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わたしのコロナ禍の変遷(備忘録)

日本政府が休校要請をだした!
カンボジアの宿の、貸し切り状態の寂れたプールで
ネットニュースを見た時
「ワークショップを自宅訪問にしよう!」と
ワイン片手にその構想をメモしていました。

あれから2ヶ月。
自分の生活はもちろん、仕事、ものごとの価値、役割。
いろんなことが目まぐるしく変化しました。

こんなこと、そうそうないであろうと思うので、備忘録も兼ねてこの数ヶ月のことを書いておきたいと思います。


2月:まだ「海外」のこと

「中国でコロナウイルスがすごく流行っている」という報道が流れていた2月中旬。
家族に「大丈夫なの?」と心配されつつも、アルコール除菌シートとマスクを滞在日数分バックパックにつめて、昨年から予定していたベトナムとカンボジアに毎年恒例の研修へ。
マスク着用の人が増えたコト以外、いつもと変わらない様子の成田空港から、ベトナムに到着。
ベトナムは当時から危機管理が徹底されていて、国内の学校(幼稚園、小、中、高、大学、インターナショナルスクールなど)は旧正月からずっと休校になっていました。
これにより予定していた見学もすべてキャンセル。
大きな観光地もほとんど営業休止しており、大きなスーパーやモール、ホテルの入り口ではアルコール消毒と検温が徹底されていました。
バイク文化も相まってみんなマスクをしていたけれど、それでも街中には人が沢山いました。
こどもだけで外出が難しいホーチミンの街(バイクが行き交う量が半端ない)は休校措置によって、こどもたちの遊びが制限されまくっていたことから、ホテルでアートワークショップを行ないました。

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画材も全て現地で調達したため、かなり勉強になったし、保護者の方がすごく喜んでくれた。(このリポートはまたおいおい)

結果、なかなかよい研修旅行になった!とほくほくしながら、旅の後半に訪れたのはカンボジア。
この時期、日本含めさまざまな国で入港拒否されたクルーズ船を、カンボジアが受け入れたという報道がありました。
そんな国の政策のままに、プノンペンの街の様子は緊張感もなく平和そのもの。
美大も見学できたし、カフェではお姉さんがにこやかに接客してくれたし、韓国系企業が新しい店舗をどんどん作っていたし
暑い中、日々マスクをし、食事の前にはアルコール除菌を徹底していましたが、意味あるのかな...?というテンション。
しかし、旅の最終目的地、アンコールワットがある観光地シエムリアップでコロナによる影響を実感することになります。
世界の観光業を支えているといっても過言ではない中国人観光客がまったくいないことにより、本っっっ当に、どこにいってもガラガラ。町中のホテルや飲食店だったであろう建物には「FOR RENT」の張り紙が貼られ、宿泊していた宿も私達が最後のお客さんでした。
混雑がないことで個人的には観光や滞在はとても心地よかったものの、毎晩宿で開催されていたダンスのステージはお客さんが0人になり、ついにステージが解体されはじめ、宿から運びだされていく備品と、洗濯されない部屋のタオルを横目に、コロナウイルスによる雇用や経済への打撃を実感。

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そして2月27日、日本もついに休校要請を発表。
日本もついにきたか。
帰国したらワークショップを立て直さなきゃ。
でも、きっと工夫さえすればどうにかなるだろう、と思っていました。



3月:新しいやり方探し

シエムリアップの空港のモニターは、中国経由便が全て欠航となりcancelledの文字でいっぱい。

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タイ経由で到着した成田空港はサーモグラフィチェックが導入された程度で、意外にもすんなり帰国できました。
念のため2週間は自分の体調を意識して過ごしましたが、特に症状は出ませんでした。

しかし、もはや中国だけでなく、世界中で猛威をふるうコロナウイルス。
日本では「三密」回避のメッセージと、自粛要請が日々繰り返されるようになりました。
行政管理の会場から、自粛依頼、コミュニティプログラムの中止、会場閉鎖、とUMUMのワークショップ会場もどんどん利用できなくなりました。

予定していたワークショップの参加者に中止と謝罪の連絡をする日々。
それでも、ベトナムで感じた「こどもたちのストレスや、人が憤って行く空気を表現の場で解消できないか」という想いから、屋外開催や自宅訪問など感染対策を講じながらの開催準備をしました。
UMUMが一番大切にしている、感性による自己表現をどうしてもオンライン化するイメージがもてなかった。
屋外スペースのある会場をさがし、定員を減らし、会場が見つかれば、カンボジアで手に入れたアルコールジェルを持って晴れた日に開催。

