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大きい泉、小さい泉

 7月に入ってすぐの日曜日、珍しい組み合わせのもふもふ二匹が体を寄せて何かを書きながら話していた。


 「まんじろう、どこの海がいいのか今日こそ決めよう!」

 「そうだね、ポンチョ!二人で行くのが楽しくて悩みすぎてるからね!絶対決めよう!!」

 どうやら海に行く計画を話しているようだ。まんじろうはポンチョが見やすいように頭の上に乗せて、海特集の雑誌を開いた。

 その雑誌には、おススメの海5選!やら、このグルメは外せない!やら、人間の見る雑誌と似たようなことが書いてあった。

 可愛いもふもふ達は行きたい所に赤いペンで印をつけている。

 やっぱり楽しむための準備も人間と似ているようだ。


 

 もふもふ達が話し合っているのをかいぬしが聞いていると、

 「ここの海に行く前に一回、泉に入っておかないとだよね!」

 と、ぬいぐるみの世界にある泉に関する話題になっていた。



 ぬいぐるみの世界にある泉、それは大きさを変えられる。大きくすることも、小さくすることもできる。

 まんじろう達は、ポンチョをまんじろうサイズにしてから海を楽しもうとしていたのだ。


 しばらくの間、楽しそうに話すもふもふ達をかいぬしが見ていると、どうやら予定が決まったようだった。


 「よし!じゃあ、これで決まり!!ポンチョ、忘れ物ないようにしっかり準備するんだよ!」

 「まんじろうも事前に泉の管理ぬいのともぞうさんへの連絡、忘れないようにね!!」


 お互い注意事項を確認しあい、今日の話し合いはこれで終わるようだった。

 かいぬしはひとつ気になることがあった。それは泉の名前。


 さすがに毎度「大きくなる泉」とか、「ともぞうさんの泉」などと長い名前で呼んではいないだろうと思ったかいぬしは、まんじろうに聞いてみた。




「ねぇ、まんじろう。その泉に名前ってあるの?大きくなる泉と、小さくなる泉。ちょっと気になるんだけれども。」

 すると、まんじろうは自慢するような顔でかいぬしを見た。

 「実は泉の名前、みんなで決めたんだよ。確か投票だったかな。かっこいいよ!」




 ずいぶんともったいぶる、まんじろう。そんなにかっこいい名前なのだろうかと、かいぬしは期待が高まっていた。


 「では、発表します!!!」その声と共に、まんじろうとさっきまでいたポンチョが手持ちホワイトボードを持ってやってきた。ずいぶんと本格的だ。



 「大きくなる泉、その名前は、おおいずみ!!!」まんじろうが手持ちのホワイトボードをくるっと回した。そこには漢字で「大泉」と書いてある。まさか…


 「続いて小さくなる泉、名前は、こいずみ!!!」ポンチョもまんじろうの真似をして手持ちの小さいホワイトボードを見せる。そこには、やはり予想通りの「小泉」の文字があった。

 


 かいぬしは、この漢字達がまさか、泉のサイズをそのまんま表していること、 さらに、人の名前に使われていることをぬいぐるみ達は知っているのだろうかと思っていたのであった。

 


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