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幸福日和 #063「言葉を拾い集めて」

昔から言葉を集める習慣があるんです。

心地いい言葉、音が美しい言葉、
素直に素敵だなと思えるものまで。

この世界には様々な魅力ある言葉で溢れています。
そんなたくさんの数々の言葉の中から
自分の好きなものを集めてみる。

例えば、辞書を一冊買って、
一ページ目の「あ」の部分から順番に、
丹念に言葉の世界に入り込んで見る。

もちろん英語が好きであれば英語字典。
フランス語が好きなら仏語字典でもいいかもしれませんね。
それぞれの言語の魅力がそこに溢れていますから。

そうして、気になる言葉や心地いいなと
思える言葉にマーカーをしていくんです。
すると、世界はなんて素敵な言葉で
溢れているんだろうと心の底から感じられる。

「あ」から始まる世界の中でも、
「愛」や「明日」「ありがとう」など、
そんな数々の言葉に思わず胸が詰まる。

日々後ろ向きな言葉ばかりが溢れる中で、
それらの言葉を使えば、
どんな日常も支えてゆけると感じてしまう。

人は世界から言葉を探し出したのではなくて
言葉によって世界を理解しようとしたのだと思う。

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例えば僕が今いる「孤島」。

僕はこれほど魅惑的な名前はないと思っているんです。
小島でもなく、諸島でもなく、孤島。

下手をすると、
二度と日常生活へ戻ってこられないかもしれないと
想うほどに危うい距離を感じる響きがそこにはある。
どの世界からも遮断された特別な空間の中で、
世界そのものと、自分と向き合える言葉だと感じる。

幼い頃から絵が好きで、
よく島の絵を描いていたけれど、
いつも「孤島」のように人の気配の感じられない
小さな島を書き続けていた気がします。

港もなければ、集落もない。
そこはどこかに人が住んでいそうな
不思議な雰囲気を漂わせている。
まさに今、いる孤島に似た場所。笑

昔から人に囲まれてばかりの環境でしたから、
現実の生活の中で「一人になれる」場所を求め続けて
いたのかもしれません。

僕はこの言葉に魅せられて、
この言葉の世界に迷い込んでいる。

「コトウ」という音の響きの美しさ、
漢字に込められた情景にも引き寄せられて、
今の自分は孤島という言葉に支えられている。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

または「水平線」。

幼き頃からこの言葉を耳にすると、
何故だか無性に泣きたくなった。

悲しいことがあったわけではない。
嬉しいことがあったわけでもない。
それでも、何故だか泣きたくなった。

ただただその言葉の響きと、
漢字三文字に込められた情景の中に
日常のあらゆる悩みを溶かし込んでゆけるほどの
包容力を感じて、この言葉の前に何度も何度も涙した。

海と空の間には、
明確な線が引かれれているわけではありません。
そこはただ、水面と空の面との触れ合う世界であるはずなのに、
そこに「線を引いてしまう」という人間の想像力にも心が震えた。

「遥かなる距離」があるからこそ
「水平線」をひくことができるのだと思う。
その線に近づけば近づくほど、その線はなぜか消えてゆく。

「水平線」と
この言葉を口ずさむ度に、
全ての悩みが解消されてしまう。

そして今日もこの場所から、
その不思議な線を清らかな想いでなぞっていく。

✳︎ ✳︎ ✳︎ 

誰かとの会話の中から、
一冊の本の中から。

また新しい言葉を拾い集めては、
少しづつ世界を切り拓いていけることの喜び。

言葉はお金を出さなくても手に入ります。
高価な言葉も、粗末な言葉もない。
それを手に入れて自分の世界を作り上げることもできる。
なんて素晴らしいことでしょうか。

皆さんは今日まで
どのような言葉を拾い集めてきましたか?

最後までお読みいただきありがとうございます。毎日時間を積み重ねながら、この場所から多くの人の毎日に影響を与えるものを発信できたらと。みなさんの良き日々を願って。