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素人こそアートを語るべき理由

「アートが好きです」「アーティストです」と周囲にいうことはこの上なく恥ずかしいし、相手がどう思うのだろうと気になってしまうぐらいアートには他にはない独特なコンテキストがある。
「サッカーが好きです」「IT企業で働いています」という時に同じような感情が芽生えるだろうか?

自分自身も「アート好きです」「アーティスト活動している」と大広げに言えるようになるまでに1、2年かかったように思う。
基本的に他の人がどう思うかとかはあまり気にしないタイプだったが、アートに関しては自信もないし、何かアートに関わることを発言するのはハードルが相当高かった。
その時は理由はアート業界が持つ特殊性に気づいていたわけではないので、単に自分自身の感情と処理していたが、アート業界について学び、俯瞰することでこうした感情を芽生えさせる構造が日本のアート業界にあるのだと分かった。

アート業界にある当事者の暴力性とは

アート業界のみならずであるが、アート業界でも所謂「オーソリティ(権威者)」や「暦の長い人」の声は大きい。
僕はアカデミックなバックグラウンドはないので、聞いた話であるが日本国内でデビューしようと思うアーティストにとて「画壇」という圧倒的なオーソリティが横たわっており、その画壇に認められないことにはどうにもならないというものらしい。
ご存知かもしれないが世界のアートマーケットの3%程度しかシェアのない不活性なマーケットである日本の権威がその画壇なのだとしたら、その価値が現在では相当低いことは明らかである。
そうしたオーソリティだけでなく「長期間にわたりアートに関わってきた人」というのも同じように影響力の大きな存在だ。

数ヶ月前にClubhouseでアートに関わる雑談の場を定期的に開いていていたのだが、その中である出来事が起こった。

話す内容は基本的には自由であったのだが、その日はアートマーケットを活性化するためにはこんなことをやったらどうか?と僕自身の考えを話す場となった。
ひとしきり話した後に50代ぐらいの現代アートの作家の方(Aさんとしよう)が色々と質問をしてくれた。「そもそもどういう人をターゲットにするのか」「マス化するのは難しい」などなど、アート業界の先達として僕以上の「当事者」意識を持っていたのだろう。
その段階ではHowの部分は具体性に欠けていたこともあり、僕の回答は「うーん、こう思うんですよね」「それはわからない」といった返答だった。

その後、Aさんが用事があるとのことで退室をされた。
すると他の方(Bさんとしよう)から「XXさん、結構厳しいから、あまり気にしない方がいいですよ」といった趣旨のコメントがあった。(その段階でAさんがそこそこ名前の知られた人なのだと知った。)

その時に違和感を感じたのだ。

Aさんにではなく、Bさんに対してだ。

なぜか。

公の場で発信をすれば、様々な意見を投げかけられる。それはポジティブなものだけでなく、ネガティブなものもあり、当然のこととして受け入れるべきことだ。
Aさんは僕の考え(=作品)に対して批評をしたのだ。
ただ、Bさんの発信は僕に対する擁護とAさんへの嫌悪感に近い感情の吐露のように感じた。

この時Bさんはアート業界の当事者(コレクター)として新たなアイディアを表面的に肯定し、批評した人を感情的に切り捨てたように感じた。(本人がどう思っていらっしゃるかは知らない)

ここで今回の一件が「当事者の暴力性」にどう関わるのかを説明したいと思う。

アートは作家が作品を作ったらお終いではなく、それを第三者が批評することで初めて作品として成立するものである。
今回の一件では作家は僕で、作品は「アイディア」、それを批評したのがAさん。構造としては違和感がない。
次に登場したBさんは作品の擁護と、批評した人の批判をしたのだ。かつその批判には感情的なものがベースとしてあるように思えた。
この一連の流れの中で、多くの人にとってはコレクターとして知見もあり実績があるBさんのAさん批判を違和感なく受け入れるのではないかなと思った。と同時に自分が批判される側になることを考えたのではないかと思う。

恐らくBさんには悪意はなく、アートが好きで業界が盛り上がればいいよねという当事者でもあるので新しいアイディアを受け入れ、それに対して色々発言をしたAさんへの「意見」を述べたまでだろう。

この作品を介していない無意識な意見は「当事者の暴力性」なのだ。
BさんはAさんの批評に関して指摘はせず「厳しい人だから」と人間性に目を向けており、それを見た人はその指摘が自分に向けられた時を想像するだろう。

なぜ素人こそアートに関して意見を言うべきか

そもそもアートマーケットがない日本国内で誰の意見が正しく、誰の意見があっているのかというのは、食べたこともない食べ物をうまいだまずいだ言っているのと大差ない。

それに以前の記事で「アートの価値は個人次第」とお伝えしているが、アートの価値が個人の価値観に大きく依存している以上、作品に向けられる意見は千差万別であって然るべき。むしろこれまでオーソリティ風な人の発信を気にすることで自分の感情に素直に従っていない。もしくはいいと思ったものをいいと言えないような状況があったのだと思う。それが一番の問題であり、日本のマーケットが勃興するためには解決しないといけない課題なのだ。

アートビギナーが心がけること

アートに興味がある、アート好きと繋がりたい、アート作品を買いたいなど思っているアート初心者の方(僕含め)こそが今後のアート業界には欠かせない存在です。なので、ぜひ以下のことを気に留めてください。

1. アート作品に触れたときに思ったことは口にする
2. アート作品に触れた時の感情に向き合い、なんでそういう感情になったのかその原体験を深ぼってみる。
3. お気に入りの作家が見つかったら作品だけでなく、その作家の人間性や作品の背景にあるストーリーに目を向ける
4. 人の判断、評価は当てにしない

とまぁ偉そうなことを言ったが、誰でもアートを楽しめる世界が来ればいいなと思っているだけです。

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