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【小説】構想からプロットへの落としかた。テーマやプレミスは必須じゃないと思うなど【プロットの作り方】

構想の出しかた

作品が完結したので、アイデアやプロットを書いていたノートを整理している。一番最初に使っていたスケッチブックは捨ててしまったんだけど、それ以外のものがこの三冊。

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三冊全部がそうというわけではなく、途中に別の長編のネタもはさまっています。キャンパスノートのA4で分厚くないやつが好き。

せっかくなので、ノートを整理がてら前回の続きをやってみようと思う。

前回も書いたように、今の作品の書きかたは『アウトラインから書く小説再入門』(K.M.ワイランド)という本に影響を受けている。前回あつかった「架空レビュー法」はおもにアイデア出し(構想)段階のお話だけど、その次の段階、プロットにすすむためにさらに物語のパーツを出していく。

著者はこの過程をゼネラル・スケッチと呼び「ストーリーについてすでに分かっていることを並べ、あらすじのようにして眺めながら、未定の部分をマークする。同時に多くの「もしも」と「なぜ」も考える。」と書いている。(私は単に「構想」と呼んでます)

私の構想ノートはこんな感じ。

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ノートの書きかたは、著者によるとおおまかにこんな感じ。

- 現時点で思い描けるシーンの内容を書く(箇条書きでよい):「このストーリーについて私が知っていることは?」
- 掘り下げが必要な部分を蛍光ペンでマークする:
 書けたものをその日の終わりに見直し、各ページ上の余白に見出しを書く。
- シーン間の空白を、質問しながら埋める(点を線でつなぐ): マークしたあいまいな部分のアイデア出しを重ねる。 

『アウトラインから書く小説再入門』

上のノートに見える、蛍光ペンの色分けも著者のやり方にならっています。(要検討⇒オレンジ、清書できるアイデア⇒ブルー)

著者のやりかた以外でも、ひとつの出来事について「それからどうなった?」(青色の→)と「その前はどうだった?」(赤色の→)を複数考えるのもけっこういい方法だった。これは手塚治虫のアイデア方法として知られていて、考えた出来事についてもさらに同じことを繰り返すところが肝。苦しまぎれのなかにいいアイデアがあることもあるんだとか。このあたりの発想法については、読書猿氏の『アイデア大全』をたまにめくっている。

上のノートみたいにまとまっていない、落書きっぽいのもけっこうある。

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形式はともあれ手を動かすというのがいいみたいで、プロットを清書するまではずっとアナログでやっている。

著者はこの作業の前後に、プレミス(作品の売りを一行であらわすようなもの。コピー、ログラインとも)やテーマを設定するようにと書いているんだけど、私はじつはこの2つは後づけ派なので、この段階では作りません。(第一稿ができたあと、第二稿のときにできればやる。できれば……)

キング御大もこう言っているし:

 原稿が仕上がると、私は一息入れて、作品の底流にある傾向を探りながら読み返す。そこにはきっと何かがあるはずだから。
 見極めたものを取り出して、くっきりと浮き彫りにする意識で第二項を書く。というわけで、二稿の担う働きは二つ、シンボリズムの増幅と主題の補強である。(強調は引用者)

テーマやプレミスは、プロの人なら企画段階で出す必要があるし、アマチュアでもあればあるに越したことはないだろうけど、一度書き上げてしまってから考えても遅くないんじゃないかなあ。ここで行きづまってしまっているくらいなら、最初から考えなくてもいいと個人的には思います。

ほかにも、やってないことけっこうあります。

キャラクターや世界設定もそんなに作りこまないかなあ。人名や地名は、思いつかなければ間にあわせで適当に書いておく。そのへんの整合性も、基本的には完成させてから推敲のときに一気につじつまをあわせたほうが楽です。あと、設定を作りこむとそれを話に入れたくなってしまい、ストーリーに寄与しないエピソードが増える気がするんですよ。私の場合。

王国史とか地理とか、キャラのフルネームや家族背景とか、物語の序盤から読まされるとめんどうですよね。そのへん、未定のままなら書かずにすんで、読みやすいし、エコです。ただ、もちろん矛盾点は出やすくなるので良しあしではあるかな。

逆に、キャラクターでかならず決めるのは欲動とゴールなにをやりたいと思っていてなにが欲しいのか。逆に、絶対にこれだけはやりたくない、こうなりたくないというのもすごく大事。表だって欲しがっているもの(ウォント)だけではなく、意識していないけどじつは求めているもの(ニード)も想像してみる。これが決まっていると、無限に話がわいてくる。
二次創作が書きやすいのは、キャラの性格だけではなくこの欲動とゴールが共有されているからではと思ったりもします。

