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雪とサウナと確定申告。個人事業主の“えん”を結ぶ、解放の宴|#円宴縁日

去る2024年2月26日に催された確定申告×サウナイベント「円宴縁日」。総勢18名の個性豊かな個人事業主・フリーランスたちが、長野県信濃町の宿泊施設「LAMP」に集い、交流を深めました。その様子を、参加者の一人であるフリーライター・冨田ユウリさんのレポートでお届けします。

確定申告。この響きだけで震える人も少なくないだろう。かくいうフリーライターである私もその一人。毎年ホワイトデーが近づくにつれて心がざわつき始め、雑多に集めた一年分の領収書にまみれながら、孤独に戦う。今年も淡々と領収書を捌き、瀕死の状態で確定申告を終えることになる。そう思っていた。

「憂鬱な確定申告から、あなたを『解放』しますよ」

解放——。そんな言葉に導かれ、やってきたのは長野県・信濃町。野尻湖のほとりにある宿泊施設『LAMP』で、確定申告をポジティブにするイベントが行われるという。

施設に着くと見渡す限り、雪、雪、そして雪。目の前に広がる真っ白な景色と、鼻を抜ける澄んだ空気。日々の喧騒を忘れられる環境に、確定申告が少しちっぽけなものに思えてきた。が、そういう話ではない。

「こんにちは!円宴縁日(えんえんえんにち)へようこそ!」

笑顔で出迎えてくれたのは、お揃いのトレーナーに身を包んだ方々。トレーナーには「やさしい確定申告は、freee」と書かれている。freeeといえば、クラウド会計ソフト・freee会計を提供する会社だ。

これからこの場所で、freee主催の確定申告イベント「円宴縁日」が行われる。

解放を求めて集った、個性豊かな参加者たち

「円宴縁日」とは、憂鬱な確定申告から「解放」され、新たな「縁」を結ぶことを目的とした交流イベント。昨年の開催に続いて二度目となる今回は、応募者100名以上の中から抽選で選ばれた総勢18名のフリーランスと個人事業主たちが集まった。

まずは参加者の自己紹介から。名前と肩書きに加えて、「解放されたいこと」について一言述べていく。「フリーランス・個人事業主」と一口に言っても、その肩書きはさまざまだ。

「スパイスカレーを作っています。お店を持たず、いろんな場所でスパイスカレーを提供しているんです。今年は人を雇いたいと思っていて、作ることから解放されたいな」
(スパイスカレー食べたいな)

「漫画家です。担当編集さんのダメ出しから解放されたいですね」
(編集さんからのダメ出し、わかる……)

「グラフィックデザイナーです。法人化したので、今年は個人事業主として最後の確定申告。有終の美を飾り、この会から解放されたいです」
(共にがんばりましょう!)

「生活冒険家です。いろんな暮らしにチャレンジしています。モバイルハウスに住んでいるのですが運転が苦手で……。運転から解放されたい……」
(初めて聞く肩書き。気になる)

……など、普段は遭遇する機会のない職業の方から、聞き馴染みのない肩書きを口にするメンバーまで、まことに個性的な参加者たち。それぞれ一分ほどの自己紹介だけではとても掴みきれないが、一泊二日と時間はたっぷり。焦らずゆっくり、まずは確定申告と戦おう。

さっそくfreeeの中川杏珠さんより、会計ソフトの使い方についてレクチャーを受ける。これからみんなで行うのは、確定申告の書類の作成と、マイナンバーカードとスマートフォンを使った電子申告だ。

「私たちが全力でサポートしますので、カジュアルになんでも聞いてくださいね!」

freeeメンバーの中には、税理士資格を持つ方、公認会計士の方、プロダクトマネージャーの姿もあり、我々の作業をサポートしてくれるという。つまり、ここに集まった参加者の確定申告は、決して孤独な作業ではない。心強い味方と、同志たちとともに、チームで挑むのだ。

「それではみなさん、解放に向けて頑張ってください!確定申告スタート!!!」

力強い掛け声を皮切りに、一斉に作業スタート。始まるや否や、次々とfreeeメンバーを求めて参加者たちの手が挙がる。

「すでにもう聞きたいことしかないんですけど……」「なんでマイナスが発生しちゃったのかよくわからなくて」「とりあえずコーヒーを飲みながらやるか」

それぞれが自分のペースで作業を進めていく中、私は驚愕の事実に直面していた。今回メインで行うのは確定申告書類の作成で、領収書や請求書の登録といった作業は済ませておく必要があったのだ。事前の案内を完全に見逃していた。私は恐る恐る持参した大量の領収書と請求書の束を机に広げる。

