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東大経営学科卒が新卒でゲストハウスでプチ経営してみた話

お久しぶりです、縁側書生のふでぽんです。
古民家ゲストハウス鎌倉楽庵で働き始めてから、5/13でちょうど1ヶ月になりました。今回はゲストハウスの運営をして1ヶ月で感じたこと、やったこと、やろうと思っていることを書きたいと思います。

そもそも、どうして鎌倉楽庵で働こうと思ったのか

大学のゼミの同期に、龍崎翔子っていうバケモノみたいなホテル経営者がいたんですよ。龍崎はホテルを5軒経営してて、テレビでも30分の特集が組まれたり、まあとにかく半端ない奴で。ホテルの経営手腕とか企画力はもちろんすごいんですけど、そんだけすごいのに偉そうにすることもなく謙虚だし、要はとにかくカッコイイんですよね。

他にもゼミの関係でいろんな起業した東大生とか社長とかとお話しする機会があって、実力も人間性もやっぱり半端なくカッコイイんですよね。で、思ったわけですよ、俺も経営者になりたいって。少なくとも同じ大学にいるし、能力的な差はそんなにないんちゃうかと。だったら俺でもなれるやろ、と。ゼミ論でいろんな東大生起業家に話を聞くっていうのをやったんですが、みんな「ググったらできた」とか「基本をわかってたらできる」とか言ってたし。みんな謙虚にしてるだけっていう説はありますけど。周りからは出遅れてる感がありますが、とにかく人生の夢を経営者になることにしようと思いました。DJ社長のyoutubeに感化されたのもだいぶあります。

就活のタイミングでは経営者になりたいっていう夢はそこまで明確化されてなかったんですが、コンサルティングの会社に内定をいただき、結果的に経営者へのルートを選んだことになったんじゃないかと思います。

で、4月から働く気マンマンだったんですが、なんと会社から「君は8月入社だよーん」というメールが来ました。内定者マイページの無機質な通知をみたときは、思わず「はぁ?」と目をコシコシしてしまいましたが、まあ会社がそういうならしょうがない、せっかく4ヶ月もあることだし経営者にでもなってやろうと思いました。何やろっかな〜、って考えたときに、読書が好きなので、気持ちよく読書できる場所を作りたいな、と思いました。小学生の頃よく床でゴロゴロしながら本を読んでたのを思い出して、ふと「縁側で読書するのめっちゃ気持ちいいんじゃね?」と家から大学のジムにに向かうチャリを漕ぎながら、これは天才的なアイデアだと思いました。ひんやりした感触の床とか、程よい外の音とか、そよ風的なsomethingがエクスタシーな読書体験をもたらしてくれるんじゃないかと。波の音とか聞こえてくるともうこれはアルデンテのトレジャーボックスではないかと。前からオフの日によく行ってた鎌倉は雰囲気もいいし海も近いしええやないかと。

ってことで、「鎌倉 古民家 縁側」とかでググってどんなもんかとリサーチを始めてみたんですが、家賃の高いこと高いこと。月ウン10万とか。そもそも物件数がすくない。古民家っていうワードが市民権を獲得して需要が高まってるのに、市場の古民家の数は限られてて供給が増えないから値段が高くなるのは経済的に当たり前ですよね。自分には資金力がないから、本当に「縁側で読書をする体験」で起業しようとするとどっかから融資を引っ張ってこないといけない。あれ、でもそもそも俺ってお金もないしそれどころか社会でモノを売る、ビジネスをする経験をしたことすらないではないか。そういえば龍崎もホテルやる前に、他のホテルで働いて勉強したって言ってたな。冷静に4ヶ月で軌道に乗せるのはキツいだろうし、4ヶ月はどっか近いサービスやってるところで運営の経験を積もう。

という思考回路で、今度は「鎌倉 古民家 ゲストハウス」で住み込みスタッフを募集しているところを探しました。縁側があって、なるべく海が近くて、規模がちっちゃくて経営にコミットできそうで、生活に困らないくらいのお給料がもらえるところ。そんな都合のいいところあるわけないだろ、と思うかもしれませんが、奇跡的に全ての条件を満たしたのが今働いてる鎌倉楽庵でした。

他のゲストハウスだとフリーアコモデーションといって家賃光熱費水道wifiタダだけどお給料が出ないところがほとんどなんですが、なんとうちはフリアコなのにお給料もでる。面白いのが、お給料が利益の○○%というところ。スタッフは僕一人で、経営者感覚でなんでもやっていい。こんなに僕の希望通りなことがあっていいのだろうか。noteで縁側書生生活をアピールして、縁側で読書するムーブメントを起こしたい。バンバン企画して利益上げまくってやろう、そう思っていました。

