楮(こうぞ)の産業分類【前編】
そもそも楮という植物が栽培されていることすら知らなかった私。生産現場に飛び込んでから初めて知ることがたくさんありました。今回は楮の生産加工がどんな産業として位置付けられているのか、実体験を通じて感じたことをご紹介します。
林業?それとも農業?
最初の疑問はそもそも、楮って林業なんだろうか、それとも農業なんだろうか、という点でした。
林業には木材生産以外に、特用林産物という分類があります。山林から生産される産物のうち木材以外のきのこ類、木炭、竹、桐などの産物をさします。同じく大子町で生産される漆は特用林産物扱いですし、当然、私は楮は特用林産物の扱い(=林業)だと思っていました。
日本特用林産振興会のホームページには和紙の原料としてコウゾ・ミツマタ・ガンピやトロロアオイが紹介されています。
ところが、そこには小さな小さな文字の注釈でこう書かれているのです。
なんと!
いつの間にか林業から農業に変わっていたようです。この注釈に気づかずに未だ林業扱いしている自治体もありますし、ややグレーな気がします。でもここではひとまず農業として理解することにします。
「農」=「食」は正しい?
まず結論から言うと、楮は農業の作物の中で「工芸作物」というジャンルに分類されます。「は?、何それ?」って思いますよね。
そもそも「農業って、野菜や果物以外にもあるの?」という疑問を抱くかもしれません。
「畑で採れるのは野菜」あとは「畜産の牛乳とお肉くらい?」と冷蔵庫の中を頭の中に思い浮かべつつ、農業に対するイメージを「農業イコール食」という風に捉えるのがごく自然だと思います。
現に検索エンジンで調べてみても「農」と「食」という2つの言葉は対で使われるシーンの多いこと多いこと。この結びつきが強すぎて、まるでそれ以外の農業が存在しないかのような扱いです。それだけじゃないんですよー!
衣食住のうち「食」の比率が圧倒的に多くなるは致し方ない理。毎日毎食お付き合いする切っても切れない存在であるのはわかる!。でも「衣」や「住」を担っている農業があることも忘れないでいて欲しいなー。
なぜかと言うと、製造業出身の私は『資源』という観点や文脈から、植物を取り扱いたいと思っているのです。だからこの点を敢えて主張したいのです。
工芸作物とは
では実際にはどんなふうに分類されているかみてゆきましょう。まず、作物は大きく農作物と園芸作物の2系統に分類されます。
ちょっとわかりづらい説明ですけど、ここでは2種類あるってことを押さえておきます。さらに農作物の分類は以下のように分かれています。
①食用作物
②飼料作物
③工芸作物
④緑肥作物
①は人間が食べるもの、②は家畜が食べるもの。うんうん、わかりやすいですよね。1個飛ばして④は畑の土を改良する作物のことですが、これについてはまた別の機会に触れようと思います。
問題は③の工芸作物。その説明は以下のとおりです。
うーん何じゃこれは。ますますわからん。
工芸作物はさらに分類系統があるのでそれをみてゆきましょう。
なんとなく見えてきたかな。工芸作物とは、衣食住の目的は問わず、二次産業の原料という位置付けになりそうです。直接家庭で消費される(BtoC)ではなくて、工場に運ばれるもの(BtoB)。工業的な加工プロセスを経て、別の製品が最終的に消費者に届きます。以前の記事で、製造業において消費者に繋がりが見えにくいと問題提起しましたが、「衣」や「住」の作物は消費者と直接つながらないため、まさにここに該当してしまうのです。
ちなみにFAO(国連食糧農業機関)の分類では、嗜好作物・穀類・繊維作物・飼料作物・果樹・油料作物・芋類・糖作物・野菜とざっくり目的別にフラットの階層で9種に分類されています。
【後編】へつづく
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