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年間250タイトル超を視聴するコラムニストが厳選!フリーランスが見るべき海外ドラマ4選

年末年始のお休みは、「見始めたらやめられなくなるかも…」となかなか手が出せなかった海外ドラマをイッキ見する大チャンス!とはいえ、日々大量に生み出される「名作」の中から、一体どれを見たらいいのか迷う人もいるのでは。そこで本記事では「自称”日本一海外ドラマを見る女”」として、配信系を中心に一日平均10時間、年間250タイトル以上の海外ドラマを視聴する海外ドラマコラムニストの伊藤ハルカさんに、フリーランスにおすすめな海外ドラマを厳選してもらいました!

代わりがきかないフリーランス…プライベートで深刻なトラブルが起きたら?

■Apple TV+「シュリンキング:悩めるセラピスト」シーズン2

交通事故で妻を亡くしたセラピスト・ジミーと、その一人娘でティーンエイジャーのアリスが、隣人や職場の仲間に支えられながら再起していくヒューマンドラマです。

ジミーを演じるのは、コメディドラマ「ママと恋に落ちるまで」で有名なジェイソン・シーゲル。ジミーの上司ポール役を名優ハリソン・フォードが演じています。

主人公ジミーがセラピストなこともあり、この作品のベースには「セラピー」があります。ジミーの同僚は親の介護に悩み、上司はパーキンソン病に苦しんでいます。ジミーの隣人は、息子3人の子育てが卒業したことを受けて喪失感でいっぱい。ジミーとアリスは、言わずもがな最愛の妻、そして母を亡くした悲しみから抜け出せずにいます。ジミーとアリスを中心に、登場人物それぞれが悩みや心の傷を抱えているのですが、人との対話=「セラピー」を通じて、みんななんとか状況を受け入れ、乗り越え、前に進んでいきます。

筆者は、過去にフリーランスの経験があり、今は会社員を続けながら副業として海外ドラマコラムニストとして活動するパラレルワーカーです。そしてプライベートでは、9歳と6歳の子どもを育てる母親でもあります。

フリーランスとして活動していた当時、働く時間と場所を自由に選択できる一方で、特定のチームを持たず一人で働いていたので、プライベートでトラブルが発生した時は、とにかく仕事とプライベートの両立に苦労しました。時間の捻出が難しい中で仕事に穴をあけるわけにもいかず、責任の重さとプレッシャーに押しつぶされそうでした。

このドラマのようにプライベートのトラブルは待ったなしにやってきます。そんな時、心に余裕をもって対応するために、事前にいくつか武器を持っておくといいのかもしれません。セラピーに頼るのも1つです。隣人や同僚など、家族以外の誰かに状況を率直に打ち明け、対話を重ねることもすぐに実践できる小さなセラピーなのかもしれません。この作品には、幅広い年齢層の人物が登場します。その中で、合うはずのない10代のアリスと70代のハリソン・フォード演じるジミーの上司ポールが、ひょんなことから会話を重ね、互いに気づきを与えあい、悩みから解放されるシーンがあります。年齢や役割を超えていつでも誰とでもできるのが「対話」のいいところですよね。

仕事で代わりがきかないフリーランスはなおさら、いろいろな人と対話できる環境を日頃から築いておけるといいのかもしれません。何が起きてもきっと大丈夫と、フリーランスとして必要な心の備えを意識させてくれる作品です。

Apple TV+「シュリンキング:悩めるセラピスト」シーズン2
Apple TV+にて好評配信中!
画像提供:Apple TV+

いつの時代も、家庭と仕事の両立は一筋縄ではいかないけれど…

■「ヤング・シェルドン」(U-NEXT他)

次に紹介するのは、80年代のアメリカ・テキサス州を舞台に、典型的なアメリカ人ファミリーの日常を描いたファミリードラマ。大人気シットコム「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」のスピンオフで、「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」の主人公シェルドン・クーパーの幼少期が描かれています。

天才科学者だけれども、超がつくほど潔癖症で、他人の気持ちを理解できない風変わりなシェルドン・クーパー。彼はいかにしてシェルドンに仕上がったのか。その過程が幼少期の家族関係を通じて丁寧に展開されます。

シーズン1のシェルドンは9歳。双子の妹ミッシーと、兄のジョージー、専業主婦の母メアリーとアメフトコーチの父ジョージ、近所に住む祖母のコニーと共に生活をしています。幼い頃から賢く、皮肉屋なシェルドンですが、家族の中でも特に祖母と母からたっぷりの愛情を受け、すくすくと育っています。