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高知県から、弟子が上京し
できる企画を手伝ってもらいながら
ーみんなはどんな生活&肌感なんだろう?
ーみんなはいま何を求めているんだろう?
ーいつ、どこで、どんな対策をしたらいい?
と、アンケート集計を繰り返しました。

それでも状況は刻々と変化し
日に日に休校を決める学校が増え
芸術講師をしている保育園や幼稚園の新年度授業も延期。
リスケ、リスケ、リスケ。
手帳をこんなに書き直したことはなかった!
アンケートも危機感を感じる回答率が増え、「屋外をやってほしい」より「お家時間を楽しめるコンテンツがほしい」という声が増えました。

唯一指導員兼芸術講師をしていた学童だけは忙しくなり
わたしも外出は学童の出勤だけになっていきました。
こどもたちが一緒にあそぶ学童の環境で
三密回避は相当難しいぞ...
国の政策に疑問を感じていたなか
志村けんさんが亡くなられます。


4月:オンライン化を決心

「おうち時間」という言葉があちこちで見られるようになり
暇つぶしや精神衛生を兼ねて、アートの価値が見直されると同時に
世の中にリモートワークやテイクアウトなど「オンライン化」の波がどどどっと押し寄せていました。

UMUMではついに会場が全て利用中止となりました。
仕事仲間や友人との状況報告を兼ねた連絡や
参加者のみなさんのアンケート回答
志村さんの死去
そして緊急事態宣言により
私も「うつされたくない」から「うつしてはいけない」マインドになり
「もうオンラインしかない」と腹をくくります。

UMUMのアートラボbiz(アートとビジネスの研究会)メンバーのfbグループは
いかに自分の事業をオンラインに切り替えて行くか
世の中はいまどんな価値を求めているのか
アートの在り方が変わっているのではないか
などの話題で日々盛り上がり
実験的にzoomで繋がってみること数回。
やっぱりコミュニケーションってだいじだ...!
オンラインでもこういう場は作って行く価値がある!
と実感。
アプリや配布資料の準備、リテラシーの差をいかに縮めるかなどの情報収集や、実験開催を経て、オンラインワークショップの骨格がみえはじめました。
私よりはるかにデジタルネイティブな弟子が伝えてくれる、いろんなアプリの使い方や可能性もあいまって、SNSも積極的に活用。
今更ながらクラウドも導入し、その便利さにおったまげ
スマホ、ノートPCをフル活用して
既存のアートラボbiz、edu、そしておとなアトリエはなんとかオンライン化できる兆しが見え始めます!

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でも、UMUMでもっとも開催頻度の高い「こどもアトリエ」が一番の悩みどころでした。
一番多い年齢は3~6歳。
オンラインで一定時間、集中し続けるのは難しいけど、アンケートによれば外出自粛で遊びや学びの機会は確実に減っており、保護者も悩んでる。

かれらが表現を楽しむには、どんな企画を届けたらいいんだろう???

そこで行き着いたのが、YouTubeの動画配信でした。
そう、ついに私もYouTuberデビュー!
(同じタイミングで、YouTube大好きだった私のだんなさんも、まさかのYouTuberデビュー)

家で眠っていた一眼レフ、三脚、さらにデスクトップなど
作業部屋にみるみるガジェットが集結し、あまり初期投資せずに設備がそろったのもおどろき。(購入したのはマイクくらい)
対面じゃなくても伝えられるものは何か?を日々精査していたことで、発信内容のコンセプトや内容もスムーズにかたまっていきました。

...でも、甘くなかったYouTube!
ワークショップで初めましての方と交流するのと
なんのリアクションもないカメラの前で、1人でしゃべるのとは全然ちがう...!
しかもカメラとか苦手...!!
カッチコッチにかたまりまくり、数えられないくらいテイクを重ね、弟子にダメだしされ、無常にも暮れていく太陽に焦り、半泣きになりながら丸2日かけて初回の撮影を終了。

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え、これ続けられるのかな...
改めて、YouTuberのみなさんを尊敬しました。

ガチガチの動画でしたが、意外と編集は楽しくて
夢中で作業して、動画が完成!

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i movieをいじったことがあったり
フォトショやイラレの基本的な操作ができた自分、改めてエラい。
そして意外にも、公開すると
参加者のこどもたちが、モニター越しにしゃべる私を喜んでくれたり
実際に描いた絵を写メして送ってくれたり
コメントのほか、再生回数が想像以上にのびたりと
沢山の反応をもらうことができました。
....なんか、伝えられてる!