湧き出てくる問題点

最初の2、3日はオーナーに掃除とか洗濯とかを一通り教えてもらって、月曜日からは僕一人で運営することになりました。

ところが、お客さんが全然こない。というのも、僕が働き始めてから4月の平日の予約を取り始めたらしい。他にも、なんだか色々とよくわからない。

①予約サイト
あまり予約が入っていないのに、予約サイトをbooking.comとairbnbしか使っていない。あとは自分のwebサイトからの問い合わせ。予約サイトを増やせばもっとお客さんが増えそうだな、と思った。booking.comとairbnbのサイトの権限ももらってのぞいてみたが、写真がひどい。暗いし見切れている。
部屋の作り方もよくわからない。なんでbooking.comには「4人部屋」とか「6人部屋」とかあるのに、airbnbは「鎌倉楽庵」というリスティングが2つもあるんだろう?

②自社ウェブサイト

ダサい。圧倒的にダサい。なんでwixの広告がついてるんだろう。というか、宿のホームページなのになんでトップページが鎌倉の風景なんだ?四季の説明、いる?スマホで見るとガタガタになるんだけど大丈夫?龍崎は自社HPから予約取るのが大事って言ってたけど、こっから予約取れてるんだろうか。「鎌倉 古民家 ゲストハウス」でググってみるも、検索結果3ページ目までに出てこず断念。どうやったらこのサイト見つかるんだ?

③ゲストハウスの中
オーナーが綺麗好きなので基本的に綺麗。ただ、キッチンがあるのに調味料が全然ない、トイレと洗面所にタオルがないetc...
深刻なのはwifi関係。なぜかブラウザからIDとパスワードを入力しないといけないし、頻繁に切れる。入力用urlにうまく飛ぶ時と飛ばない時がある。なんじゃこりゃ。

④改善活動??
onedriveに「ゲストハウスの改善点」というエクセルシートがあり、そこに改善点を記入していく。

写真はもうある程度分類と重要度によるソーティングをやった後だが、最初は優先度も付いていなくていろんな情報が乱雑に記入されていた。対応状況も更新されてないし、この改善シート役に立ってるのか?てかエクセルシート見にくくね?

⑤オペレーション
掃除はルンバがやってくれるから楽。でも、掃除が終わった後ゲストを待つのが大変。3時から10時がチェックインになってるけど、いつ来るかわからないお客さんが来るまでずっと待ってなきゃいけない。退屈だなあ。
予約サイトの管理もがもっと大変だ。booking.comでドミトリーの予約が入ったら、booking.comの個室を閉めて、airbnbの在庫数を変更して、webサイトに表示してるgoogleカレンダーの表記変えて、onedriveのエクセルファイルに予約状況を管理する...めちゃくちゃ面倒くせぇ...
そういうのを一括で管理できるサイトコントローラーというものがあるらしい、調べてみるか...

こんな感じで整理してみましたが、働き始めの頃は問題の原因もよくわからずにいっぺんに降ってくるので、カオスな状態でした。

縁側書生から縁側コンサルタントへ

こりゃもしかしてまずいんじゃないかと思い始めました。僕のお給料は利益の歩合制なので、お客さんが増えないとリアルに金欠になってしまいます。なるほど、これが経営者感覚か!

とりあえず問題を整理して優先順位をつけ、コストパフォーマンスが高いもの(お金がかからず手っ取り早くできて、利益や顧客満足度に強い影響を与えそうなもの)から順番に片付けていくことにします。
とは言いつつもまずは作業環境を整えないと話にならないので、オーナーに相談してwifiの設定を変えてもらい、普通にログインできるようにしてもらいます。wifiが繋がらないと海外のお客さんとか不安ですしね。
次にエクセルシートをソーティングし、調味料を買う、タオルをつける、など簡単なところからやっていきます。
③ゲストハウス内のサービス改善④改善活動の改善がとりあえず一区切りです。ここまででだいたい2週間かかりました。

(左が改善後、右が改善前。石鹸の位置を高くすることでしゃがまなくて良くなった)

鬼門だったのがHP・予約サイトに絡んでくる①予約サイト、②自社サイト、⑤オペレーション。オーナーに予約管理の仕方を教えてもらい、どういう仕組みで部屋割りを決めているのか理解し、整理します。

楽庵には貸し出している部屋が2つあり、1階の6畳の部屋と2階の11畳の部屋があります。6畳は最大3人、11畳は最大6人まで泊めていて、6畳を主に少人数のグループかドミトリーに、11畳を主に人数多めなグループか女性ドミトリーとして運用していました。ただそれも絶対というわけではなく、カップルが2組予約が入っていればそれぞれに割り振ったりと、人力でなんとなくいい感じに割り振ることになっていました。