このドラマのテーマの一つが「母親と仕事」。母メアリーは、子ども達のトラブルにはいち早く駆けつけ、飛び級で高校や大学に入学したシェルドンの学校への送迎にも労を惜しまないなど、子育てに全力投球するお母さんです。その一方で、フリーランスとして始めた化粧品販売にのめり込みそうになり自らストップをかけたり、パートタイムで得た教会の仕事を子どもの不祥事で辞めざるを得なくなったりと、仕事に対して挫折する姿が描かれます

そんなメアリーを横目に70歳をすぎて新しい道を切り開くのが、シェルドンの祖母でメアリーの母のコニー。シェルドンたちの近くに住み、夫を亡くしてからは恋愛を楽しみつつ自由気ままに暮らしていたのですが、近くのコインランドリーを知人から買い取ったことで、事業家として花開きます。コインランドリーは表向きの顔で、裏ではギャンブルの場を提供するお店だったのですが、地域の人がひそかに集まる場所として、事業は急成長していきます。

子どもや家族に何か起きれば母である自分が仕事を調整し、バイトだからと突然クビになったり、不条理に扱われたりするメアリーには私も感情移入しっぱなしです。私自身も同じく不条理な扱いを取引先から受けたり、「フリーランスだから時間あるよね?」と偏った家事育児の配分を夫から押し付けられた経験があるからです。

だからこそ、70歳をすぎて起業したコニーに夢を重ねる部分も多いです。事業に楽しさを見出したコニーは、のんびり老後を楽しみたいと考えていた恋人とペースがあわなくなってしまい、恋人から別れを告げられてしまうのですが、そこもまたリアル!

いつの時代も、家庭と仕事の両立は一筋縄ではいかないもの。メアリーの葛藤に共感し、また、いきいきと過ごすコニーの姿に勇気づけられる……そんな作品です。

ヤング・シェルドン
© Warner Bros. Entertainment Inc.
全6シーズンU-NEXTにて配信中
Netflixでは、シーズン1から5まで配信中

エミー賞受賞の話題作の裏側には、フリーランスが心に留めたいヒントが満載

■「SHOGUN 将軍」(ディズニープラス)

次は、2024年9月開催のエミー賞で史上最多となる18部門を受賞。同時に過去最高となる同アワード日本人受賞者9名を誇った脅威のヒット作品「SHOUGUN 将軍」を紹介します。

ハリウッド制作チームが日本の戦国時代を描くスペクタクルドラマシリーズ。俳優の真田広之さんが主演、そしてプロデューサーを務めたことでも話題になりました。約8年前に徳川家康公にインスパイアされた主人公の将軍、虎永役をオファーされた真田さんは、2003年に出演した映画『ラストサムライ』以降、ハリウッドへ拠点をうつし、彼自身もフリーランスの役者として約20年間、現地で活動してきました。ハリウッドで日本人役を演じる中で、誤った日本の文化的描写に何度ももどかしい思いをしてきたそうです。

そして今回、「SHOGUN 将軍」に主演だけでなく、プロデューサーとしての参加もオファーされた真田さん。ハリウッドで抱いたもどかしさを払拭するために、主演兼プロデューサーとしてこの作品にジョインすることを決めます。「日本人が見てもおかしくないハリウッド制作の戦国ドラマ」を生み出すべく、時代劇のスペシャリストを招集。彼自身も、着用する着物の帯にまで助言したり、殺陣のシーンがエキサイティングなショーにならないようアドバイスしたり、過去に感じたハリウッドが描く日本のシーンの違和感をすべて取り払うかのように、細かな部分にまでこだわりました

また、アメリカドラマでありながら、その半分が日本語シーンで描かれていることも、従来作品と大きく異なる部分です。漂流し日本にたどり着いた按針という名の航海士こそ英語を話しますが、他のメインキャストはすべて日本人で、セリフの多くは日本語で展開されます。西岡徳馬さんや浅野忠信さん、二階堂ふみさんらが出演し、真田さんと共に作品を盛り上げました。

日本人が違和感なく楽しめて、アメリカをはじめグローバルでも受け入れられる。海外ドラマにおいて、この両立は決して容易ではないのですが、Netflixをはじめ、配信サービスの盛り上がりによって、英語圏の視聴者が字幕つきで作品を楽しむ土壌ができてきたことも追い風になったと思います。結果、本作はグローバルで大ヒット。エミー賞で過去最多数の賞を受賞するだけでなく、2025年1月開催のゴールデングローブ賞にも4つにノミネートされる快挙を成し遂げています。

