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【短編小説】2.こどものきおく【その角を通り越して。】

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この部屋には秘密があるんだよ。
あの鏡の向こうに、見たことがない扉が映ることがあるんだ…


小さかった頃の記憶がだんだん蘇ってくる。

僕は、古い木でできたテーブルから
頭の半分を覗かせて、
窓際にいるおばあちゃんを見上げていた。

照明は部屋の中央から垂れ下がる
小さな裸電球と
部屋中に置かれたろうそくの明かりだけ。

薄暗いのに、温かい。

やわらかい空気の部屋の中
ろうそくの灯りが
おばあちゃんの横顔を照らしていた。

口元にある大きいイボや
顔に刻まれた深いシワが
よりいっそう浮き彫りになり少し怖い。


テーブル位の背丈しかなかった僕は、
いつの間にかこの小屋に舞い戻って
ろうそくを作って暮らしていた。


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