若手精神科医が診療で直面する壁→この先生は話を聴いてくれない!


はじめに

精神科医としてのキャリアを積む中で、若手医師が直面する壁は多岐にわたります。私自身、精神保健指定医、精神科専門医、精神科指導医の資格を持ち、大学病院や民間病院、クリニック勤務を経てきました。この経験を基に、若手精神科医からよく相談がある課題についてお話しします。
これはあくまで私見であり、異なる見解を持つ先生方もいらっしゃることを重々承知していますし、私程度がおこがましいとも思いますが、若手の先生の問題解決の糸口にでも役立てば幸いです。

若手精神科医のよくある相談

若手精神科医からよく寄せられる相談の一つに、患者さんから「この先生は全然話を聞いてくれないから他の先生に変えてくれ」と言われ、落ち込んでいるというものがあります。私自身も含め、多くの精神科医が一度は経験したことがあるでしょう。

診療に問題がないケースが多い

実際に無礼な態度を取ったり、知識や経験不足から誤った情報を伝えたり、人としての問題がある発言をするなど、精神科医側に明確な問題がある場合もありますが、多くの場合、その先生の診療自体には特段問題がないことが多いです。話を30分以上聴き、毎週外来で診療を行い、カルテを見ても特段問題が見当たらない場合でも、患者からの不満が出ることがあります。

「聴く」と「聴ける」の違い

ではなぜこのような状況に陥るのでしょうか。それは、話を「聴けて」いないからです。「傾聴」という言葉があるように、患者の話に素直に耳を傾けることは非常に重要です。しかし、実は聴いているだけでは不十分なのです。

患者に「言わせる」ことの重要性

患者は何か辛いことや言いたいことがあって外来に来ています。それを上手く「言わせて」あげて、患者が言いたいことを「聴けている」ことがとても重要なのです。具体的には、患者の話を適宜まとめ整理し、前に進めていき、その中で本当に困っていることや言いたいことを推察し、その話を聴くということが求められます。もちろん、疾患や状態によってはこの限りではない場合もありますし、ただ単に愚痴を言いたいだけの人もいます。

時間の長さと満足度は実は関係ない

私が診療すると、5分程度しか話を聴いていないのに満足して帰ってくれることがよくあります。(疾患や状態によってはこの限りではありませんし、必要があれば1時間でも話を聴いていることもあります)つまり、時間の長さではないということです。言いたいことを言わせることができずに帰してしまうと、例え1時間以上、話を聴いても決して満足はしてくれません。

まとめ

若手精神科医が診療で直面する壁は多岐にわたりますが、患者の話を「聴く」だけでなく「聴ける」ようになることが大切です。患者が本当に言いたいことを引き出し、適切に対応することで、満足度を高めることができます。このスキルは経験を積む中で徐々に身についていくものですので、焦らずに取り組んでいきましょう。