ひさしぶりに感じる、たくさんのひとの表現と、表現を介したコミュニケーション。
そしてカメラ越しとはいえ、不特定多数の方への発信は背筋がのび、UMUMのアクセルは全開に。
オンラインで届けられる小学生を対象とした、観賞やデザインのワークショップもうまれました。
SNSの更新に、動画の撮影&編集&公開に、オンラインワークショップの準備、開催、運営にと、ここにきて、大忙し。
毎日があっという間にすぎていきました。

生活面では、週1程度の学童以外は無収入。
だんなさんは、もう一ヶ月無収入でした。
東京都の協力金や国の給付金はもちろんチェックしましたが
もともとフリーランスで働いていたためか、安定的な収入への依存がない私。
これはかなり精神的な安定につながったと思う。
外食はひかえつつも、食べたいものは食べたし
買いたいと思ったものを我慢することもなく
動物たちとすごす家での時間は大好きだし
生活面のストレスは全くなかった。
そんなわけでワークショップも、お金のためというより
「こんな時だからこそ(精神衛生をたもつ)アートの力を伝えたい」という野望が原動力でした。
そのため、新しい方法を導入しつつも、コンセプトがぶれずに企画をつくることができました。


5月:価値を再考する

GW最終日までだった緊急事態宣言が更に延長し
5月いっぱいも引き続き対面はできないな、といういま。
対面時は1ヶ月前に出すようにしていた企画の告知も、今は2週間ごと。1ヶ月先なんて何もわかりません。

最近は「〜〜まで」という期間を想定した構想より
どんな状況になっても届けられる、普遍的な価値を追求するようになりました。
企画も現在進行形でブラッシュアップ中で
これまで対象を分けていたこども、おとなを合体した企画にしたり
アートとデザインを体験学習として新しい層にもアプローチしたり
オンライン化によって地域を超えたコミュニティづくりの可能性を感じたり
コロナがきっかけにはなったものの、やりたくて手がついていなかったことにも着手でき
企画もより本質的な方向になっている気がします。

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生活面でも現金ではなくスマホ決済できるようになったり
プライベートな交流もオンライン化したり
曜日の感覚、移動の手間、身に付けるものへの感じ方が変わったり
冒頭に書いたように、色んな物事の価値、役割、そして常識が変化しているんだなあと感じます。

くるぞくるぞ、でも実際いつくるの?の情報化社会の加速が
まさかウイルスによってもたらされるとは。
こんなに早く「正解がひとつじゃない」世界が訪れるとは。

この加速はどんどん増してゆくだろうし、そうなれば個人の力がものをいう時代になっていくのだろうと予想しています。
正解がない世界で、自分の正解は何かを問い、考える力。
周りを観察し、情報を整理して判断する力。
そしてそれを伝えたり表現したり形にする力。
どれもアートの世界でクリエイションをするときに、大切な力です。

だからこそ、それらの力を育めるアートやデザインの場をつくりたい。
「人はみんな違う生き物で、その違いはすごく面白い」そんなものの見方や考え方があれば、今現在起こっているような状況がきても、きっとそれぞれが自分の人生を充実させながらサバイブして行ける。

そのためには、自分自身の感性と能力を磨く、日々の努力を続けて行かないとね。
時間はたくさんあるんだし。

ああ、カンボジアにいた2ヶ月前が、海外にしょっちゅうでかけていたことが、まるで夢みたいだなあ。

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ふりかえってみて、思うこと

こうやって振り返ってみて思うのは
ありきたりな言い方になってしまうけど
人のご縁、そのありがたさ。

この状況下で自分のできることを考えるきっかけになった、ベトナムの友人とカンボジアで出会った人々。
帰国後、様々な情報を惜しげもなくシェアしあい、実験につき合ってくれた友人やアートラボbizのみなさま。
そして、アンケートに協力してくれたり、会場をぎりぎりまで使わせてくれたり、実験開催に参加してくれたりと、UMUMのトライアンドエラーをあたたかく見守って下さったみなさま。
この方々がいなかったら、わたしは自分のアイディアをかたちにし、ブラッシュアップしていくことは出来なかったと思う。
そしてそして、この状況下でもそれまでの安定を捨てて上京し、わたしに付き合ってUMUMに全力を注いでくれる弟子。
彼女がいなかったら、わたしはこんなに頑張れていないし、たくさんの新たな挑戦もしていなかったと思う。

個人の力と言えど
対面コミュニケーションができないと言えど
結局は人とのつながりなんだなあと思います。

よし、明日もがんばろう。


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(UMUM2周年を迎えた4月6日に、サプライズパーティーしてくれた弟子と
完全に巻き込まれたパジャマ姿のだんなさん)

いつも長文を読んでいただきありがとうございます! サポートは、企画のための画材&情報収集に活用させていただきます。