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ファッションはセンスじゃない!「自分の魅力を伝える一着」を見つけるテクニック

初めてのクライアントに会う、会食に出かける。そんなとき、「何を着ていこうか」と悩んだ経験は、きっと誰もが持っているでしょう。
「センスに自信がない」「おしゃれには疎いから」と、服選びを億劫に感じてしまうという人も少なくないかもしれません。
パーソナルスタイリストとして2万人もの顧客のスタイリングを手がけてきたみなみ佳菜さんは、「洋服は、ときに自己紹介よりも雄弁にあなたの魅力を語るもの」と断言します。

今回、みなみさんが教えてくれるのは、センス不要のファッション理論。装いを通して自分らしさを伝え、コミュニケーションを円滑にするための実践的なテクニックとは?

※この記事は、フリーランス協会「Independent Power Fes2023」内のセッション「自己紹介代わりのファッション選びと装い方」の内容をもとに作成しました。

洋服はあなたの魅力を伝えるパワーツール

パーソナルスタイリスト、みなみ佳菜さん。

パーソナルスタイリスト みなみ佳菜(みなみ かな)さん
米アウトドアブランドEddie Bauer Japanに入社。個人販売成績で全国首位を獲得。『Max Mara Group Max&Coなど外資系ブランド勤務を経て2007年パーソナルスタイリスト『ファッションレスキュー』に入社。政近準子氏に師事。2010年に独立し、スタイリングオフィスKOROR(コロール)を主宰。著書には『4つの性格タイプから見つけるいつの間にか人生が変わる服』(ディスカバー21)、『朝1分で服が決まる4つの法則』(小学館)などがある。1着入魂で洋服を選び、30年以上。これまで約2万人の顧客の服選びに伴走している。

「一言も話さなくても、服は今、この瞬間もあなたの魅力を周囲の人に伝えています」。
セッションは、みなみ佳菜さんのこんなひと言からスタートしました。
みなみさんは、「服は着ている人の内面を多くの人に伝えてくれるパワーツール」だと定義します。内面とマッチした洋服をまとえば、洋服からも「らしさ」をストレートに伝えることができます。第一印象と知り合っていく過程での印象にブレがなければ、相手は“思ったとおりの人だ”と安心感を覚えるでしょう。
「よくファッションセンスがないからと嘆く声を耳にしますが、ファッションでまず大事なのは、センスやトレンドよりも自分らしさ。自分らしい服は、相手との信頼関係を築くためのツールになりえるのです」

4つのタイプで考える自分に合うスタイル

会場にはみなみさんのワードローブも。
実際の洋服を例にしながらの説明に参加者のイメージもふくらむ。

では、自分らしさを表現するためのポイントとは、なんでしょう?
今朝の身支度を振り返ってみましょう。このトップスなら、ボトムスはパンツ? スカート? この色と柄は合わない? アクセサリーは何をつけよう? 
あれこれ悩んで、なかなかコーディネートが決まらないという経験は、きっと多くの人が持っているでしょう。
しかし、こんなふうに悩んで決めたコーディネートも、見る相手が受け取る印象は実はざっくり! 私たちは、まず洋服が発する4つくらいの情報をベースに、「こういう服を着ている人は、きっとこんな人」というタイプ分けをしているのだと言います。

みなみさんが分類するファッションタイプは「ソフトエレガント」「ポップキュート」「シックナチュラル」「クールシャープ」の4タイプ。あなたを見た人は、瞬間的に、この4つのタイプのどれかにあてはめています。
逆に言えば、自分のイメージはどのカテゴリーなのかを明確にすれば、自分らしさを伝えるファッションが組み立てやすくなる、というわけです。

ソフトエレガントタイプとは】
誠実で優しく、誰かをサポートすることが好き。
相性が良いのは、繊細な小花柄、レースやシフォンなどやわらかい素材。

ポップキュートタイプとは】
明るくて、元気な印象。おもしろいこと、ワクワクすることが大好き。
相性が良いのは、ドットやタータンチェック。

シックナチュラルタイプとは】
落ち着きがあり、大人のふるまいができる人。
相性が良いのは、ボタニカル風やエスニック。

クールシャープタイプとは】
シャープで凛としていて、存在感抜群!
相性が良いのは、ストライプ。

きちんと感とカジュアル感なら、どちらが自分らしい?
やわらかな印象としっかりした印象なら、どちらがしっくりくる?
4つのタイプ分類を軸に、自分らしさを伝えるカテゴリの比重を多めに取り入れることを意識してみましょう。2タイプ、3タイプを組み合わせても、スタイルは成立するそう。たとえばポップキュートなアイテムを50%、ソフトエレガントを30%、シックナチュラル20%と組み合わせてもOK。自分らしさを表現しながら、遊び心をプラスすることも可能です。

