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おプロの話2

第二章 おプロというお仕事


「おプロに会ってみませんか?」

 マーガレットからそう言われたまんじろうは、目をまん丸にして泡だらけになったマーガレットを見た。その泡はさっきよりもふわふわで粒の丸さが一目で分かり、その泡にまんじろうのきょとんとした顔がうつりこんでいる。

「私の知り合いにお風呂のプロ、つまり『おプロ』がいるんです。まんじろうに会わせてあげたいと思ったのですがどうでしょうか?あら?まんじろうもお風呂入りますか?」

 マーガレットは新しい石鹸からできたふわふわの泡を今度は湯船に浮かべ、お風呂に入る準備を始めている。

「お風呂は入らないけど、おプロの話は気になるかな!お風呂から上がったら聞かせてよ」

 まんじろうはマーガレットに手を振り、お風呂場の扉を閉めてその場を離れた。

 それからマーガレットが入浴を終えてぬいぐるみのみんなでご飯を食べ終えた後、2匹はホットミルクを飲みながら話していた。テーブルにはマーガレットが持ってきた「おプロ基礎」という本が開かれている。

 

 おプロとは、ぬいぐるみに多い「おふろこわい」「おふろきらい」という症状を始めとするお風呂の悩みを実際にお風呂に入りながら解決していく大事なお仕事です。そして……


 マーガレットはまんじろうに本を見せながら、おプロのことについてポイントを押さえて説明した。

「まぁ何となくおプロさん達がすごいぬいぐるみなのは分かったけど、ぼく自分のお風呂嫌いな理由が分かっていないし、そもそも説明するのがとても苦手なんだ。それに、お風呂に入れなくても今のところ困ってないから大丈夫だよ」

 まんじろうはホットミルクのおかわりにハチミツを入れ、スプーンでくるくる混ぜている。ホットミルクは真っ白からほんのり今日の夕陽を混ぜたようなキャラメル色になった。

「実はその知り合いのおプロさん、まんじろうの大ファンなんですよ」

 マーガレットから出た突然の告白にまんじろうは素直な声を漏らした。

「えー!僕のファンなのー?えへへ、嬉しいなー!一体どこが好きなのか聞きたくなっちゃう!」

 まんじろうはさっきまでとは違いうきうきしているようで、顔はニコニコ、垂れた耳はピコピコ動いている。

 ぬいぐるみの子たちの間ではまんじろうはかなりの人気で、特にぬいぐるみの世界に来たばかりの子たちからは「ぬいの世界に来たら一番最初にまんじろうに会いに行くといい」と言われている。

「それにいつもは忙しくて予約の枠も埋まっているそうなんですが、まんじろうに会えるならそれも微調整して待っているみたいです」

 マーガレットは先ほどまでまんじろうに説明していたおプロ基礎の本に、白くて柔らかいモフモフの右手をそっと乗せた。右手の先にはおプロの名刺が置かれている。

「このおプロさんはそばくんが住んでいるクチバシ町にあるおプロ場にいますよ。お昼から営業しているのでそばくんに会いに行った後でも、寄ってみてください。人参も用意しているようですし」

 まんじろうは自分がおプロに会って何をするのか忘れてしまっているようだ。先ほどから上の空でニマニマしている。頬は緩みっぱなしだ。マーガレットは何とかまんじろうがステップを一つ踏んだことにホッとしている。

「ぼく、明日行ってくるよ!そばくんにも会いたいし!」

 まんじろうはホットミルクを飲み終え、お出掛け用のポシェットに小物を入れ始めた。小さく丸いしっぽは、床に当たっていてもピコピコ動いているのが分かる。

 マーガレットはまんじろうのカップを自分のと一緒に台所へ持って行き、そのまま先に眠りについた。

 
第三章へ続く



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