【読書感想文にも!】この夏読んでもらいたいおすすめ電子書籍⑧
みなさん、こんにちは!
フレーベル館のいなおかです。
皆さんは子どもの頃の記憶で強烈に覚えているものはありますか?
私の場合、一つあります。
その時私は3歳くらい。
場所はどこか分かりませんが、父親と母親と3人で車で出かけたところです。
サービスエリアか旅の目的地は忘れましたが、
そこではとても風が強く吹いていて、着ている服もバタバタと音をたててはためくほど。
そして私は何かを大事に両手で握りしめながら、少し霞んだ風景を遠く眺めている…
どうしてこの記憶を鮮明に覚えているのか全く分かりませんが、
家族と出かけたこと、風の強さとうねる音、ギュッと握りしめた大切なもの、
色々な記憶が重なり合って印象深いものになっているのではと思います。
今回は、過去の記憶を巡る物語です。
過去を乗り越えて『ブレーメン通りのふたご』
今回ご紹介するのは、『ブレーメン通りのふたご』
対象は小学校高学年から。
ジャズの名盤「明るい表通りで」が流れる小さな甘味処で出会った、二組のふたご。
甘味処の店主・園子さんの孫である双子のマキとカツラ、同じブレーメン通りの小さなアパートに一緒に住んでいる"自称ふたご"のおばあさんのまりあちゃんとえりあちゃん。
まりえり(まりあちゃんとえりあちゃん)とマキとカツラが"プチゆうかい"と称して、まりえりの住むアパートでお茶会をすることで、4人は交流を深めていきます。その中でそれぞれがもつ過去が少しずつ明らかになっていきます。
活発だったマキとカツラがおとなしくなったワケ、まりあちゃんとえりあちゃんがマキとカツラに抱く悔しさ、園子さんの二人の孫に対する思い。
また、マキとカツラもお互いに秘密にしている、特別な過去を持っていて…。
それぞれの過去と思いが交差することで、悲しい思いを乗り越えていく再生の物語です。
注目して欲しいところは、皆が持つ過去や秘密が、少しずつ明らかになっていくところ。
マキは音に敏感です。それは音響機器の会社で研究員をしていたお父さんである新(あらた)さんの影響でした。マキたちがまりえり(まりあちゃんとえりあちゃん)のアパートに通うことになったキッカケも、マキとお父さんとの思い出によるものですが、そのことをカツラは知りません。
そんな中カツラは裁縫が上手なえりあちゃんに、編み物を習うことに。しかしここには、カツラとお母さんである緑さんの思い出が関係していました。
それぞれの持つ優しい思い出や悲しい過去が少しずつ判明していきます。少しずつ物語の全体が見えてくるのは、ミステリーを読んでいる感覚になります。
また、判明した過去に対してそれぞれが向き合っていくところもポイントです。
お互いを支えていたマキとカツラが悲しい過去に向き合うとき、二人は今までにはない感情を見せることに。
また、そんな二人を大事に思うからこそ、色々な思いを抱えてしまう園子さんの気持ちには、子どもたちよりおとなが共感してしまうでしょう。
まりえりとの出会いによってもたらされたマキとカツラの心の変化について考察したり、読者である子ども自身の思い出やその時の感情を体験談として述べたりなど、読書感想文の書き方もたくさんあるのではないかと思います。
おとなであれば一気読み推奨です。
電子だからドライアイになるんじゃないかって?心配は要りません。
気がついたら自分の涙で目の乾燥なんて気にならなくなっているはずですから。