「あ!偉い!ちゃんとまとめて持ってこられたんですね!freeeはレシートなどの書類を撮影するだけで情報を取り込めるので、サクサク作業を進めていきましょう!」

恥ずかしそうな姿を気遣ってか、やさしく声をかけてくれたfreeeの方。ポジティブな言葉に勇気づけられる。ああ、トレーナーに書かれた「やさしい確定申告」の言葉に後光が差して見える。おかげで、もう確定申告が少し好きになってきたかも……。

freeeメンバーにアドバイスを受ける筆者

「口座やクレジットカードを連携しておけば、作業の手間が省けるのでおすすめですよ。検討してみてくださいね」

目の前の確定申告だけでなく、未来のことも見据えた的確なアドバイス。ありがたい。

「はい!終わりました!」

作業開始から約30分。広島から参加した鍼灸師の田中健一さんが、手を挙げた。確定申告からの解放者・第一号の誕生に、自然と拍手が巻き起こる。

解放特典としてプレゼントされたサウナハットをかぶり、記念写真をパシャリ。確定申告から解き放たれた笑顔がまぶしい。

「普段は施術でお客様を癒している側なので、今日は自分が癒されるべく、このイベントに応募しました。生命保険や控除のことなど、ちょっとした疑問も全て解消でき、スッキリしました!」

その後、確定申告完了の声が上がっては拍手、上がっては拍手。解放者が増えていく一方で、なかなか終わりが見えずに頭を抱える参加者も。

「みなさん疲れが出てくると思いますので、適宜ランチを食べながら、もう一踏ん張り頑張りましょう!」

ランチ休憩を取りながら、互いの仕事の話をしたり、個人事業主ならではのあるある話を共有したり。確定申告の進捗とともに、仲も深まってきた様子。

「さあ、あと10分です!」

残された時間はあとわずか。最後の追い込みに、参加者もfreeeメンバーも熱が高まる。

「おおおおお、魔法みたいです!ピッタリ合った!不思議!」

「いえいえ、要するに日々の取引の積み重ねですから。毎月ちゃんと確認していけば、合わないなんてことは絶対にありません」

帳尻が合わない!と頭を抱え続けていた参加者が一人、救われた。か、かっこいい……。

「みなさん、お疲れさまでした。ひとまず確定申告の時間は一区切りにしましょう」

向き合い続けたデスクトップから解放。雪の中場所を移動し、次なるコンテンツ・トークセッションへ!

トーク、サウナ、宴会。次第に深まる“えん”

トーク会場となった、本館横のくつろぎスペース「LEPO」

トークのテーマは「ライフとライスの“はざま”を曖昧に生きる」。お金のための仕事「ライスワーク」と、自分が好きでやりたい「ライフワーク」。ちゃんと稼がなきゃ生きていけないけれど、好きなことを存分にやって生きていきたい。そのバランスをどう取るかについて考える。

ゲストは、フォトグラファー/編集者の小林直博さんと、アーティスト/ファッションデザイナーの雪下まゆさん。聞き手は、本イベントの企画・プロデュースを手掛けるHuuuuの代表・徳谷柿次郎さんが務める。

「ライスとライフ、どういう割合で仕事していますか?」

徳谷さんの問いかけに、雪下さんは悩みつつも「ライフワークが8割かな」と答えた。とはいえ、昔はもっとライス多めだったのだそう。

「フリーランスなりたてのときはライスワークが多くなりがちで……。ライフとライスをはっきり分けていたけれど、次第に自分が描きたい作風に合う仕事が増えていきました。今はもっと稼ぎたいとは思っていなくて、友達と遊ぶ時間も大切にしていきたいですね」

一方、フォトグラファーの小林さんは「ほぼライフワーク」しかないと言い切る。

「僕は昔からライフとライスの境界線が曖昧で、稼ぐ手段はなんでもいいんです。生まれ育ってきた長野県・飯山の地でずっと生きていければベスト。それだけですね」

自分なりの暮らしと働き方のバランスを語るゲストスピーカーの言葉に、頷く参加者たち。「最近、ライスに飲み込まれすぎていたかもしれない」「自分もいろんな新しいことに挑戦して、ステップアップしていきたいです」と、自らの働き方を見直す好機にもなったようだ。