「洋服を見て“この人は、このタイプ”と判断する時間はわずか1秒か2秒」。
ファーストインプレッションで自分の魅力をストレートに伝えられれば、その後のコミュニケーションも円滑に。自分の名前で仕事をするフリーランスにとって、身にまとう服は自分を売り込むツールのひとつ、といえそうです。

似合う色を見つけるパーソナルカラー理論

身につけるアイテムのカテゴリとともに、自分らしさを表現する大きなポイントとなるのが色選びです。
自分に似合う色を見つけるのに有効なツールとして、みなみさんがおすすめするのが「パーソナルカラー」の理論です。
「パーソナルカラーは、約60年前にアメリカで理論化された分析法。顔色や髪の色などを使い、4つのカテゴリーで診断します。よく聞くイエベ(イエローベース)、ブルベ(ブルーベース)も、パーソナルカラー理論です」

パーソナルカラーの6タイプ。
「B」と書かれているのは、それぞれのタイプのベースカラーとして活用したい色。

「パーソナルカラーは、肌色をきれいに見せてくれる色。トップスや顔まわりに取り入れると効果的です」

AI診断は「午後3時の北側の窓、すっぴんで」

パーソナルカラーというと、以前はサロンで診断してもらうのが主流でしたが、最近では手軽に診断ができるアプリも数多くリリースされています。
「自分をきれいに見せてくれる色を知っておくと、服選びもしやすくなりますね。AIで診断するときのポイントは、午後3時の北側の窓で撮った写真を使うこと。すっぴん画像なら、精度も高く診断できます」

ただ、パーソナルカラーの理論は押さえながらも、診断されたひとつの色タイプだけにしばられる必要はない、とみなみさんは強調します。

「グループを2つ組み合わせてもOK。たとえばスプリングとウィンターを組み合わせた、ビビッドな色味もすてき。サロンで診断を受ける際には『2番目に似合うタイプはどれ?』と聞いてみてください。すべての人がブルーベースかイエローベースに二分されるわけではありません。ブルーベース、イエローベースだけで考えると、ご自身の似合う色の可能性を狭めてしまうことも。じっくり1番目と2番目のカラーグループを見つけ、6つのグループのうちどれが自分にとってのベストなのかを見極めてください」

オフホワイトは万能! 

この日のみなみさんもオフホワイト理論を実践!
「個性的なトップスも、ホワイトのジレジャケットで大人な雰囲気に」

「悩んだときは、とりあえず顔と服の間に白いアイテムをはさみましょう!」
これは、みなみさんが「これを言ったら元も子もないのですが」と笑いながら教えてくれた秘策。白のレフ板効果で顔色がよく見え、服との色なじみもよくなるそう。

「女性なら、真珠は万能アイテム。パールのネックレスはきちんと感も出るので、ビジネスシーンにもぴったり。イミテーションやコットンパールでもいいので、ひとつは持っていたいアイテムです。男性なら白いシャツ。思い切って真っ白なシャツを選ぶと、驚くほどかっこよく見えるかた、多いですよ」

オフホワイトのマフラーやストールもレフ板効果絶大! 寝不足気味で顔色が冴えないときは、とりあえず白い巻きものに頼る、と覚えておくとよさそうです。

また、顔から離れた下半身は、パーソナルカラーを意識する必要はありません。
「まずはベーシックな黒と紺のボトムスがあれば、ほとんどの色と相性がよいのでスタイリングしやすいですね。また、ボトムスの形で悩んだときには、テーパードパンツの9部丈をチョイス。日本人の体型に合って、スタイルをよく見せてくれます」

ワードローブを把握し、基本の10着を持つ

「料理をするのに、必ず使う調味料や常備食材ってありますよね。クローゼットの中身も同じ。よく使う10〜11着を基本の材料として持っていると、足りない材料を買うときにも無駄がないし、コーディネートが組み立てやすくなります

