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ドワーフの鉱石祭り【短編小説】

ドワーフの日記より抜粋

先日の地層調査にて、興味深い鉱物を発見した。

名前がつけられて人間の世界へと広まっていった
クリスタルやゴールドとはまた違う
様々な物質が地層から出てきた。


これは土なのか、石なのか。
透明感のある部分もあるが
真っ黒な物質が混ざっている部分もあり
非常に興味深い。

新しい地層から採掘をして
成分を調査しようと思う。

欠片を分析するため、少し削り、形を整えた。
今回は研磨せずに、より自然に近い形での標本とする。

分析が終わるまで厳重に保管するとしよう。



先日ひどい目にあってからは
新しい地層の調査に入る時は必ず
数値を量りながら採掘を進めるようになった。

あれ以来、匂いがきつい地層には
出会っていない。

ただ、最近はキラキラと光るものや
先が透けて見えるほど透明な石など
これまでにあった鉱石以外に
柔らかく弾力のある物質が混ざっていたり
異様に艶があったりする
変わり種が多く報告されるようになった。



この世界には、水、火、風、土
4種類の大きな力がある。

それぞれの力の源となるジュエルと呼ばれる石は
いわくつきの強力な魔力が宿る石。

その昔、大きな争いで力を競い合った魔法使いが
それぞれの力を乱用した罪を、その一生をかけて償うために
人柱となって石に封印されたと言われている。

そのジュエルを奪い合う争いはこれまでに2度起きていて
どちらも何とか収まったが
次がないとは言い切れない。

どうしたら争いはなくなるのか。


これまでの概念にとらわれてはいけない。
2度目の争いの源となったあのジュエルもそうだ。
急にどこからともなく現れて、この世界をかき乱す。
神がこの世に解き放ったに違いない。

我々は「神」と呼ばれるこの宇宙を作った存在のおもちゃ。
神が存在する数だけ、この宇宙も存在する。

神はそれぞれ、「自分が住む世界」・「モノを作って遊ぶ世界」・「お気に入りを保存する世界」の3つの世界を持っている。
我々は、モノを作って遊ぶ世界の中に解き放たれた存在なのだ。
神は我々の様子を見て楽しんでいる。
新たな面白いモノができれば、躊躇なく解き放つ。

そして気に入らなければ、すべてを壊す。
その、壊すためのモノを解き放ち、様子を見て楽しむのだ。


今回、あのジュエルの力はコントロールされ、この世界の崩壊は免れたが
神は一体何を思っているのだろう。

どうしてもこの世界を壊したいと思っているならば
より魅力的なモノをこの世界に送るに違いない。
前と同じように、石なのか、それとも生き物なのか。
植物なのか、それとも形のない何かなのか。
予想もつかず、気持ちばかりが焦る。

「まぁ、それがこんな地層の奥深くから出てくるとは思わないけど」

あの魔法使いが口を出してきた。
前の騒動の時から、なぜか調査に同行することが多くなり
少し窮屈な時もある。
さすがは初めの人間の子孫。何か感じるものがあるのか。
この魔法使いの力を持っていれば、ジュエルの力は打ち消すことができる。
なぜ神は、この力を我々に与えたのか。

考えれば考えるほど、わからなくなった。


end

そんなことを考えながら、今日も採掘を進めた。
今日もまた、見たこともない煌めきの地層にぶつかる。

赤く、やわらかい。
別のところは、透明で硬い。
入り混じった物質からは、特におかしな力は感じないが
非常に興味深い。

分析を早く済ませて、ろうそく屋に持ち込むとするか。





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