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綺麗なものはなぜ儚いの

空綺麗で切ない。

私は人間が大好き。
私は前世人間ではなかったのだけど、きっと人間に大事にされていたんだと思う。
人間のことはとても大好きで愛している。
人間という「種」そのものが好き。
不安定で一生懸命でどうしようもなく愚かで稚拙でそれと同時に賢くて優しくて美しくて繊細で可愛くて暖かい。
でも自分自身が人間として生まれてくるのは正直早すぎたと思う。
私に人間は早すぎた。
いっぱい頑張ったけれど、やっぱりこう思ってしまう。
今までずっといっぱい頑張って生きて、たくさん経験して、いろいろな人間と会って話して抱き合って笑いあって、いっぱい楽しんでいっぱい泣いた。
人間の怖さも優しさも冷たさも温かさも胸いっぱいに感じた。
それと同時に私は前世でまだ人間社会用の心を準備できなかったんだなと思う。

この前、つい最近結婚したきょうだいの結婚式の衣装選びに同席させてもらった。
きらきら輝く笑顔が可愛くて胸がいっぱいになった。
幸せそうな人間の顔は良い。
そして、帰り道に泣きそうになりながら「もう大丈夫、十分だな」と思った。
平たく言うと、私はもうこの世界からいなくなっても大丈夫そうだな、と思った。
私は自分が一番得をしたいとか最初に幸せになりたいとかそういう類の精神を持っていないみたい。
執着心もこだわりも競争心もない。
元来「来るもの拒まず去る者追わず」タイプで、去っていくものには「元々私のものではなかったんだ」と諦めて見送るタイプだと思っている。
周りの人たちが一通りみんな幸せになってそれを遠くから見て安心してから自分の欲しいものを手に入れに行くか、それを見て満足してその場を立ち去るタイプなんだ。

正直、人間の自分を俯瞰してみて、今までの人生で特段不幸だった点はなかったように思う。
人並みの容姿だけど外見で何か苦労したことはないし、経歴も恥ずべき点はないし、恋愛も色々と経験できた。何度か好きな人と両思いになって付き合えたし、複雑な家庭出身でもないし家族も仲良くてお金もそれなりにある両親のもとで何一つ苦労せずにすくすくと育った。
人間としての「自分」がここまでいわゆる”幸せ”そうな環境で生きてこれたことは本当に運が良かった。
だからこそ私の心は人間社会用にできていない状態を保てたのかもしれない。
今はただただ個々の人間の儚い人生が切ないよ。

私はずいぶん前から自分のこのふとよぎる希死念慮未満の『人生もういいかな』という「今日帰りにカレー食べて帰ろうかな」くらいの思い付きでふらっと自分の人生を終わりにしてしまいそうなのが怖い。
ただ晴れやかな雲ひとつない澄んだ空を見上げてふと考えてしまうのだ。
具体的な理由がなくて、漠然とした不安をぼんやりと感じる。
お化けや痛みよりも自分自身が怖い。
大人になったらもっと心が強くなって生き方も上手になって、全部うまくできるようになると思ってた。
長く生きれば生きるほど日常生活に地雷やトラウマが増えていくし、切なさと儚さと賞味期限とタイムリミットと明暗と濃淡をより感じるようになってきている。
そういうものを認知して望んでもいないのに口に含まされてまざまざと味わわされることがとてもつらい。
そういう物事に圧倒されてただ自分の感性や感情に自由奔放に生きているだけでは全然ダメなんだと頭では分かっているのに心がついていけない。
自己採点上、私はきっと人よりも少しだけ敏感で、真面目で、正義感が強くて、馬鹿正直で自分の「好き」に弱くて、人間と一緒にいるのが大好きで、不器用で、痛みに弱く、心が脆い。

肉体が明らに痛いのを耐えている方が私にとっては楽なことだ。
水泳を2キロ泳いだ後の頭がぼーっとして体の筋肉が張る感じが気持ちいい。自分を追い込み、痛めつけ、罰することで「生」を感じてるのかもしれない。
今は体も心もそんな体力がないけれど。

今は心だけじゃなくて心の痛みに伴って身体中が痛い。
焼けるように痛い。
心に呼応するように喉に大きい鉛がつっかえているみたいに何も飲めない、食べたくない、夜は2時間おきに泣きながら飛び起きてしまう。
自分が本当に壊れそうで、自分の体なのにどう扱っていいのか分からない。
朝は心と体の痛みを内側から逃すように過呼吸のようになってしまう。
俯瞰しているもう一人の自分が今の自分を心配している。
本体の中身の自分が、自分と離れたがっているのが分かる。
全身がとても痛いから。

私は自分の決断に後悔をしていないし、自分を幸せにできない物事から離れられて、自分の口からちゃんと話せてそのことを自分で自分を褒めてあげたいとさえ思っている。
その人間とダラダラ一緒にいることもできたけど、ちゃんと言えた。
えらかったよ。
でも、こんなに痛いのはもう嫌だ。
きっとこんなにたくさん痛くない人生もあったはずなのに、私は不器用すぎてできない。
どうしてもっと上手に生きられないの?

こんな私なのに、「つらいことがあって一人でいることが苦しい」というだけで夜ごはんを一緒にしてくれたり、会社で一緒にごはんを食べてくれる周りの人たちがいることには感謝しかない。
今の私は人と会っていないと壊れてしまいそうで、とにかく人と会いたい。
いつも話を聞いてくれて、わたしが会った瞬間からぼろぼろ泣いてしまってもただそこにいて慰めてくれて、優しくしてくれて、本当にありがとう。
電話やラインもしてくれて、本当に私は恵まれている。

私は冬生まれで、寒いのが得意で一番好きな季節も「冬」。
冬の空は湿気が少なくて雲一つない澄んだ青空なことが多い。
冬の青空が大好きだ。
「冬は○○の季節だね」って言ってくれたのをずっと覚えている。
冬は私の季節。

『冬のぽかぽか陽気の日、太平洋岸の海に太陽が注いでいても、そこはかとない寂しさを感じませんか? 』




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