難病になってしまった父親と息子の野球を通じた友情を描いています ①

キラキラ光に包まれて

「バッティングセンターへ」

真夏の太陽がギラつくなか
車イスを押す腕から
汗が滴り落ちる

車イスに乗っている父親も
滝の様な汗をかいている
何年も病院暮らしの父親にとって
久々の真夏の暑さは しんどかったかも

それでも 首に巻いたタオルで汗を拭きながら
久しぶりの外の世界を楽しんでいる

父親は僕が15歳の時から
脊髄小脳変性症という 徐々にに歩けなくなり
上手く話せなくなり
最後は 寝たきりになる病気に
苦しんでいた

この病気の辛い所は
意識は しっかりしているので
いつか寝たきりになるという
絶望を抱きながら
生きる事だ

ただ 昭和のスターの様な父親は
歩けなくなるから
大人しくなるのではなく
大好きないいちこを飲んで
家の階段から 落ちた 笑

そこから 入院生活が始まった

そういえば なんで真夏の太陽が
ギラつくなか
車イスを押しているかというと

入院して月日が経ち
すっかり 自分で起き上がる事も
出来なくなって
疲れたから もういいよ 終わりにしたいと
口に出す様になった父親

父親が病気になり 全てを否定的に
捉える様になってしまった母親は
外出など反対したが

そこは 夢や希望に溢れる
成人したての俺のパワーは
凄かったのかもしれない

小学校の頃によく連れて行って貰った
病院から3キロ先にある
四つ木のバッティングセンターで
何年も見せていない
成長した俺のバッティングを
見せれば父親としてのプライドが蘇って

生きる希望が沸くんじゃないかなって

そう 願いながら
俺は父親とバッティングセンターへ
歩き出していた

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