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「起立性調節障害」との向き合い方

娘は小学校5年生の時に、朝起きるとお腹が痛い、頭痛がある…などが続き、午前中に行くことが出来ない日があったり、欠席する日があったりと、する中で、医療機関を転々とし、最終的に起立性調節障害の診断を受けました。

起立性調節障害と不登校の関係については以下の記事に掲載しています。

今回は、Twitterで起立性調節障害で悩む人、その方々のつながりを求める声の多さに日々驚くとともに、自分も当事者の親として、ソーシャルワーカーとしてできることをしていこうと色々と考えないと…と思い、心身の状態を含む行動パターンを、娘と共に/親と子できちんと理解して、症状がどのような時に出やすいのか、その時にどのような対処が有効なのかを詳細にまとめた3年間の記録のポイントを、少しでも共有するのは、多くの人の役に立てるのではないかと思い、記事にすることにしました。

しかし、症状の出現やその程度など個々の病態等が違うこともあり、一概にこれが有効!とは言えないのがこの疾病の難しいところだと考えています。しかし、娘と探し出した行動パターンの「見つけ方」を日本小児心身医学会の「起立性調節障害の治療プロセス」に当てはめ、特に①、②、③、④、⑤について考えていこうと思います。

①理解を促すことを主とした「疾病教育」                           ②起立の仕方、水分摂取の方法、運動の推奨などの「非薬物療法(日常生活上の工夫)」                                        ③OD児の「学校受入れ体制構築」                               ④ミドドリン塩酸塩処方などの「薬物療法」                             ⑤医療機関と教育機関との連携を含めた「環境調整」                         ⑥認知行動療法などをの「心理療法」                               (日本小児心身医学会 起立性調節障害(OD)説明ホームページより)

また、経過については以下の様に記載されています。

日常生活に支障のない軽症例では、適切な治療によって2〜3ヶ月で改善します。学校を長期欠席する重症例では社会復帰に2〜3年以上を要します。

少しでも起立性調節障害で悩む人のお役に立てれば幸いです。繰り返しになりますが、この対応が全てではなく、参考例としてお読みいただければ幸いです。


①理解を促すことを主とした「疾病教育」

日本小児心身医学会のHPでは、以下の様に記載されています。

・中等症や重症の多くは倦怠感や立ちくらみなどの症状が強く、朝に起床困難があり遅刻や欠席をくり返していますが、保護者の多くは、子どもの症状を「怠け癖」や、ゲームやスマホへの耽溺、夜更かし、学校嫌いなどが原因だと考えて、叱責したり朝に無理やり起こそうとして、親子関係が悪化することが少なくありません。
・本人と保護者に対して、「ODは身体疾患である、「根性」や気持ちの持ちようだけでは治らない」と理解を促すことが重要です。

「疾病教育」の対象は、基本的には本人及び保護者となっているのだと思います。特に保護者の対応一つが重要であることが示されています。この理解の仕方そのものに関しては私は反対ではありませんが、少し考え方を変える必要があると考えています。私自身が最も大切にしたことは「見守り=そばにいつつ放っておく」と「起立性調節障害の症状についての会話」です。会話に関してですが、親子で一緒に、症状の出現の仕方や頻度、その時にどのような思考や行動をとっていたのか?などパターンがあるのではないかと考え、一緒に相談しながら記録していくことをしました。そうすることで、起立性調節障害の事の理解が親子で共有され、共通認識になり、「今日はいつものパターンと違うね。また相談して分析してみよう。」とか、「同じパターンの中でもいくつか違うことがあるのかもね…。」という様な会話が生まれることに繋がりました。「見守り」ということも症状の出現の仕方によってですが、今は放っておいても良い状況かどうかを判断することがしやすくなった印象です。

これは、「症状の外在化」というテクニックの1つです。起立性調節障害の症状を、本人も、保護者も一緒に客観視できるような取り組みをすることで共通の会話が生まれ、理解が深まるとう結果になりました。

本人も症状で様々な症状で辛いこと、親もどう接したらよいのか分からずにいることなどから…少し症状を客観的に見ることでお互いに気持ちが楽になるかも知れません。


②起立の仕方、水分摂取の方法、運動の推奨などの「非薬物療法(日常生活上の工夫)」                                        

日本小児心身医学会のHPでは、以下の様に記載されています。

・坐位や臥位から起立するときには、頭位を下げてゆっくり起立する。
・静止状態の起立保持は、1-2分以上続けない。短時間での起立でも足をクロスする。
・水分摂取は1日1.5-2リットル、塩分を多めにとる。
・毎日30分程度の歩行を行い、筋力低下を防ぐ。
・眠くなくても就床が遅くならないようにする。

日常生活上の工夫は無数ありますが、以下では重要視した点についていくつか紹介します。特に上述の対応以外で大切にしたことを書いておきたいと思います。

*睡眠時間を確保する(1日8時間前後は確保)

*学校等での会話を必ず親とする(子どもの心身の変化に敏感に気が付けるようにするため)

*負荷になりすぎない運動を継続する(娘はジャズ&ヒップホップダンス)

*朝の起床はゴロゴロ(布団の中でぬくぬく作戦)してから起きる

*本人の趣味/気分のリフレッシュを大切にする

こんな感じです。どれを最も大切にしたということではなく、全てを日常生活の当たり前にしていきました。特に今まで起立性調節障害を過去に罹患していた方々に何人もお会いしてきた中での会話から考えると「運動」はほとんどの方が行っていた印象でした。ただし、どの程度の運動など強度などに科学的根拠は私の話の中ではないので、今後調査していこうかと考えています。