特に「仕事で成果を出したいとき」に外せないアイテムとして、みなみさんが挙げたのは、ジャケットと信頼できるボトムス。

「テレワークでジャケットを着る機会が減り、最近ではジャケットを作らないメーカーも。とはいえ、やはりジャケットは社会とつながるツール。ワードローブに1着は入れておいてほしいアイテムです。ダークカラーとライトカラーの2色があれば最強。活用の幅が広がります」
ジャケットは窮屈な感じがして苦手という人は、洗濯表示で素材をチェック!
「おすすめは、かっちり見えても、実は伸縮性のあるジャケット。ポリウレタンが2%入っているだけで、かなりストレッチが効いて着心地がいいんですよ」

このほか、オフホワイトやライトグレーのカーディガン、顔映りのよいカラーカーディガン、色柄のブラウスやシャツ、ホワイトのブラウス、デニムやカーゴパンツ、シンプルなスカートにワンピースなどが、みなみさんが提案する基本ワードローブ。
男性の場合は、ネイビーの無地スーツ、カジュアルなストレッチジャケット、カーディガンやニット、無地のシャツなど。

「毎朝、服選びに悩まないためにもクローゼットの中身を把握することから始めましょう。基本の10着があれば、20パターン以上のコーディネートが可能。白ブラウスはよく使うから、もう1枚別のデザインも追加しようといった具合に、買い物の際にも役立ちます」

相手に寄り添う心づかい、TPPOを考えた洋服選び

「自分らしさを表現する服を選べたら、最後にプラスしたいのが、今日出会う人への心遣い。これを意識するだけで、相手のかたが受け取る印象がぐっとアップします」

セッションの最後にみなみさんが教えてくれたのが、TPPOという服選びの考え方。TPO(Time, Place, Occasion)にもうひとつのP、Personをプラスするのがポイントです。

「たとえばクライアントが花を育てている人ならば、花柄のブラウスを合わせる。海が好きな取引先には、キレイなブルーのシャツを着て行く。相手のことを考えて服を選ぶ小さな心配りは、『あなたのことを大切に思っています』と言うメッセージになります。洋服に添えて、気持ちを伝えるワンランク上の装いをぜひ習慣にしてみてください。ファッションへの興味の有無にかかわらず、相手の反応は確実に変わります」

“あなたの喜ぶ顔が見たい”と思うホスピタリティは、フリーランスにとって必要なスキルのひとつです。そして、TPPOの意識は、実際に成果にも直結するとみなみさん。相手を思う小さな心遣いの習慣は、仕事への姿勢にも結びつくのかもしれません。

装いのチカラがビジネス戦略になる

「年を重ねるに従って、好きだったブランド、似合っていた服がしっくりこなくなった」という声もよく聞かれます。
それは、自分の内面と外見(=洋服)にズレがでてきている、ということかもしれません。

「年齢とともに社会とのかかわり方がかわってくるのは自然なことです。内面と外見にズレが生まれるのは、成長の証! ズレを感じたときは、今の自分の内面を表現する装いにアップデートするタイミングです」

大切なのは、「伝えたいメッセージと受け取る側の印象がズレていないか」を常に意識しておくことです。ときどき「この服、どんな風に見える?」と友達や家族に聞いてみるのも、ズレに気づき、解消する助けとなります。

ふだん何気なく身につけている服が発しているメッセージと、そのパワーに気づくきっかけとなった1時間。センス不要のみなみさん流の装いテクは、ファッションに苦手意識を持っている人もすぐに取り入れられるものばかりです。

あなたが掴みたい未来に最短で行けるよう、装いのチカラを味方につけてください!
みなみさんのユーモアたっぷりの語り口とポジティブで実践的なファッション理論に、明日からの服選びが楽しみになった参加者も多いはず。新春のお買い物の際にもぜひ参考にしてみてください。

また、みなみさんの著書には、ほかにもファッションを味方につけ、自分をより魅力的にみせるための理論やテクニックが数多く紹介されています。興味のある方は、ぜひお手にとってみてください。

取材・文/谷口素子
機関誌『東京消防』、WEBマガジン『食べログマガジン』などで執筆。“伝えたい思いを、わかりやすい言葉で多くの人に届ける”をモットーに活動中。モットーは「転ぶ門には福来る」。
撮影/鈴木江実子


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