ONLINEアートワークショップ実践の肌感
UMUMとしてオンラインのワークショップを初めてまもなく1ヶ月。
いろいろ見えてきたので、備忘録をかねて書き留めておきたいと思います。
ファシリテーターの方や、講師や先生など場をデザインする方、オンラインコンテンツを作りたい方のお役に立つやもしれません。
UMUMでオンライン化したコンテンツは下記の通り。
<ワークショップ>
・UMUMおとなアトリエ...おとなを対象に、お絵描き&鑑賞会
・UMUMこどもワークショップ...こどもを対象に、アートとデザインの学習体験
・UMUMがっこう...8歳以上を対象に、こどももおとなも一緒にアート&デザインの学習体験
<研究会>
・UMUMアートラボbiz...アートとビジネスの研究会
・UMUMアートラボedu...アートと教育の研究会
<動画配信>
・UMUM ART TV...InstaLIVEとYouTubeにて、「おうちでアートを楽しむ方法」、「おうち学習TIPS」の二つのシリーズを公開。
<サークル>
・朝ドローイング会...noteのアトリエサークルメンバーのみなさんとの活動として、オンラインの朝ドローイング会(明日5/17から開始)
✴︎各リンクは終了したものもありますが、参考までに。
自分でもびっくりするくらい、いろいろ始めてる!笑
ほんとちかちゃん(弟子)いなかったら無理!笑
オンライン化前も多様なワークショップをやっていましたが、オンライン化することでコンテンツがさらに増えました。てへ。
(やってることとコンセプトは基本同じ。)
やってみてよかったこと(😃)、課題だと思うこと(🤔)を書き出してみます。
では1つづつ、いってみましょう!
1.UMUMおとなアトリエ
UMUMスタート時からずっと続けている企画。
「うまい&へた」にとらわれがちな大人の方を対象に、感覚のまま美術表現を楽しむことで感性を柔らかくしよう!というアートワークショップです。
前回の記事でも書いたとおり、何度か実験開催をすることですぐに実現することができた企画でした。
😃画面越しでも参加者のみなさんに会える
これは言わずもがな、ですが、ずっと会えなかった参加者のみなさんに会えたのはやっぱり嬉しかった!
😃画材のバリエーションを楽しめる
対面のワークショップではUMUMが用意した画材を使っていたので、オンライン化にあたり参加者のみなさんに画材準備をお願いするのはどうなんだろう...と思っていたのですが、意外にもみなさん画材をお持ちだった!そしてみんなバラバラな画材を使うことが「それは何で描いたの?」「そんな画材初めてみた!」などの会話に発展して結構おもしろい。
😃無音も味方
オンラインでつないだまま、15~30分の製作タイムをとる際の無音状態に心配もあったのですが、意外にも画材音が心地よく、ポジティブにはたらきました。
🤔情報が限られる
絵を描く、鑑賞するという行為をともに対面で行う時は、ものすごい量の情報量を交換します。絵の内容はもちろん、制作に向かう姿勢、表情、画材の選択、判断スピード、目線、手元の動き、呼吸などなどなど。
しかしオンライン化すると、デバイスの都合上描いている手元か、描いているご本人かのいずれかしかモニター上にはうつらず、かなり情報が限られます。作品もモニター越しなので、細かいタッチやディテール、正確な色味はわかりません。
解決策としては、鑑賞前にオフライン休憩をはさむ、できあがった作品写真を休憩中に別アプリに送信しておいてもらい、オンライン接続後ホストが画面共有してシェアする(Zoomチャット共有だとファイル化されてしまうのでめんどくさい)、可能なひとには手元と本人用に2つのデバイスで参加してもらう、など。このあたりはファシリテーションに大きく影響するので、今後も参加者のみなさんの負荷にならない程度に工夫して少しでも情報量を増やしていきたいな。
🤔コミュニケーションにコツがいる