睡眠時間に関しては娘の場合はLong Sleeperの傾向があったので、時間的には長めに確保することを意識しました。担当医からはちょっと長すぎかも!?と言われましたが、遅刻&欠席の傾向から考えると我が家にとっては8時間前後が丁度よいという結果でした。 *ちなみに、成長に伴い、睡眠の時間は短くなる傾向になるのだと思いますが、娘も短くなりつつある中で、短い日が続いた(6時間程度が4日~5日)数日後は体調不良/起立性調節障害の症状により遅刻や欠席を今でもしています。*

学校での会話をするのは役割を家の中で決めました。具体的には、主に娘の話を直接聞くのは妻の役割でした。私は妻から話を聞いて学校との交渉をするなど、役割を分担して行いました。


③OD児の「学校受入れ体制構築」

日本小児心身医学会のHPでは、以下の様に記載されています。

・学校関係者にODの理解を深めてもらい、OD児の受け入れ態勢を整える。

学校関係者に起立性調節障害についての理解を求めることは非常にハードルが高かったです。特に「理解」ということについては、「症状の理解」「症状の出現のタイミング」「対応の理解」「個々の特性の理解」など、多くあり、学校関係者との話し合いを起立性調節障害の当事者及び保護者の方が関係者とやり取りをすることは負担感が大きいものと思います。実際には、私も何度も何度も話し合いを持ちました。話し合いを持った相手は、校長先生及び学年主任、担任、SCなどです。話し合いにどんな資料を持っていったかというと、①岡山県教育委員会のホームページからダウンロードできる「対応ガイドライン」

と、そのガイドラインに記載してある中で②自分の子どもに当てはまる症状及び対応の仕方についてメモをした紙、の2つです。^^

話をするポイントも意図をはっきりさせることを意識しました。特に自分の子どもの事となると、その話が中心になりがちですが、学校との話をする中では、「学校として起立性調節障害の対応を出来るように…今後も同じような症状で悩むお子さんにも同じ対応が出来るように…」という意識を忘れずに話し合いを行いました。その中で、自分の子どものこと…。という感じです。

教員との連絡を取り合うタイミングについて話し合ったり、どのような時に連絡を取り合うのかということについても協議しました。そのような対応をする中で学校の理解も得られた感触があったというのが感想です。


④ミドドリン塩酸塩処方などの「薬物療法」 

日本小児心身医学会のHPでは、以下の様に記載されています。

・非薬物療法を行ったうえで処方する(ミドドリン塩酸塩など)。薬物療法だけでは効果は少ない。                        

娘の場合もミドドリンは処方されていました。それに加えて、漢方の「加味帰脾湯」でした。きちんと飲み忘れのない様に意識はしていましたが、どうしても飲み忘れてしまった場合などは、その時の体調の変化等について良く観察や記録することで、飲んでいた場合と飲み忘れてしまった場合の違いについて把握するようにしていました。

現時点では、継続服用は中止しており、症状が出現する可能性が高い状況/パターンの時などに加味帰脾湯のみ服用するなどのコントロールを本人と相談しながら進めているという感じです。


⑤医療機関と教育機関との連携を含めた「環境調整」

日本小児心身医学会のHPでは、以下の様に記載されています。

・子どもの心理的ストレスを軽減することが最も重要です。保護者、学校関係者がODの発症機序を十分に理解し、医療機関―学校との連携を深め、全体で子どもを見守る体制を整えましょう。詳細はガイドラインを参照のこと。

医療機関ー学校との連携…実際に行われているのかどうか…正直疑問です。ただ、この「連携」にこそ、起立性調節障害の回復や理解の鍵があるのだと私自身は考えています。しかしながら、この部分に関しては社会的な認知や地域での取り組み具合等にも左右されることも多い為、すぐに解決できる課題ではない、所謂「Public Issue(公的な課題)」として存在するのだと思います。自分の地域から…と考える保護者の方も少なくないのではないかと思います。また、当事者の方々においても、もっと自分の地域で理解が深まったら良いのに…と思うのも当然のことだと思います。

医療-教育ー地域が一体となって起立性調節障害の方々、保護者の方々が過ごしやすい社会にしていきたいものです。


まとめ

起立性調節障害の対応は、「正解」がないだけに実に難しいです。また、「障害」という名がついていながらも使える制度や支援などがほとんどなく、まさしく制度の狭間で悩みを抱える疾病であることを再認識しています。きちんとした地域や行政を巻き込んだ取り組みが今後求められると思うのです。

様々な分野で言われていることですが、上手くいかなかった経験よりも、上手くいった経験(Good Practice / Good Experience)から学ぶことの方が多いです。私も起立性調節障害の件で悩んだ際、様々な書籍や家族会、過去に起立性調節障害で悩んでいた方々から様々な経験談としての知恵をいただいて今の対応になっているのだと思い、関わっていただいた方々全てに心から感謝しています。

だからこそなのですが…今まで学んだ知識は多くの人と共有したいと思っています。起立性調節障害で悩む方、保護者の方にとってほんのちょっとでもこの記事を読んでよかったな。という気持ちになってもらえれば嬉しい限りです。

今回、私は2021年9月からフリースクールを立ち上げる予定としています。起立性調節障害の対応をしっかりと行うスクールです。体調に不安がある中でも通いやすい環境を整備しています。まさしく、「学校ー医療ー地域」が一体となって生活しやすい地域にするための活動の1つと考えています。

どのような状況になったとしても「学び」がしっかりできる社会をつくっていきたい…。起立性調節障害という疾病を抱えていたとしても、学びの権利が奪われたと言われない/当事者が思うことのない社会になって欲しい。という想いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。今後も起立性調節障害に悩む方々及び保護者の方々とともに色々と情報交換をしていきたいと考えています。よろしくお願いします。


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