知識もなく、最初は①予約サイト、②自社サイト、⑤オペレーション最初はどこから手をつけいいのかわからないので、やみくもに手当たり次第やってみます。wixのSEOで検索順位を上げようとしてみたり、wixのサイトのレイアウトをちょっと変えてみたり、wix bookingというウィジェットをつけようとしてみたり、airbnb,booking.comの写真や文章を変えてみたり。

今思うと、龍崎の「自社サイトからの予約が大事」という言葉に引っ張られすぎて(もちろんそれ自体は正しいのですが)大きな森を見ずに、目先のweb改善に走ってしまいました。ただ、闇雲にやってみるのも全くの無駄ではなく、wixで色々と改善しようとした結果「wixではダメだ」というのがわかったのと、airbnbとbooking,comのシステムに慣れることができたのは大きな前進だったと思います。写真をちょっといい感じのに変えたことで、予約が増えた(ように思う)のでとりあえず金欠になるのは回避できました。
※wixは予約ウィジェットがドミトリーに対応していないのでウチの運営にあっていない、というだけでwixを全否定するわけではありません。

色々と動かしつつ、五里霧中にインターネットの海を彷徨ったところ、やはりサイトコントローラー(複数の予約システムの在庫を一括で管理するシステム)が必要だということ、Beds24というサイトコントローラーが最適なのではないかという本質情報に漂着します。

Beds24のメリット
・airbnbに対応している
・日本製のサイトコントローラーが導入費用○万円、月5000円から1万円に対して、導入費用ゼロ、月3000円くらいという圧倒的コストパフォーマンス
・サイト埋め込み予約ウィジェットの機能がある

Beds24の悪いところ
・コントロール画面やサポートが英語
・自力で導入するのが大変
・日系の予約サイト(楽天やじゃらん)に対応していない

ウチの場合、使っている予約サイトがAirbnbとbooking.comだったので、口コミの蓄積を考えてairbnbと接続できることがポイントでした。
また、平日のお客さんを増やすことを考えたときに、やはり外国人観光客がメインターゲットになるため、日系の予約サイトは捨てる方向性にしました。
別料金になりますが、サイト埋め込み予約ウィジェットの機能も魅力的でした。やはり自社サイトからの予約を今後増やしていくことを考えると、それも同時に一元管理することが必要不可欠になります。wordpressのプラグインが用意されているので、webサイトを1から作り直すことになってしまいますが、元々wixで作っていたサイトが無くなっても惜しくないようなレベルであること、wordpressの方がSEO対策として優れていることから、Beds24の予約ウィジェットを使うことに決めました。他社の予約ウィジェットだとそれだけで月○千円するので、かなりの節約になります。Beds24の導入を決めた時点で、そのあとの道筋が大まかに決まりました。

1.サイトコントローラー機能をBeds24を用いて導入し、業務の効率化を図る
2.管理を容易にすることでチャネル数を増やし、稼働率を上げる。
3.ホームページをwordpressで作り直し、予約ウィジェットを実装する。ブランディングとSEOで自社予約の割合を増やし、利益率を高める

というのが大まかな方向性になりました。4ヶ月でできるのはここまででしょう。

魂のサイトコントローラー導入

早速Beds24導入のために動き始めます。オーナーに月々こんくらいかかりますよ、でもこんなに便利になりますよ、と話し、ゴーサインをもらいます。オーナーが「新しいことをどんどんしよう、好きに変えていいよ!」というタイプなので、僕も存分にやりたいことをできるというものです。
サイトコントローラーで管理するにあたって、「人力でなんとなく割り振る」を言語化しシステムに落とし込んでやる必要がありました。オーナーと話し合って、どんな風に割り振るのがベストなのか考えます。


さあ、やってやろうではないか!と使い始めてみたのですが、なかなか設定が難しく、GWでお客さんが多くて忙しかったのもあり、結局サイトコントローラー機能を使い始めるまで2週間かかりました。
特に手間がかかったのが
・1つの部屋を個室としてもドミトリーとしても運用する設定
・接続のために部屋の販売方法を各チャネルで揃えなければならず、airbnbとbooking.comのページを新しく作り直す作業
でした。
やっと繋いだ!と思っても、airbnbで思ったような設定ができておらず、同期がうまくできなかったり、想定の半額以下で売り出されてしまったり、とトラブルが発生しまくり、2日くらいはairbnbのサポートチームとBeds24のサポートチームにお世話になりまくりました。Beds24はもちろんのこと、airbnbも日本のコールセンターにかけても外国人が英語で対応してくることがほとんどだったので、拙い英語で意図を伝えるのが大変でした。というかairbnbは日本語を話せる人をサポートセンターに増やして欲しい。
副次的な作用として、airbnbとbooking,comのページを作り直したことが幸いしたのか予約が急増し、他の予約サイトへの掲載を増やす必要は無くなりました。あまり予約サイトを増やすと口コミが分散してしまい効果が薄くなってしまうので、この副次効果はありがたいです。

