレンドデニムもいまいち、パーカーは単にパジャマだ。普段着というか、カジュアルが致命的に似合わない。

似合うものといったら生活感のないデザインばかり。18歳のとき所属していたオケの演奏会で初めてマキシ丈のカラードレスを着たときに「これが普段着になればいいのに……」と思い、はたちのとき振袖を着てますますその思いは強くなった。ドレスはワンショルダーで捻ったデザインのマーメイドライン、振袖は朱赤の地に色とりどりの羽根をした大きな鶴が舞い上がる、大胆な柄ゆきの振袖だった。その後もドレス・振袖ともに色々着たが、いずれも普段の服装の数倍自分の顔に合っていた。そう、顔がフォーマルなのだ。唇に色を乗せた途端に「パーティですか?」という感じになって、似合うが日常からは浮くので、社会人になるまできちんと色の出るリップをほどんど塗ったことがなかった。

普段着られない服は概して着心地が悪い。ドレスも振袖も、丸一日着ていると結構深刻に疲れる。着ている間の緊張感がすごいし手入れも大変だし、そして何より会社に着て行けない。発色のいいリップは食事のたびの塗り直しが必須だ。むりだ、そんなんわたしにはできない。でも服はいずれにせよ着なければならないし、どうせ着るなら似合う服が着たいし…「もっと他に似合う服があるはず…」と思いながら日々を過ごしてきた。

「もっと他の服」を求めていたわたしは、いくつかファッション系の診断を受けた。結果、パーソナルカラーは春夏、骨格はナチュラルだという判定がくだった。一面納得している部分もあるが、「普段着似合わない問題」は解決されなかった。溌剌とした色の多い春メインのPC、カジュアルを着こなすはずのナチュラル骨格を持っているはずなのに、わたしはなぜふつうのパーカーにデニムにスニーカーでこんなに野暮ったく地味になるのだ。長身で痩せ型、似ているボディラインは理科室の骨格標本か百済仏という人間にカジュアルが似合わないなんてことあるのか。いや顔のせいなのは分かってるんだけど。

これはもう、未診断のパーソナルデザインの影響があるのだろうと思った。そして色々調べて、答えに辿り着いた気がする。たぶん、わたしのPDはファッショナブルなのだ。自己診断は禁物なのも分かってはいるのでいずれちゃんと診断を受けに行くつもりではあるが、イメコンブログなどを読んでいくと書いてあることがいちいち当てはまって笑ってしまうくらいなので、これに関しては分かりやすい方なのだろうと思う(PCと骨格はわりと分かりづらいタイプだった)

変わったデザインや大きな柄が似合うとか、小ぶりのアクセサリーは物足りない印象になるのはまさにその通り。確かに細い鎖の一粒ネックレスや繊細なピアス、肌に溶け込みそうなブレスレットはわたしの骨の上では "無" だったし、いちばん褒められるピアスは長さ約10cm幅約3cmだ。ヌケ感やシンプルさがそのまま地味さやだらしなさ、貧相さに繋がるのもPDのためと考えれば納得が行く。あと会社で新しく部署に入ってきた人に「怖くて話しかけられない」と言われていた(というのを人伝に知った)こともある。実際のところはかなり温厚なのだけど……。街や電車で性犯罪のターゲットにされたことがほぼないのもたぶんこの「怖そう」のおかげだと思う。

そう、結局「もっと他の服」などなかったのだ。着ていて疲れる生活感のない服がわたしにとっての最適解だった。PDを外して着心地を優先し、地味な人として生きるか、PDに乗って「会社に着て行けない服」をなんとか日常に落とし込むか。30代になった頃からファッションもメイクもわたしにとっては "武装" としての色合いを強めている。地味な人ではいられない。

改めてワードローブを見直すにあたって、各診断を解釈してみた。

パーソナルカラー春夏
とにかく「顔まわりには濁りがない色」ということだけ意識しておけばよさそう。黄み・青みもそこまで気にしなくてOK。逆にモノトーンやカラーレスは寂しげになるので、できるだけ色味のある服を着て色味のあるメイクをした方がよいみたい。春も夏も「コントラストきつめは顔が負ける」と言われているから、PD的に推奨されるハイコントラストはできるだけ顔から遠いところでつける方がいいのかも。リップを朱赤にしてチークを濃いめに入れれば苦手色の黒いハイネックも着られたりしたので、苦手な色を使う場合はこのあたりでバランスをとっていきたい。とはいえ濁りは本当にアウトなので(昔芥子色のカーディガンを着ていたらPCなど少しも知らない母に「その色本当に似合わないね」と言われたことがある)クリアさだけは死守。リップの塗り直しが面倒とかはもう単に努力と習慣化なのでがんばる…。

骨格ナチュラル
肌を出しすぎる&ひらっふわっとした軽そうな素材は貧相になるので、できるだけ強め固め厚めの素材を選んだ方がよい。重心も下に持っていくことを意識。重心を下にというとついほっこりしたものや脱力感があるものを選びたくなるが(着心地がラクなので…)、ほっこり感・脱力感がオシャレになるタイプではないのを肝に銘じるべし。わたしにほっこりは「垢抜けない」、わたしに脱力は「だらしない」になる。夏場は…どうしましょうね…。

パーソナルデザイン ファッショナブル(※自己診断)
直線的でデザイン性が高いもの。大ぶり、大柄、大胆、大げさ。ファッショナブルは盛りに強いとのことだが、確かにこれまでの経験則上服の構成要素は多ければ多いほどよい(Tシャツよりシャツ、カフスが長かったり襟が大きかったり大きなフリルが付いていたりするとよりよい)ので、思う存分盛っていきたい。骨格ナチュラルのわりにウエストマークとは相性がいいなと思っていたのだが、ベルトを加えると構成要素が1つ増えるためかもしれない。日常着にするには、どこかをカジュアルダウンしたらいいのかも。トップスがバキバキのデザイン系だったらボトムスをデニムにしてバランスをとる、とか。靴はできればヒール(骨格も考えると特にヒールが太かったりデザイン性が高かったりするもの)がベスト。でも最近の流行はフラットなので、どうにか取り入れたいところ。フラットシューズの中でもシンプルなバレエシューズよりは盛りやすいスニーカーが吉か。履いたことのあるスニーカーでいうと似合い度はニューバランス>スタンスミスなあたり、やはりここでも "構成要素の多さ" がキーワード。今度ポンプフューリーあたりを試しに履いてみようと思う。

パーソナルカラーと骨格、パーソナルデザインのうちいずれか2つを押さえていればギリギリ "似合う" の範囲内に収められそうだというのも最近分かってきた。目指すは「着心地のいい盛装」。買い物が楽しくなってしまって困るなあ。

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