モニター越しになると、お互いの音声(生活音含む)の存在感がかなり大きくなります。先にあげた情報量の減少も相まって、空気を読み合える対面時とは異なるコミュニケーションのリズムが発生します。端的に言えば、本題の横で雑談ができない。同調する声や相槌が時に発話の邪魔になってしまったりもする。音のコントラストがないという感じ。
それらの解決方法として、オンラインのコミュニケーションは対面時より時間を長めにとること。ミュート機能を駆使しながら参加者一人一人が順々に話す対話と、全員がミュート解除してざっくばらんなコミュニケーションタイムを分けることもコツ。
それ以外にも、意見を募る際に挙手制ではなくファシリテーターの指名制にしたり(もちろん指名された人がすぐ意見を言えるよう準備タイムはとる)、発話する人は相手の相槌や反応を待ちすぎず、対面時よりちょっと強引に話を続けるなどもコツかもしれない。
ワークショップを豊かにするのは、なんといってもコミュニケーションなので、ここはしっかり場のデザインにとりいれておかねばと思っています。
2.UMUMこどもワークショップ
続いてこどもワークショップ。こちらはオンライン化によって生まれた新しい企画です。おうち時間を持て余しつつも、学びの機会が減っている小学生に何か届けられないかと考えてつくりました。
ベースとなったのは、数年前に学童で実践した職業体験ワークショップ。(実践は裏切らない。)
今回はデザインの体験ワークショップからスタート!
😃オフラインとオンラインの組み合わせ
こどもの集中力が限られる時間の中で、より学びが深まるよう
オフラインで事前課題→オンラインで共有&対話→オフラインで制作→オンラインで発表 +LINEでフォロー
という流れで行いました。コミュニケーションをオンラインで、考えたり制作するのはオフラインで、という感じ。この組み合わせにより、おうちでの時間に目的意識が持てる、学びを日常に繋げられる、オンラインでの交流が飽きない、困ったことやデータ共有はLINEで補完!という相互作用が非常によかった!保護者のかたとコミュニケーションとりながら、こどもたちを見守れるのも非常にありがたかったです。
😃少人数なことで、丁寧に課題をつくりこめる
オンラインで特に体験重視のワークショップを行うには、圧倒的に少人数がおすすめ。参加者同士の対話の広がりを考えると3~5人くらいがベストかなと感じています。(それ以上はファシリテーターを2人いれ、ブレイクアウトルームなどを駆使できればいけるかも)
この少人数制により、事前課題の内容とオンラインでの対話から、その子一人一人の日常や感じていることを知ることができ、そこを起点になにをデザインするか一緒に考えるという丁寧なコミュニケーションができました。
その子の個性はもちろん、一人一人の日常の暮らしにもつながる課題制作ができたことで、こどもたちの中にしっかり残る体験になったように思います。
😃ビバ!デジタルネイティブ!
この企画に参加してくれた子たちは8~9歳。みんなびっくりするほどZoomに使い慣れていてびっくり。ビバ!
🤔🤔🤔そして、UMUMがっこうへ
このこどもワークショップを通して、「おや?これはこどもとおとな分ける必要ないぞ?」となって生まれたのが「UMUMがっこう」。
こども対象企画とおとな対象企画が合体したイメージです。
ここでポイントなのが、どの授業も「正解がない」こと。「正解がない」から、お互いの感性を対等にぶつけあうことができます。
扱うテーマも、デザインのほか、鑑賞、美学、自由表現など、こどももおとなも一緒に楽しめる内容を展開しました。
老若男女に伝わる内容をデザインするのはUMUMにとっても新しい試みであり、言葉の選び方や資料づくり、進行のペースなどまだまだアップデートできそうなところ多数だけど、いまのところお互いの個性がとても刺激的で、非常におもしろく、参加者のみなさんにもご好評いただいております!(きらーん!)