そういうわけで、キャラの細かい設定や性格はあまり決めずに先に進んでいることが多いです。実際に書いているときにわかってくることも多いしね。

キャラが多いときは、エニアグラムのタイプを決めることもあるかなぁ。人格診断としては眉つばものだと思いますが、創作のキャラには向いていると思います。(自己啓発系のページが多いので、検索するときはご注意を)

性格類型を使うかどうかはともかく、長所が同時に短所となりうるような設定を作っておくと、キャラに深みが出るかも。思いやりのある優しいキャラが感傷的・自己犠牲的になったり、愛情深く庇護的なタイプは嫉妬深かったり、そういう感じ。

プロットにまとめる

アイデアを出しつくしたら、いよいよ、プロットにまとめる作業へ。

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出てきたアイデアや場面、セリフなどを、物語としてよい順序になるように並べなおす。この紙はA3でかなり大きめ。余白を心配しないでたくさん書けるので、大きな紙が好き。参照するときはスマホで撮った画像をPCで見てます。

構成として、おおまかに三幕構成を意識して書いている。青い山脈みたいな線は感情曲線といい、読者にこういう感情のジェットコースターを味わってほしいと思ってイベントを配置しています。ここで不足している要素に気づくこともよくあり、その場合はまたノートに戻ったり。

三幕構成と感情曲線について学ぶおすすめの記事:

図にしてみるとこんな感じ

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PP1・・第一プロットポイント MP・・ミッドポイント
PP2・・第二プロットポイント 
三幕構成では青い部分が第一幕(発端と状況設定)、MPをはさむ緑の部分が第二幕(葛藤)、オレンジの部分が第三幕(解決)

セットアップ:発端と状況設定
第1プロットポイント:物語の「本筋」がはじまるところ
ミッドポイント:物語の転換点。結末が不可避となる
第2プロットポイント:クライマックスがはじまる
エンディング:結末と解決

「リアナシリーズ」の第一部は、かなり上の曲線を意識した作りかたをしている(つもり)。ただ、あまりにも三幕構成にいれこみすぎると発想が限られてしまうというか、なんとなく物語がつまらなくなる感じがして、最近はやっていない。「プロット上必要だから」という理由だけで発生するイベントがでてきたり、予定調和を意識しすぎたりするというか……あまり説明できないし、私が未熟なだけかも。プロットポイント、ミッドポイントといった要所だけ、はずさないようにしています。

いずれにしても、このあたりの演出は改稿時にやってもいいものなので、シナリオ作法的なものはあまり心配せず、ガイドラインと思って気楽に書いて大丈夫。「プロットはガイドライン」!

アウトラインを作る

アウトライン(完成したプロット)は、以前は「メモ帳で清書⇒Meryで第一稿執筆」という流れで作っていました。シリーズ後半はあまり細かなプロットは作らなくなったので、メモ帳のを見ながらカクヨムのエディタで直接書いてました。(雑になった)

第一稿にMeryを使うよさは、メモ帳からコピペした時点でアウトラインが作成できること。Markdown形式で頭に「# 」をつけると、自動的に見出しにしてくれるので楽です。

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左の白い画面がメモ帳、右の黒い画面がMery。(完成稿を使っちゃったので違うところもあります)これだとエピソードごとの入れ替えも容易だし、地名や人名を変えたくなったら検索置換で一発だし、動作は軽いしけっこういいですよ。ただ、すきま時間でスマホとかから書きたい人は同期が楽な別のエディタのほうがいいかも。PC作業が多い人向きな気がする。私はいまは移動がないのでMeryけっこう使うけど、移動が多いときはGoogle Docsで書いていました。

もっと昔、待ち時間の多い職種だったときには、ポメラでこまぎれのテキストを書いて(職場で……)、それをMeryでまとめて編集したりもしていた。通勤時間が長いときはタブレットPCになって、今は海外でほぼPCの前にいるので、同期の心配が要らないかわりにネットは遅いのでMeryのようなアナログなツールが活躍している。ツールの使いやすさもだけど、生活スタイルに合っているかのほうが大事かもですね。

初稿を書く

あとは書くだけ!といいたいところだけど、プロットができていてもいざ書こうとすると書けないことはよくある。行きづまりの原因や、シーンに必要な要素などはまた別の機会に。

前回の記事はこちら。



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