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いい画材は自分にはもったいない…と思ったことのある方に読んで欲しい記事

アナログ画材を使って絵を描かれる方や、書家の皆様、画材にこだわりはありますか?

今回は、作品に使う筆や紙、絵の具の値段とクオリティ、そして日本の伝統画材の保存について、少し書かせていただきたいと思います。


画材を選ぶ基準はなんですか?

クオリティ、使いやすさ、値段などなど、画材を選ぶ基準ってたくさんありますよね。
手に馴染む道具を見つけたり、自分の作品がより良くなるような画材を見つけるのは、画材選びの醍醐味であり喜びです。

そのため、多くの作家の皆様は、いろいろな情報を集めたり、書き比べをしてみたり、といい道具を見つけるための工夫をされていることと思います。

最近は安価な道具も増えたので、道具の値段も数百円から何十万円と、画材の値段は上から下まで様々です。これに伴い、画材の質も上から下まで様々になってきました。

画材の値段とクオリティ

画材の値段とクオリティは、必ずしも比例するわけではありません。安くてもよい画材はありますし、値段は張るけどイマイチなものももちろんあります。

しかし、多くの場合、安価で売られているものは、どこかでコストを削っています。価格を下げるために、材料の質を下げたり、処理の仕方や製法などがおざなりになってしまうと、製品もそれなりの物になってしまいます。
また、安価なものはすぐにダメになってしまうことも多いです。何度も買い替えることで結局はじめからよいものを買ったほうが安く済んだ…ということもありえます。
それに、使いにくい道具だと作業効率は下がりますし、上手くいかないからと、無理に修正を重ねると、作品の完成度が落ちる原因にもなってしまいます。

一方、品質のよい画材は、値段もそれなりにすることが一般的です。
しかし、値段は高くても、紙や絵の具だったら描き味や発色、保存性がよかったり、筆だったらとびきり描きやすかったりと、質のよい画材を使用するメリットは計り知れません。
特に、日常的に作品を制作する方々は、画材のクオリティの違いが、制作効率や作品の完成度に直結することをご存知の方も多いかと思います。
値段に関わらず、使いやすく、ストレスがたまらない道具を見つけることはアナログ画材を使って製作する人々にとってとても重要です。

もちろん、いつでも最高級のものしか使わない、というのも難しいですし、自分に合った道具を納得して使うのが一番です。
しかし、画材を探している方とお話ししていると、自分にはもったいないから、といった理由でワンランク上の画材に挑戦することをためらわれている方が多いです。
画材の質は作品の完成度に大きく影響するので、よい画材に挑戦するのをためらうことこそもったいないですよ!

私の画材選び失敗談

私が水彩画を始めた時に買い揃えた道具は、ほぼ全てゴミになりました。
というのも、水彩画を続けるかもわからないし…ということで一通りの道具を安価なもので揃えてしまったからです。

パルプ入りの紙に、よくわからないブランドの絵の具、一本数百円しない筆で挑戦した水彩画は、とても汚い仕上がりになりました。
慣れてくると、それなりの絵が描けるようになってくるのですが、良い画材を揃えて練習しているうちに、自分に合わない道具で無理矢理気に入る作品を作ろうとして無駄にした時間は大きかったな…と思うようになりました。
特に発色などは、自分の技術でどうこうできるものではないので、早いうちからよい画材を使っていればストレスも少なく済んだのに…と思います。

また、いい画材を使うことで、作品が上手くできないときの言い訳がなくなり、「画材はいいはずだから、絵がキレイに見えないのは自分の腕のせい」と開き直って、自分の腕を磨くことに集中できたのも私にとってはメリットでした。

文化保存にも繋がるいい道具の使用

これは当店で取り扱っている商品に限った話になってしまいますが、良い道具を使用することは、作品のクオリティや作業効率の面だけでなく、文化保存の観点からも大変重要です。

和紙や筆の職人さん方の中には、「売れないから」と言う理由で辞められてしまう方もおられます。また、筆や和紙の原材料の価格も高騰し、後継者も不足しており、業界全体の存続も厳しい状況にあります。

伝統工芸は、一度途絶えると復興が大変難しいです。伝統的な道具が失われてしまうと、過去の素晴らしい絵画や書道作品の再現や修復も難しくなってしまいます。過去の作品の筆跡や表現は、昔からの道具なしにはなかなか再現できません。

近年工房を見せていただいたり、お話を聞かせていただいたりした職人さん方は、とてもこだわりを持ってお仕事をされておられます。そういった職人さんたちの素晴らしい技術が、安価な大量生産の道具に呑まれてしまい、ものづくりの伝統が途絶えてしまうのは本当にもったいないと感じています。

是非いい道具を使ってみてください

自分にはいい道具はまだ早い、もったいない、という気持ちは、自分がそうだったため、とてもよくわかります。
しかし、一度自分に合った良い道具に出会えると、作品の質がぐんと上がりますし、制作のストレスも減ります。更に伝統工芸品を選ぶと、日本の道具文化を守ることにも繋がります。
自分にはもったいない…と思わず、色々な画材を試してみていただけると嬉しいです。

当店では、筆の試し描きもできますので、是非ご自分に合う画材を見つけにきてくださいね。

丸山雄進堂
大阪市中央区島之内2−6−23
06−6211−6226

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