ハリウッドで違和感を抱いたり偏見を感じたりしながらも地道に努力を重ね、今、「SHOGUN 将軍」で革命を起こし、新たな流れを生み出した真田さん。日本での安定した立場を捨て、フリーランスとして異国の地でいちからスタートした決断力に、長く努力を重ね、結果を実らせた粘り強さ。勝負にでるタイミングを見極める判断力や仲間を巻き込む力は、フリーランスにとって参考になる部分が多いように思います。真田さんはじめ、日本人キャスト渾身の1作。フリーランスにぜひ見ていただきたい1作です。

『SHOGUN 将軍』
ディズニープラス「スター」にて独占配信
(c) 2024 Disney and its related entities Courtesy of FX Networks

仕事は楽しいことばかりじゃない。だから参考にしたい「ネガティブな状況での花の咲かせ方」

■「クイーン・シャーロット ~ブリジャートン家外伝~」(Netflix)

Netflixの大ヒットシリーズ「ブリジャートン家」のスピンオフとして誕生した本作。「ブリジャートン家」の前日譚として、19世紀初頭のロンドンを舞台に、何者にも動じず凛とした姿で存在感を見せていた謎多きシャーロット王妃の若かりし頃が描かれます。

「ブリジャートン家」と本作に共通するものとして、「過去の出来事を現代の解釈で描かれている」ことがあります。歴史に忠実だったりオマージュをささげているシーンがあれば、アフリカ系アメリカ人の公爵の存在など、時代の流れにあわせ解釈を変えている部分もあります。新しい視点で楽しめる大河ドラマとしてヒットを生んだわけですが、本作は「ブリジャートン家」よりも伝統的な大河ドラマに近いように思います。

ドイツ生まれのシャーロットは、兄が勝手に決めた縁談で英国王室に嫁ぐことになります。しかし結婚相手のジョージ三世は、何かにつけて「忙しい」といって結婚後もシャーロットと会うことはせず、時間ばかりがたっていきます。不満をぶつけるシャーロットに、ジョージ三世は重い口を開き、徐々にジョージ三世の秘密が明かされていきます。政略結婚ながら2人の絆、愛、そして王室を支えた女性たちの底力を感じさせる作品です。

偏見や差別、古い伝統などさまざまなハードルがある中で、自分らしく生きる方法を確立し、毅然とした態度でジョージ三世に寄り添い続けたシャーロット。彼女の異国王室での完璧な立ち振る舞いは、複雑性を増す現代を生きるフリーランスにとって参考になる部分が多いかもしれません。

年齢や性別、所属や肩書の有無で偏見を受けるなど、フェアではない状況に対峙するシーンは少なからず、誰しもが一度は経験があるのではないでしょうか。

今はパラレルワーカーの私ですが、最近も「女性」「フリーランス」ということで、大手代理店から軽んじられる場面に直面しました。そんな時に思い出していたのが、まさにこの作品のシャーロットです。

シャーロットは、感情的になるのではなく、戦略的に気高く立ち振る舞うことが勝ちにつながることを本作で証明しています。また、真の「強さ」や「権力」は声を大きくすることでも、地位に甘んじることでもなく、したたかさと芯の強さにあるとも教えてくれています。

結果として、シャーロットの言動にインスパイアされた私は毅然とした態度を貫き、無事にプロジェクトを完走することができました。

この作品で描かれるシャーロットの戦略、マルチタスク術やネガティブな状況での花の咲かせ方は、現代を生きるフリーランス、特に女性ワーカーの参考になる部分がきっと多いはずです。どんな状況でも気高く働くためのTipsが揃う作品です。

Netflixシリーズ「クイーン・シャーロット ~ブリジャートン家外伝~」
独占配信中

伊藤ハルカ 
海外ドラマコラムニスト。自称”日本一海外ドラマを見る女”として、配信系を中心に一日平均10時間、年間250タイトル以上の海外ドラマを視聴する。「VOGUE GIRL」や「日経doors」で海外ドラマの連載を担当。その他、日本テレビ系列「ZIP!」やフジテレビ系列「バイキングMORE」での海外ドラマ作品の紹介などマルチに活躍。ロサンゼルスで開催されるエミー賞授賞式の現地取材なども行う。


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