(写真を取り直して張り替えました。今のところのキービジュアル的な)

これからの仕事ーブランディングをどうすべきかー

サイトコントローラーを導入したことで、新しいことを始める余裕ができたというか、基礎的な基盤ができました。いよいよ次のフェーズとしてwebサイトを作り直す、という所に入って行きますが、問題になるのが「そもそも楽庵の価値ってなんなんだっけ?」というのがオーナーも僕もピンと来ていないということ。
当たり前なんですが、商品を売ろうという時に何が訴求ポイントなのかをわかっていないと、売り込みなんてできるわけないですよね。現状は観光客が増えて市場環境がいいから適当な予約サイトでもお客さんが入っているだけであって、価値の明確化は生き残りのために必要不可欠だと思っています。楽庵で提供するコンテンツそもそもの見直しも含めて、どんなお客さんを想定しているのか、どんなニーズに応えていくのかを言語化しないと、ただの1泊3千円の安宿として認識されてしまうことになります。
この作業はブランディングそのものだと思っていて、コンセプトを明確化し提示することで、一貫性のある企画やデザイン、運営ができると思っています。
今の所、「親戚のおじさんちに泊まる」が一番近いかな、とは思っていますが、それがお客さんに刺さるかどうかはまた別問題。この辺の感覚はイマイチわからないので、市場の声をコメントでお寄せいただけると助かります!

アイデアベースになってしまいますが、縁側でカルピスを飲む、井戸でスイカを冷やす、流しそうめんをする、とかはやってみたいですね。

また、発信のツールとしてInstagramを始めました。早めに始めて定期的に投稿するのが大事なので、コンセプトに先立って運用を始めてみましたが、毎日こまめに投稿するのが性に合ってないので、投稿が滞りがちになってます。フォローしてもらえるとモチベが上がるので、とっても嬉しいです!

最高に働きやすい環境

この1ヶ月色々と考えたり行動したりしましたが、やっぱり働く環境が良いことが頑張れる大きな理由なのかなって思います。

1.お給料
利益ベースの歩合制の給料設定がかなり性に合っていると思います。お客さん増やした結果がちゃんと反映されるのが素晴らしいです。他のゲストハウスよりも相当待遇がいいので「こんだけもらってるんだから頑張らなきゃな」と思えます。

2.オーナーの人柄(企業風土)
個人事業主って保守的なイメージがあったのですが、うちのオーナーは「筆くんの好きにしていいよ!なんでも変えちゃって!」というスタンスなので、本当に経営者感覚で好きにできます。

3.オーナーとのコミュニケーションの頻度、毎日飯を食う
これが一番大きいかもしれません。オーナー家族と毎日ご飯を一緒に食べさせてもらっているので、毎日数時間はコミュニケーションが取れています。(ちなみに、火曜日と木曜日は僕がご飯を作っています。)お互いに信頼を形成できることは大事です。いくら自由にやらせてくれるといっても、訳のわからん人には任せられないですし、僕ももしオーナーが失敗を責めるようなタイプだったらここまで変えようとはしていないはずです。
意思決定のスピードが速いのも、毎日ご飯を食べているからこそです。毎日現状報告ができて、「これやっていいですか?」と直で聞けるのはかなり大きいです。

4.現場に住むこと
現場は大事といいますが、僕の場合ゲストハウスに寝泊まりしているので、お客さんの不満やニーズを最も吸い上げやすいポジションにいると感じます。トイレやシャワー、キッチンなどの設備もお客さんと同じ場所を使っているからこそ「調味料が足りない」とか「タオルがあったほうがいいな」「洗剤取りにくいな」と気づけます。また、ゲストハウスでお客さんとお酒を飲んだりして密なコミュニケーションを取れるので、比較的ホンネを聞き出せるのは大きな強みです。色んなバックグラウンドのお客さんと仲良くなれるのは楽しいですしね!

最後に:お客さんとスタッフ募集

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

もし楽庵に興味を持ってくださったら、ぜひ一度泊りに来てください。1人一泊3千円という破格の値段です。公式webかインスタのDMかnoteにコメントが助かります。泊りに来なくても、僕と会いたいというだけでも大歓迎です。noteのフォロワーさんも大募集してます。

8月から僕がいなくなってしまうので、後継者を募集中です。もし運営もしてみたいと思った方は、webサイトからお問い合わせください!

それではまた!


カツ丼食べたい