さて、トークショーが終わったら……。

お待ちかねのサウナ!ここ『LAMP』に併設された『The Sauna』はサウナの聖地として名高く、全国からサウナ好きが集まる場所。大自然に広がる本格的なフィンランド式のアウトドアサウナで、日常から解き放たれていく。

「寒い寒い!早く中に入りましょう!」

雪が降りしきる中、小さなログハウスのような佇まいのサウナ小屋を目指し、足早に向かう参加者たち。扉を開けると、ヒノキの香りが一面に広がる。身体がじんわり温まってきたら、ロウリュを。

「うわ〜いい香り!体感温度が一気に上がりますね」

サウナストーンにひしゃくでアロマ水を垂らすとジューっと蒸気が立ち上り、身体は一層熱を帯びていく。一気に流れ出てくる汗は、窓から見える銀世界とは対照的。

小屋を出たら、山の伏流水を引き込んだ水風呂へダイブしたり、深雪の中に直接飛び込んだり。この日の水風呂の水温はなんと3℃。つめた〜い!

その後は自然に包まれて、静かに外気浴を。目を閉じて自然の音に耳を傾ければ、「今の自分」とただ向き合える。

「実は最近、悩みがあって……」

リラックスをともに堪能したことで距離感が縮まったのか、日々の悩みを打ち明ける姿も。ととのえばととのうほど、互いの仲が一層深まっていく。

サウナを終えてスッキリ解放感が増したら、ついに最後の“えん”。宴で縁を紡ぐ時間だ。テーブルにはすでに鍋と食材が並んでいる。

「みなさん今日一日、そして一年間、お疲れさまでした!乾杯!」

乾杯のお酒は、熱燗。参加者の一人でもある熱燗DJつけたろうさんによる、熱燗DJがスタート!オリジナルブランドやほとんど流通していない貴重な銘柄など10種類の日本酒が、湯煎で温められていく。

「熱燗を注ぎ合うことで、もっと仲を深めてくださいね!」

とっくりを手にし、互いのおちょこに注ぎ合い、語り合う。一杯目として注がれたのは、福島県喜多方市にある老舗酒造・大和川酒造店の「弥右衛門」。スッキリ辛口でキレのある味わいは、まさに一杯目にふさわしく、食欲が掻き立てられる。

テーブルに準備された鍋は、LAMPの大人気メニュー「ラム火鍋」。ラム肉を食べると身体が芯から温まり、元気が回復する効果が期待できるのだそう。サウナに似た効果のあるラム肉をスパイスが効いた鶏白湯ベースのスープにくぐらせ、地元野菜と一緒にいただく。

「おいしい〜温まる〜お酒も進む〜」

熱燗とラム火鍋で胃も場も温まり、ますます会話が弾んでいく。たわいもない話から、「今度コラボしましょうよ」と新たなアイデアが誕生する予感も。繋がった縁は、明日以降にも生かされていきそうだ。

飲み足りないよ……という声も聞こえつつ、宴は終了。合宿のように布団を並べ、おやすみなさい。また明日!

つながった縁はこれからも続く

一夜明け、朝から各々仕事をしたり、ゆっくり談笑したり。各々の時間を過ごしていたら、あっという間に解散の時間。freeeの杏珠さんの言葉で締めくくる。

「確定申告のネガティブなイメージを、少しでもポジティブにしたいという思いから、このイベントを企画しました。確定申告の作業を共に頑張り、サウナに入って、ご飯とお酒を楽しんで。みなさん仲良くなれていたら嬉しいです。二日間ありがとうございました!」

これまで確定申告の作業中に笑顔を見せたことは一度もなかったが、笑いっぱなしの二日間となった今回のイベント。サウナに、宴に、そして何より仲間ができたことがとても嬉しい!みなさんは二日間、どうでした?

「こういうふうに生きていきたいと思う、かっこいい大人たちにたくさん会えて、ワクワクしました!」(本田優美/作業療法士)
「年に一度と言わず、四季折々開催してほしい!」(ナル/生活冒険家)

「また会いましょう」「SNS交換してください」と別れを惜しみながら、帰路についた参加者たち。こうしてイベントは終わりを告げたが、つながった縁はこれからも続く。来年の確定申告に向けた私たちの戦いも、もう孤独ではないように思える。

みんなとまた、笑顔で集まれますように!

☆雪下まゆ×小林直博×徳谷柿次郎によるトークセッションの動画はこちら

執筆:冨田ユウリ
撮影:小林直博
編集:日向コイケ

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