見出し画像

不思議な宮古島に触れてみませんか~「ぴるます話」を読んで~

宮古島、と聞いてどのようなイメージを思い浮かべますか?

画像1

「宮古ブルー」と称される鮮やかな青の海、温暖な気候、のんびりとした空気、マリンスポーツ、SNS映えする絶景スポット、海辺のおしゃれなカフェ。どれも宮古島の魅力です。

しかしそんな宮古島には、知られざる不思議なちょっと怖い一面があるのをご存知でしょうか。これからご紹介する「ぴるます話」(佐渡山安公著、かたりべ出版)を読めば、宮古島のイメージが少し変わるかもしれません。

画像2


私は先日、仕事で2週間宮古島に滞在しました。その帰りに宮古空港の売店で本著を見つけ手に取ってみたのです。この不思議な表紙に惹かれました。


「ぴるます」とは沖縄の言葉で「不思議な」・「珍しい」という意味があります。本著はその名の通り、宮古島の不思議なお話をまとめた短編集。宮古島で起きた、主に神やシャーマン(宮古ではカンカカリャというそうなので、以下そう呼びます)にまつわる不思議なお話が、宮古出身の民話研究者・写真家(本著プロフィールより)の佐渡山氏によってまとめられています。

宮古島で実際に起こった、開発工事やトライアスロン大会中の事故のエピソードも出てきます。そうした事故を予言するような、神からのメッセージがあらゆる形で伝わってきて…という不思議な霊的体験をした人の話が語られているんですね。


いわゆる「信じるか信じないかはあなた次第」的な説話集でもあるのですが…。なぜだか、私にとってこの本は単なる面白いお話集という位置づけでは終わらなかったんです。


それには、いくつか理由があります。私は霊感など全くなく、20余年生きてきて不思議な体験はほとんどしたことがありません。しかし、自分がそうした世界と縁がないからこそ化学で説明できない怪奇現象へのあこがれは人一倍あります。どちらかというと「信じている派」です。そうはいっても、かなり昔の話だったり遠い外国の話だとあまりリアリティは感じられませんでした。

画像3


一方、本著にまとめられたエピソードは、不思議なできごとが起こった場所や地名まで具体的に記されています。だから、すごくリアルに感じられるんです!今回の滞在では自分で運転して島を回ることも多かったので、地名や地理など何となく覚えてしまっていました。


観光で行っても普通に訪れるであろうスポット、たとえばあの有名なシギラリゾートのある「上野」という地域、飲み屋やホテルがたくさんある平良市内、観光ガイドブックに載っている宮古島市熱帯植物園、漲水御嶽なども物語の舞台となっています。自分が訪れた場所が出てくると、ぐっと引き寄せられてしまいました。

画像4


あと、本著の初版が発行されたのは1993年。思ったより最近だなと感じました。本著にはカンカカリャの一人である比嘉トヨさんのお話も収録されています。カンカカリャとは霊能者のことで、神の意志を代弁する役割などを果たす人のことです。宮古島をはじめとする南西諸島では、古くからカンカカリャ(シャーマン・ユタともいう)の文化があります。


カンカカリャは、「自分でなりたいからなります!」というものではなく、あるタイミングで神に選ばれることでなるもの。拒否権はなく、いわば宿命のようです。カンカカリャになるときは、急に体調が悪くなったり何か大変なことが起きたりして、それが合図らしい…。ちょっと怖いですけどね。


こうした話は、大学で琉球文化の授業をとっていたのでうっすらと知っていたのですが、正直かなり前の話(下手すりゃ戦前)だと勝手に思っていたので、平成初期にこうした本が出版されていたということに少し驚きました。


その授業のなかで、こうした信仰は年月とともに薄れてきているが、なかでも宮古島では特に神に対する信仰があつく、未だにカンカカリャがいるという話を先生がしていたのを思い出して「このことか!」と合点がいきました。すごくリアルに語られているので、宮古のカンカカリャ文化について興味があった・知りたいという人にもおすすめの一冊です。


あと、お話にもよりますが口承の文体をとっている話が多いのもリアリティがありました。宮古の方言(沖縄の方言とは全然ちがいます!)が出てきたりして、本からあのムッとした南国の空気感が漂ってきてすごく生々しいんです。宮古のおじい・おばあに本当に語り掛けられているような気分になってしまいました。

本著は、私が調べた限り現在はAmazonなどネット通販では販売されていませんでした。かたりべ出版HPによると、主に沖縄県内の書店などに置いてあるようで、直接の購入申し込みもできるようです。
http://kataribe-book.sakura.ne.jp/

画像5

巻末には宮古島とその周辺の島の地図がついています。お話と照らし合わせながら読むとわかりやすかったです。

「ぴるます話」は、ちょっとディープな宮古島に触れられる一冊です。これから宮古島に行くという方や、行ったことがあるという方にもおすすめ。宮古島リピーターの方も、宮古島の新たな一面が感じられるかもしれませんよ。

画像6


伊良部大橋が開通したり、3月に新たに下地空港の旅客ターミナルが開業予定と開発ラッシュの宮古島。コンビニもスーパーもドラッグストアもしまむらも何でもありますが、つい最近、いや今でも「ぴるます話」に出てくるような不思議な出来事がこの島では起こっているのかなと思うと、何だかドキドキしてしまいました。


編集:円(えん)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?