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夫のこと。~劣等感が見えない不思議~

#20240621-420

2024年6月21日(土)
 結婚して12年。
 出会ったときからちょっと不思議だったが、今日まで一緒に暮らしてなお変わらず不思議なことがある。
 夫(むーくん)から劣等感を感じないのだ。

 夫の子ども時代の話を聞くと金銭的に恵まれておらず、我が家は中流家庭だと思っていたが、それ以上だったのかもと感じる(上を見れば、きりがないが)。共働き家庭で、親からの愛情がなかったわけではないが、親が子どもに手を掛ける時間はかなり少なかったようだ。ある意味、自由に過ごしていたと夫はいうが、学校の勉強はできるほうではなく、親も気掛かりではあっても見てやる時間もない。そうかといって、学習塾に通わせる余裕もない。
 運動神経は悪いほうではなく、陸上やサッカーを楽しんでいたという。両親がスキーを好んでいたこともあり、都内在住ながらもスキー場には頻繁に通っていたと聞く。一時期雪国に暮らし、冬の体育の授業はスキーだった私より夫ははるかにうまい。
 幼い頃から鉄道好きで、それは現在まで情熱を持ち続けている。

 夫は私と結婚してから体験したことが山ほどある。
 その度に新鮮に驚き、喜ぶので誘いがいがある。「こんなものがあるなんて知らなかった」と夫は笑い、決してひねくれた物言いをしない。
 私も劣等感が弱いほうだが、これは育った環境が大きいと思っている。
 苦手なことももちろんあるが、得意なこともある。
 劣等感も嫉みを帯びなければ、目標やバネにもなる。
 使いようだ、決して悪いものではない。

 友だちとのお喋りのなかで、夫が抱く劣等感が話題に挙がった。
 自覚しているのかわからないが、彼女が夫の劣等感と思われることに触れると不機嫌になるという。

 「むーくん、劣等感ってある? 内容を知りたいわけじゃないから、あってもいわなくていいけどさ。出会ってから今までむーくんを見てたけど、あんまり感じなくて」
 改めて、12年変わらず抱いていた疑問を夫に投げてみた。
 「劣等感・・・・・・?? コンプレックス???」
 のどかな顔で夫は首を傾げている。
 「うん。人と比べて劣っているなぁ、という気持ち。うらやましがって卑屈にならなければ、バネにもなるし、悪いもんじゃないんだけどね」
 夫はじっと宙を見つめて考えている。
 「よくわかんねぇー」
 実は劣等感を抱いていることがあるが、隠しているわけではなさそうだ。
 純粋に思い当たらない顔をしている。
 「うまくいかないときは、巡り巡って、いつかの何かになるんじゃないかと思ってる」
 他者との比較があまりないようだ。
 「それに、憧れる人は一番近くにいるし」
 夫のすごいところは、こういうことをさらりというところだ。
 「はっちゃんみたいになりたい。はっちゃんみたいに世の中を見てみたい」
 私はぶつぶつとあれこれ考えて、それをまたぶつぶつとあれこれ夫に話しているに過ぎない。自分の視野の狭さや気付きの鈍さ、考えの浅さに唸っていることが多い。
 くすぐったくなって、思わず笑ってしまう。
 やっぱり夫はちょっと不思議だ。
 わからないからこそ、知りたくなる。

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