マガジンのカバー画像

小説

2
運営しているクリエイター

#コラム

小説 金木犀が香るとき

小説 金木犀が香るとき

                1
 目がぼんやりと開いていき、だんだんと天井の木目にピントが合っていく。何年か前から目覚まし時計は持っていない。精神科から処方された睡眠薬を飲むようになってからは薬が切れると目が覚めるので、薬を飲む時間さえ考えておけば、寝坊することは無いし、その上職業上、大事な用事でもない限り少々の寝過ごしは許されるので目覚まし時計が無くて困ることは何もない。
 ベッドから起き上

もっとみる