こどももおとなもミックスすること、評価や正解のない学び、そして少人数性によって日常に結びつけながら考え作ること。これらは、公教育ではなかなかできない学習体験だなあと思い、日々わくわくしております。
3.アートラボbiz&edu
「アートとビジネス」「アートと教育」二つの研究会。
基本的な内容は対面時と変わらないものの、オンラインでは積もる話もたくさんあってレクチャーやセッションがメインになっています。
具体的には、オンライン化する場創りや、コロナ禍でのアートの価値などを取り上げています。
😃全国から参加者の方が集まる!
これはどの企画も共通ですが、オンライン化したことで全国から参加してくれる方が増えました!関東はもちろん、大阪、島根、岡山、広島、沖縄、さらには海外からも!おかげで対面時には見えてこなかった教育や仕事などの地域性や、参加者の方の職種の幅もひろがったように思います。オンラインすごいなあ。
🤔「なんのための時間なのか」という設定
これはさきにあげたコミュニケーションのコツとも重なりますが、特に対話が多く、扱うテーマの抽象度が高い研究会では、その時間が「なんのための時間なのか」と意識的に本題に戻す進行が大事。これは対面の時と違って、オンラインは時間が非常にシビアであることにも起因します。
一方で意見交換もかなり大事なので、チャットやホワイトボードなどの情報共有ツールをうまくつかっていきたいところ。他アプリの連携も選択肢としてはあるけども、デバイスへの負荷も心配でまた実践していません。
いずれにせよファシリテーターの、情報の取捨選択がかなりものを言います。
🤔長時間のオンライン接続疲れ
研究会はいつも3時間ほどで開催しており、Zoomの時間制限もあって40分ごとに休憩をはさんでいます。いつも内容が濃いのであっという間なんだけど、とはいえ4部構成だし、3時間もモニターを見続けているのは参加者のみなさんもさすがに疲れるかなとも思っております。これは工夫でどうにかなるかなあ。むー。
4.動画配信
YouTubeとInstaLIVEで配信中のUMUM ART TVも、今やUMUMのだいじなコンテンツのひとつとなりました。
オンラインでは集中がもたないちびっこや、忙しい親子、こどもの現場にたつ方、製作遊びのネタ切れに悩む方に役立つ情報を!と始めた「おうちでアートを楽しむ方法」。
自宅学習が一気に増えたこどもたち(保護者)の役に立ちたい&自分の周りの教育関係者と今だからこそ改めて話したいとはじめた「おうち学習TIPS」。
更新頻度は毎日とはいきませんが、週に1〜2本のペースで配信しています。ありがたいことに一つ目の動画は投稿してから3週間で600回再生にとどきそうな上、先日チャンネル登録数も100名を達成しました!YouTubeってすごい...
😃動画配信の発信力
これはずっとコロナ前から頭ではわかっていたし、やらねばと思っていた理由でもあるんだけど、実際やってみると本当にすごい。Google検索でかなり上位に出てくるし、YouTubeを見てUMUMを知ってくれた方も増えているし、反応が顕著にわかります。こちらからはリアルタイムでわからなかったけど、動く田中を画面越しに見たちびっこたちもなかなかいい反応をしてくれたと保護者さんからの連絡もあったり、うれしい限りです。
😃意外と楽しいInstaLIVE
YouTubeの撮影はカメラに向かって一人で話すだけなので、緊張がまだまだ抜けませんが、InstaLIVEは文字だけでも参加者のかたの反応をもらえるので楽しい!リラックスしてのぞめる自分に気づき、あらためてみなさんの反応ありきの自分なのね、と実感しております。
😃意外と楽しい動画編集
めんどくさいと思っていた動画編集も、流れがわかれば結構たのしい。とくに元動画のいらない箇所を見極めて、ガシガシけずって、だんだん細部の調整に入り、全体を意識して文脈をつなげていく作業は、なんとなく美大時代に学んでいた彫刻を彫る作業に似ていてやりやすかったりしています。ここでも役立つクリエイティブ魂!
