難病になってしまった父親と息子の野球を通じた友情を描いています ⑦


「最後の呼吸」

病室に入ると
チューブだらけの父親は
意識はなかった

母親とその友達も来ていた

21時過ぎくらいに
母親達は 一旦帰るねと

俺には疑問だった

これから 父親は死ぬのに
なんで このタイミングで帰るんだろうと

母親に後で 聞くと
死ぬとは思ってなかったようだ

母親は 血が繋がってるから わかるんじゃない
と言っていた

そんな物なのかな

母親達が 帰ってどのくらいたっただろう

俺は父親との思い出を浮かべていた

ふぅー

父親の人生最後の 呼吸を見届け
泣きながら 手を握り

ありがとうございました

とだけ 父親に言った。


母親と看護師さんに
父親が亡くなった事を 伝えた

印象的だったのは
看護師さん達が 泣いていた事

5年間いた病院でも
誰からも 愛される昭和のスターで
いたんだなと 生き様を見た気がした

まるで 死期を悟った猫が
身を隠すように
母親達が 帰ってから
息を引き取った父親

何故 俺だけに
最後の姿を見せたのだろう

答えは わからないけど
父親の最後の 呼吸は
思い出すだけで
今も涙が溢れてくる

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