🤔自分のエンターティナー性不足
これは完全に自分の問題なんだけども、やはり動画となるとエンターティナー性をもっと身につけたい!画面の自分、動きが少ないわ、しゃべりが単調だわ、さらに喋り方があほっぽい、あごが出る、猫背、など言い出したらキリがないほど自分の嫌なところと向き合わねばならない...。日々心を無にして編集に望んでいます。(アップデートできるかなあ)
🤔発信役/聞き役の切り替え
自分が情報を発信する立場の「おうちでアートを楽しむ方法」と、様々なプロにインタビューをする聞き手としての「おうち学習TIPS」。必要な情報をわかりやすく順序立てて話す、相手の意図を汲み取りながら進行していく、などいずれもこれまでのファシリテーションとはまたちがう能力が必要だなと感じます。まだまだだけど、努力し甲斐がありそう。
そして結果としてファシリテーションに活かせそう。
5.全体をとおして
だだだーーっと書いてみたけれど、最後にすべてのコンテンツに共通していることも書いておきたいと思います。
😃&🤔 情報の整理
飽きやすい、集中が途切れやすいなどの特徴があるオンラインは、対面時よりいろいろシビア。
限られた時間、限られた情報の中で、いかに学びや体験を豊かにするか。そのためには「なにを持ち帰ることができる体験なのか」「余計/重複した情報はないか」「どの順序が一番スムーズか」「参加者の顔ぶれと内容のマッチングはどうか」などの情報の整理が必須だと感じます。
そのためwsデザイン、言葉選定、そして事前のイメトレに時間をかけています。
逆に言えば、対面より開催時間が短くても、移動や画材などの物理的価値がなくても、体験そのものの価値を高めることができるかもしれない。
うおーー!がんばる!
😃&🤔 try&errorがしやすい
とはいえ、オンラインは場所代もかからない、第三者を巻き込む場面も少ない、という意味では非常にtry&errorがしやすい!アイディアを形にするチャンスとも言えます。
わたしもアプリの操作練習もかねて、何度も実験しました。
身内だけでもいいし、少人数でもいいので、ぜひ場創りなどアイディアがあるかたはこの機会に挑戦してみてほしい!
やらない理由はいくらでも作れますが、個人の能力や発信が確実にしやすく、認められやすくなっている今、意外と自分が当たり前にもっていた情報や経験、思考が価値になったりするかもしれません。
😃&🤔 ファシリテーション能力のアップデート
文中でも書きましたが、最後にまとめてもう一度。
限られた情報を汲み取りながら、シビアにタイムキープをしつつ、アプリの操作もしつつ、情報の取捨選択をしながら、オンライン独自のリズムやコツがいるコミュニケーションをハンドリングしていくオンラインでのファシリテート。(ざっと書いても息切れしそう...)
はい。ファシリテーターはかなりアップデートが必要です。
とくに田中個人的に「ハンドリングしてる感のないハンドリング」(これを書き始めると記事一本分になりそうなので詳しくは割愛します)を目指しているので、まだまだもりもりアップデート中!!精進!
🙏電波が命
なんにせよ、オンラインでは電波が命。これはもうファシリテーターの努力ではどうにもならない生命線。
回線が不安定だったり、デバイスがいっぱいいっぱいの時は、焦らず、イラつかず、そっと天井をみあげて一呼吸し、受け入れる。そして3秒待っても改善されない場合は、作戦Bに切り替えましょう。(そのために、チャットのこまめな保存や再接続できるURLの事前アナウンス、他アプリケーションで参加者とコミュニケーションできるようにしておくなど作戦Bを用意しておくことも大事)
ファシリテーターの焦りは、あたたまった場を一気に冷ますことになりかねないので、あくまで冷静に。
ということで、5/17時点のオンラインワークショップについての肌感でした。
教育の価値はもちろん、アートの価値、コミュニケーションの価値もどんどん変わっていきそうだな。
対面を再開したときの、企画の整理が今は目下の課題です。
挑戦はまだまだ続く!
おまけ
ZoomのPCでの使い方をまとめました👇
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